これぞ中古車千里眼? 遠方にある中古車のコンディションをPC/スマホだけで見極める方法(後編)
2016/03/04
現地で最終実車チェック。でもその前に「店舗の美観チェック」を
(前回のあらすじ)なぜか初代マツダ ロードスターが欲しくなった東京在住の中古車評論家・伊達軍曹だが、気になる物件は約1300km彼方の宮崎県にしかないことが判明。PCおよびスマホを使った様々なスクリーニング術を駆使して「たぶん大当たりの1台だ!」と推理し、最終的に宮崎県まで実車を見に行くことに。さて、推論を重ねた結果の1台は本当に「大当たり」だったのか?
宮崎空港までは溜まったマイレージによる無料航空券で行きましたが、そこから先は軽自動車のレンタカーを3000円ぐらいで借り、30分ほど走ります。すると見えてくるのが、このたび筆者が目をつけた中古車販売店「松元エンジニアリング」。
敷地内にレンタカーを止めさせていただき、まずはいきなり「お店の美観チェック」と「あいさつチェック」です。
お店の美観チェックというのは、その販売店の敷地全体や建物の内外が美しいかどうかという確認です。もちろん豪華でオシャレな建物である必要はまったくなく、建物が古くたってボロくたって全然構いません。そうではなく「清掃と整理整頓が行き届いているか?」を見るのです。
中学生の頃によく言われた「服装の乱れは心の乱れ」ではありませんが、お店の姿勢みたいなものはそういった部分にけっこう現れるものです。で、こちらの販売店は美観チェックを軽くクリア。見た目は「地方によくある一般的な自動車整備工場」って感じですが、各所の整理整頓が行き届いていて、何やらビッとした空気が全体から感じられます。
お次の「あいさつチェック」は、直接の担当者以外のスタッフ、例えば作業をしている整備士さんなどが、来客に対して「いらっしゃいませ!」でも「ちわっす!」でもなんでもいいのですが、明るく元気にあいさつをしているかどうかのチェックです。このあいさつがない店=ダメという単純な話ではありませんが、経験上、良店はこれができている場合が多いようです。
で、こちらのお店はお若いメカニックの方が、たぶんまだ人馴れしていないせいでぎこちない感じではありますが、笑顔でこちらに目を合わせて「いらっしゃいませ!」と言ってくれました。社長さんのしっかりとした指導ががうかがえます。
実車と初対面。PC/スマホで行った「推理」はやはり正しかった!
そうこうするうちに、奥から社長さんがササッと出てらっしゃいました。失礼ながら人相と雰囲気を観察させていただきましょう。
……なんともいい人丸出しで、控えめな笑顔の松元崇博代表! あまりにも事前の想像どおりなご尊顔に、これだけでもう筆者はこのお店で買う決意を固めてしまいました。
しかし、いちおう肝心の実車も見させてもらいましょう。そもそもそれが目的で宮崎まで来たわけですし。で、なるほど、これが例の96年式マツダ ロードスターですか。
松元さんの説明を聞きながら細かく拝見すると、各部はまさにカーセンサーnetで見たとおりのコンディション。つまり9.8万kmなりの使用感はもちろんあるが、歴代オーナーに丁寧に扱われ、そして直近の徹底メンテナンスによってかなりシャンとした雰囲気になった……というニュアンスの1台です。これはたぶんかなりイイ中古車でしょう! こうなると本当はもう試乗しなくてもいいぐらいなんですが、いちおう運転させていただいてもいいですか?
松元社長「もちろんです!」
松元さんから試乗コースの説明を受け、いざ出発。エンジンは力強いセルモーターの力で即座に始動し、アイドリングも安定。妙な異音もなし。で、最初はゆっくりめに流してみる。乗り心地は良好。エンジンは、アクセルを踏めば踏んだ分だけリニアにパワーが出て、ステアリングを切れば、切った分だけフツーに曲がる。足回りからの異音もなし。オイルが焦げてるようなニオイもなし。エアコンもばっちり作動し、パワーウインドウの動きも問題なし。今にして思えばカーオーディオのチェックをすっかり忘れてましたが、まあそれはどうでもいいや(スポーツカーですからね)。
ひと通りの基本チェックが済んだら、少々スピードを上げて元気に走ってみます。……うむ、それでも問題なし! エンジンは高回転域まで息継ぎなしで鋭く吹け上がり、ブレーキもよく利き、そして足回りがバタつく感じも皆無。……これはもう絶対に買いでしょう!
遠方購入のネックは必然的に高額となる「納車費用」か
ということで試乗後すぐに「コレ買います!」と伝え、あとは近所の販売店で中古車を買う場合と同じ手続きが進みます。ただし遠方から買うということで「納車費用」だけは若干ヘビーです。
近所の販売店なら1万円ぐらいで自宅まで納車してくれますし、そもそも自分で店頭まで取りに行けば0円です。が、例えば過去、大阪の販売店から都内まで某輸入車を陸送してもらったときは5万円の納車費用がかかりましたし、広島のお店からルノー カングーを買ったときは7万円でした。痛い出費ですが、フェリー代や人件費等を考えると仕方のない金額といえるでしょう。
で、今回は大阪、広島どころか1300km以上離れた宮崎県から東京都まで車を運ばなければなりません。その場合にかかる納車費用を松元社長に尋ねると、社長は申し訳なさそうに言いました。
「……東京のご自宅までですと、15万円+消費税になっちゃいます」
……まぁそりゃそうですよね、1300km以上先のはるか彼方から、仕事の手を止めて持ってきていただくわけですから(松元エンジニアリングは社長のポリシーにより、陸送会社任せではなく社長自らがユーザーの手元に届けるというスタイルをとっています)。
しかしさすがに15万円+消費税はキツイということで、「中間地点の兵庫・神戸三宮港まで運んでもらい、そこから先は筆者が自走で東京へ帰る」というやり方を採用。これであれば納車費用は半額以下の7万円となり、それプラス神戸から東京までの高速代+ガソリン代(約1万5000円)で済みます。それでも痛いは痛いですが、まあ神戸から東京までぶらり一人旅を楽しみつつ、新規購入中古車のシェイクダウン(テスト走行)も済ませられると考えれば、納得の出費ではあります。
そして月日は10日ほど流れ、車庫証明も無事発行されたということで、いよいよ整備済みのロードスターを兵庫・神戸で受け取ります。車両と必要書類一式を受け取り、松元社長とがっちり握手を交わして高速道路へ。20年落ち・走行9.8万kmの旧車ですが、な~んの不具合もなく合計545kmを走りきって元気に都内へたどり着きました。
そして到着後、品川にある陸運局(東京運輸支局)に行って登録手続きを行います。
これは非常に簡単かつ費用もお手頃。事前に印鑑証明を取っておき、そして必要書類一式を販売店から確実に受け取れば、あとは陸運局内のいわゆる代書屋さんに3000円で丸投げするだけで完璧な書類を作ってくれます(もちろん自分で書いてもOK。その場合は当然0円)。そして係の人に言われるがまま窓口を回っていけば、混み具合にもよりますが40分もかからずに登録および名義変更が完了。筆者の場合は希望ナンバーでもないため、ナンバープレート代もわずか1440円でした。
以上が、今回筆者が行ったことのすべてです。中古車というのはやっぱり近所の販売店で買う方が何かと便利なことは間違いありません。しかし、もしもあなたにとってかなりステキな1台が遠方の販売店にしかないのであれば、そして、どうしても高額になる納車費用を負担してでもそれを買いたいと強く思うのであれば、こちらの内容を思い出していただきながら「遠方購入」にトライしてみるのも決して悪くはないと思う次第です。
ご参考になったならば幸いです。
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