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【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】自動車業界と半導体について(前編)
【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】自動車業界と半導体について(前編)
2021/06/12
//ABテストロジック
みなさまごきげんよう。フェルディナント・ヤマグチでございます。
前回のテーマ(電気自動車の未来について)からまた時間がたってしまいました。うーん、このままではいかん……。せっかく本企画を楽しみにしてくださっている読者諸兄に申し訳が立ちません。
普段は「原稿はまだか!」「どこで遊び歩いているんだ!!」という編集者からの怒りの連絡を華麗にスルーしておりますが、初めて私から担当編集者のケツを蹴り上げて先までの対談スケジュールを入れてもらいました。
これからはコンスタントに本企画をお届けできるはずなので、どうぞお楽しみに。
ま、当企画がスタートした当初もそんなことを言っていましたので、どうなるか分かりませんけれどね。相手があることですし。
さて、私はマスクをかぶってちょいちょいメディアに顔を出したり、拙稿を掲載いただいたりしていますが、これは世をしのぶ仮の姿。1985年に大学を卒業して以来、半導体・電子部品かいわいで日々マジメにリーマン稼業にいそしんでおります。
本名を明かしていないのも、マスクをかぶっているのも、「フェル業」をやっていることが本業バレするのを恐れてのことです。なにせ地味な業界ですから。
昨今、自動車業界は深刻な半導体不足により減産や工場の操業停止を余儀なくされる事態に見舞われております。
今回はまさに私の本業である「半導体」と自動車業界の話をお届けします。内情を知る業界人だからこそ分かる裏事情も織り交ぜながら、西村編集長と話をしていきましょう。
※この対談は2021年6月4日に行いました。
現代の車の中は半導体だらけ
カーセンサー・西村編集長(以下、西村) フェルさんご無沙汰しております。今回もよろしくお願いします。
フェルディナント・ヤマグチ(以下、フェル) 本当にご無沙汰ですね。長らく放置プレーが続いたので、この企画はボツになったのだとばかり思っていました。ま、よろしくお願いします。で、なんですか、今回は「半導体」がテーマだとか。
西村 はい。僕は様々なメディアから取材を受ける機会も多いのですが、ここ半年ほど必ずと言っていいほど昨今の自動車業界の半導体事情について質問されます。
フェル そうでしょうね。業界構造すら激変させかねない深刻な問題ですから。
西村 もちろん、僕も日々のニュースを追いかけていますが、やはり本職の方から話を聞いて勉強したいと思いまして。
編集担当・大津 私も一緒に勉強させてください。そして、今回はすごくホットな話になると思いますので、3日連続で記事を掲載していこうと思います。
フェル 分かりました。なんなりと。
西村 自分もそうですが、おそらくカーセンサーの読者全員が半導体に詳しいわけではないので、まずは本当に基本的なところをおさらいしておければ。そもそも、半導体とはどのようなものなのでしょうか。 そして、我々の生活にはどのくらい入り込んでいるのでしょうか。
フェル ではまず、半導体の定義からお話ししましょう。世の中には、導体と絶縁体というものが存在します。導体は電気を通すもの。鉄、銅、水などですね。反対に、絶縁体は電気を通さないもの。
西村 ゴムやプラスチック、ガラスなどがメジャーなところですね。
フェル そのとおりです。半導体はその中間の性質を備えた物質 です。ある条件では電気を通し、逆にある条件では電気を通さないというオン・オフのスイッチングができるのです。半導体のひとつずつの線をオン/オフすることで0と1を表します。それにより、絵を描いたり、ものを覚えたり、判断したりすることができる。そうしたデバイスを総称して半導体 と呼んでいます。
西村 ICやLSI、LEDなどが半導体デバイスになります。
フェル 現在、半導体は身の回りのあらゆる製品に入っていて、みなさんにとって最も身近なスマホには数百もの半導体が使用されています。 それこそ、私たちが朝起きてから夜寝るまで、何億個の半導体に触れているのか想像もつかないほどです。
西村 半導体はスマホだけでなく家電にも使われています。その数は今後ますます多くなるでしょうね。
フェル はい。だから海外の半導体を作る会社は、いま結構な利益を上げています。日本の会社は相変わらずですが……。そして、半導体の周辺産業~例えば、半導体を作る装置を製造する会社や材料のメーカーも、もうかっています。
西村 そして、半導体は我々が乗る車にもたくさん使われている。
フェル はい。現在の車は電子デバイスの塊 です。例えばエアコンやカーナビ、パワーウインドウ、パワーシートにも半導体が使われています。車の場合は、一つひとつの制御を小さなECU(Electronic Control Unit)というもので行っています。超ざっくり話すと、高い車であればあるほどコントロールする部分が増えるのでECUの数も多くなります。 その数があまりにも増えすぎて、車の中にECUを置く場所がなくなってきているというのが現状です。
▲半導体はあらゆる製品に使用されている私たちの生活に欠かせないもの(家電製品イメージ)
西村 私たちが暮らす中で、電気を使うものにはまず間違いなく半導体が使われている。そう考えても問題ないですか?
フェル そうですね。もう必ず使われていると言っても過言ではありません。しかも、その数がとめどもなく増え続けている。そう考えてもらって大丈夫です。
西村 読者の方々は、半導体と聞いてどれくらいのサイズ感のものが製品の中に入っていると考えればいいですか?
フェル 中心の石の部分は2cm角くらいもあれば、0.5mm角というものもあります。電車に使われるパワー半導体では10cm角というものもありますが、それは特殊なもの。普通の人が使う製品に入るものだと、最大でも2cm角とかじゃないかな。それより大きなものはないと思います。
電気自動車よりガソリン車の方が多くの半導体を使っている
西村 なるほど。半導体はとても小さなものだということが分かりました。前回のこの企画では電気自動車の未来について話をしました。この企画ではまだ取り上げていませんが、自動車業界ではADAS(エーダス:先進運転支援システム)も大きな話題です。それらが進んでいくと、使われる半導体の数も加速度的に増えていくという理解で大丈夫でしょうか。
フェル ADASに関してはその理解で大丈夫ですが、電気自動車に関しては単純に現在の車の形で電気自動車になると、半導体の数は逆に減っていきます。 先日あるティア1(メーカーに直接部品や製品を納入するサプライヤー)の方に「今後、車の電動化が加速すると御社はもうかりまくって笑いが止まらないですね」と話したら 「それは違います。今、この瞬間にすべての車がEVになるとうちの売り上げは20%ダウンです」 と聞きました。
西村 それはなぜですか?
フェル 現在のガソリン車やディーゼル車には、燃料噴射や温度管理など様々な形で電子制御が入っていてセンサーをたくさん使っていますが、 電気自動車だとそれらが必要なくなる のです。
前回の放談テーマでもあった「電気自動車」(日産 アリア)。素人感覚では半導体がたくさん使用されているようなイメージなのだが……
西村 電気自動車の場合は、ガソリン車ほど複雑な制御が必要ないということですね。日本人の感覚だと、 ハイブリッドカーやPHEVなどガソリン車とEVの中間的なものにまだ安心感を覚える傾向 があって、メーカーも様々な選択肢を用意するという形を取っています。そうすると、エンジンを置くスペースとバッテリーを置くスペース両方に対応できる車作りが必要になって、制御面でも両方用意しないといけない。でも、半導体不足の影響を考えると実はEV専用モデルを生産すると供給が安定するなんてこともありそうですね。数が出れば価格も抑えることができるし。
フェル それもひとつの考え方として理解できます。
西村 欧州は政治も含めて電動化、それもEVの方に舵を切っています。ただ、すべてを置き換えたときにエネルギーやサプライヤーなどを置き換えることができるのか。そこにも難しさがありますね。
大津 お話が盛り上がっているところにすみません。今回はまず半導体の基礎の基礎にあたるお話を伺いました。この続きは、次回のお話にしてもよろしいですか?
フェル 分かりました。次回からはいよいよ現在世界で起こっている深刻な状況について迫っていきましょう。
大津 楽しみにしています!
(次回へ続く!)
文/フェルディナント・ヤマグチ 写真/いらすとや、日産
カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。
【関連リンク】
【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】自動車業界と半導体について(前編)/旬ネタ
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<br />
これからはコンスタントに本企画をお届けできるはずなので、どうぞお楽しみに。<br />
<br />
ま、当企画がスタートした当初もそんなことを言っていましたので、どうなるか分かりませんけれどね。相手があることですし。<br />
<br />
さて、私はマスクをかぶってちょいちょいメディアに顔を出したり、拙稿を掲載いただいたりしていますが、これは世をしのぶ仮の姿。1985年に大学を卒業して以来、半導体・電子部品かいわいで日々マジメにリーマン稼業にいそしんでおります。<br />
<br />
本名を明かしていないのも、マスクをかぶっているのも、「フェル業」をやっていることが本業バレするのを恐れてのことです。なにせ地味な業界ですから。<br />
<br />
昨今、自動車業界は深刻な半導体不足により減産や工場の操業停止を余儀なくされる事態に見舞われております。<br />
<br />
今回はまさに私の本業である「半導体」と自動車業界の話をお届けします。内情を知る業界人だからこそ分かる裏事情も織り交ぜながら、西村編集長と話をしていきましょう。<br />
<br />
※この対談は2021年6月4日に行いました。<br />
</p>
<h3>現代の車の中は半導体だらけ</h3>
<p><b>カーセンサー・西村編集長(以下、西村)</b> フェルさんご無沙汰しております。今回もよろしくお願いします。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェルディナント・ヤマグチ(以下、フェル)</spam> 本当にご無沙汰ですね。長らく放置プレーが続いたので、この企画はボツになったのだとばかり思っていました。ま、よろしくお願いします。で、なんですか、今回は「半導体」がテーマだとか。<br />
<br />
<b>西村</b> はい。僕は様々なメディアから取材を受ける機会も多いのですが、ここ半年ほど必ずと言っていいほど昨今の自動車業界の半導体事情について質問されます。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> そうでしょうね。業界構造すら激変させかねない深刻な問題ですから。<br />
<br />
<b>西村</b> もちろん、僕も日々のニュースを追いかけていますが、やはり本職の方から話を聞いて勉強したいと思いまして。<br />
<br />
<b>編集担当・大津</b> 私も一緒に勉強させてください。そして、今回はすごくホットな話になると思いますので、3日連続で記事を掲載していこうと思います。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 分かりました。なんなりと。<br />
<br />
<b>西村</b> 自分もそうですが、おそらくカーセンサーの読者全員が半導体に詳しいわけではないので、まずは本当に基本的なところをおさらいしておければ。<b>そもそも、半導体とはどのようなものなのでしょうか。</b>そして、我々の生活にはどのくらい入り込んでいるのでしょうか。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> ではまず、半導体の定義からお話ししましょう。世の中には、導体と絶縁体というものが存在します。導体は電気を通すもの。鉄、銅、水などですね。反対に、絶縁体は電気を通さないもの。<br />
<br />
<b>西村</b> ゴムやプラスチック、ガラスなどがメジャーなところですね。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> そのとおりです。<b>半導体はその中間の性質を備えた物質</b>です。ある条件では電気を通し、逆にある条件では電気を通さないというオン・オフのスイッチングができるのです。半導体のひとつずつの線をオン/オフすることで0と1を表します。それにより、絵を描いたり、ものを覚えたり、判断したりすることができる。<b>そうしたデバイスを総称して半導体</b>と呼んでいます。<br />
<br />
<b>西村</b> ICやLSI、LEDなどが半導体デバイスになります。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 現在、半導体は身の回りのあらゆる製品に入っていて、<b>みなさんにとって最も身近なスマホには数百もの半導体が使用されています。</b>それこそ、私たちが朝起きてから夜寝るまで、何億個の半導体に触れているのか想像もつかないほどです。<br />
<br />
<b>西村</b> 半導体はスマホだけでなく家電にも使われています。その数は今後ますます多くなるでしょうね。<br />
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<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> はい。だから海外の半導体を作る会社は、いま結構な利益を上げています。日本の会社は相変わらずですが……。そして、半導体の周辺産業~例えば、半導体を作る装置を製造する会社や材料のメーカーも、もうかっています。<br />
<br />
<b>西村</b> そして、半導体は我々が乗る車にもたくさん使われている。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> はい。<b>現在の車は電子デバイスの塊</b>です。例えばエアコンやカーナビ、パワーウインドウ、パワーシートにも半導体が使われています。車の場合は、一つひとつの制御を小さなECU(Electronic Control Unit)というもので行っています。超ざっくり話すと、<b>高い車であればあるほどコントロールする部分が増えるのでECUの数も多くなります。</b>その数があまりにも増えすぎて、車の中にECUを置く場所がなくなってきているというのが現状です。<br />
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<p><b>西村</b> 私たちが暮らす中で、電気を使うものにはまず間違いなく半導体が使われている。そう考えても問題ないですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> そうですね。もう必ず使われていると言っても過言ではありません。しかも、その数がとめどもなく増え続けている。そう考えてもらって大丈夫です。<br />
<br />
<b>西村</b> 読者の方々は、半導体と聞いてどれくらいのサイズ感のものが製品の中に入っていると考えればいいですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 中心の石の部分は2cm角くらいもあれば、0.5mm角というものもあります。電車に使われるパワー半導体では10cm角というものもありますが、それは特殊なもの。普通の人が使う製品に入るものだと、最大でも2cm角とかじゃないかな。それより大きなものはないと思います。<br />
</p>
<h3>電気自動車よりガソリン車の方が多くの半導体を使っている</h3>
<p><b>西村</b> なるほど。半導体はとても小さなものだということが分かりました。前回のこの企画では電気自動車の未来について話をしました。この企画ではまだ取り上げていませんが、自動車業界ではADAS(エーダス:先進運転支援システム)も大きな話題です。それらが進んでいくと、使われる半導体の数も加速度的に増えていくという理解で大丈夫でしょうか。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> ADASに関してはその理解で大丈夫ですが、電気自動車に関しては単純に現在の車の形で電気自動車になると、<b>半導体の数は逆に減っていきます。</b>先日あるティア1(メーカーに直接部品や製品を納入するサプライヤー)の方に「今後、車の電動化が加速すると御社はもうかりまくって笑いが止まらないですね」と話したら <b>「それは違います。今、この瞬間にすべての車がEVになるとうちの売り上げは20%ダウンです」</b>と聞きました。<br />
<br />
<b>西村</b> それはなぜですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 現在のガソリン車やディーゼル車には、燃料噴射や温度管理など様々な形で電子制御が入っていてセンサーをたくさん使っていますが、 <b>電気自動車だとそれらが必要なくなる</b>のです。<br />
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<div class="taC w600_img mB10"><img alt="日産 アリア" data-credit="日刊カーセンサー" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65850/Nissan_Ariya_front_quarter_3.jpg" width="600" /> <span class="CP_txt">前回の放談テーマでもあった「電気自動車」(日産 アリア)。素人感覚では半導体がたくさん使用されているようなイメージなのだが……</span></div>
<p><b>西村</b> 電気自動車の場合は、ガソリン車ほど複雑な制御が必要ないということですね。日本人の感覚だと、 <b>ハイブリッドカーやPHEVなどガソリン車とEVの中間的なものにまだ安心感を覚える傾向</b>があって、メーカーも様々な選択肢を用意するという形を取っています。そうすると、エンジンを置くスペースとバッテリーを置くスペース両方に対応できる車作りが必要になって、制御面でも両方用意しないといけない。でも、半導体不足の影響を考えると実はEV専用モデルを生産すると供給が安定するなんてこともありそうですね。数が出れば価格も抑えることができるし。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> それもひとつの考え方として理解できます。<br />
<br />
<b>西村</b> 欧州は政治も含めて電動化、それもEVの方に舵を切っています。ただ、すべてを置き換えたときにエネルギーやサプライヤーなどを置き換えることができるのか。そこにも難しさがありますね。<br />
<br />
<b>大津</b> お話が盛り上がっているところにすみません。今回はまず半導体の基礎の基礎にあたるお話を伺いました。この続きは、次回のお話にしてもよろしいですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 分かりました。次回からはいよいよ現在世界で起こっている深刻な状況について迫っていきましょう。<br />
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<b>大津</b> 楽しみにしています!<br />
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(次回へ続く!)<br />
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<p><a class="iconLink arrowRight" href="https://www.carsensor.net/contents/tag/tag_3141/">この人の記事を読む</a></p>
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<li><a href="https://www.carsensor.net/contents/tag/tag_3172/" target="_blank">これまでの時事放談はこちら</a></li>
<li><a href="https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00105/00099/" target="_blank">西村編集長を取材した日経ビジネス電子版の記事はこちら(※外部サイトに遷移します)</a></li>
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さて、私はマスクをかぶってちょいちょいメディアに顔を出したり、拙稿を掲載いただいたりしていますが、これは世をしのぶ仮の姿。1985年に大学を卒業して以来、半導体・電子部品かいわいで日々マジメにリーマン稼業にいそしんでおります。<br />
<br />
本名を明かしていないのも、マスクをかぶっているのも、「フェル業」をやっていることが本業バレするのを恐れてのことです。なにせ地味な業界ですから。<br />
<br />
昨今、自動車業界は深刻な半導体不足により減産や工場の操業停止を余儀なくされる事態に見舞われております。<br />
<br />
今回はまさに私の本業である「半導体」と自動車業界の話をお届けします。内情を知る業界人だからこそ分かる裏事情も織り交ぜながら、西村編集長と話をしていきましょう。<br />
<br />
※この対談は2021年6月4日に行いました。<br />
</p>
<h3>現代の車の中は半導体だらけ</h3>
<p><b>カーセンサー・西村編集長(以下、西村)</b> フェルさんご無沙汰しております。今回もよろしくお願いします。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェルディナント・ヤマグチ(以下、フェル)</spam> 本当にご無沙汰ですね。長らく放置プレーが続いたので、この企画はボツになったのだとばかり思っていました。ま、よろしくお願いします。で、なんですか、今回は「半導体」がテーマだとか。<br />
<br />
<b>西村</b> はい。僕は様々なメディアから取材を受ける機会も多いのですが、ここ半年ほど必ずと言っていいほど昨今の自動車業界の半導体事情について質問されます。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> そうでしょうね。業界構造すら激変させかねない深刻な問題ですから。<br />
<br />
<b>西村</b> もちろん、僕も日々のニュースを追いかけていますが、やはり本職の方から話を聞いて勉強したいと思いまして。<br />
<br />
<b>編集担当・大津</b> 私も一緒に勉強させてください。そして、今回はすごくホットな話になると思いますので、3日連続で記事を掲載していこうと思います。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 分かりました。なんなりと。<br />
<br />
<b>西村</b> 自分もそうですが、おそらくカーセンサーの読者全員が半導体に詳しいわけではないので、まずは本当に基本的なところをおさらいしておければ。<b>そもそも、半導体とはどのようなものなのでしょうか。</b>そして、我々の生活にはどのくらい入り込んでいるのでしょうか。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> ではまず、半導体の定義からお話ししましょう。世の中には、導体と絶縁体というものが存在します。導体は電気を通すもの。鉄、銅、水などですね。反対に、絶縁体は電気を通さないもの。<br />
<br />
<b>西村</b> ゴムやプラスチック、ガラスなどがメジャーなところですね。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> そのとおりです。<b>半導体はその中間の性質を備えた物質</b>です。ある条件では電気を通し、逆にある条件では電気を通さないというオン・オフのスイッチングができるのです。半導体のひとつずつの線をオン/オフすることで0と1を表します。それにより、絵を描いたり、ものを覚えたり、判断したりすることができる。<b>そうしたデバイスを総称して半導体</b>と呼んでいます。<br />
<br />
<b>西村</b> ICやLSI、LEDなどが半導体デバイスになります。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 現在、半導体は身の回りのあらゆる製品に入っていて、<b>みなさんにとって最も身近なスマホには数百もの半導体が使用されています。</b>それこそ、私たちが朝起きてから夜寝るまで、何億個の半導体に触れているのか想像もつかないほどです。<br />
<br />
<b>西村</b> 半導体はスマホだけでなく家電にも使われています。その数は今後ますます多くなるでしょうね。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> はい。だから海外の半導体を作る会社は、いま結構な利益を上げています。日本の会社は相変わらずですが……。そして、半導体の周辺産業~例えば、半導体を作る装置を製造する会社や材料のメーカーも、もうかっています。<br />
<br />
<b>西村</b> そして、半導体は我々が乗る車にもたくさん使われている。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> はい。<b>現在の車は電子デバイスの塊</b>です。例えばエアコンやカーナビ、パワーウインドウ、パワーシートにも半導体が使われています。車の場合は、一つひとつの制御を小さなECU(Electronic Control Unit)というもので行っています。超ざっくり話すと、<b>高い車であればあるほどコントロールする部分が増えるのでECUの数も多くなります。</b>その数があまりにも増えすぎて、車の中にECUを置く場所がなくなってきているというのが現状です。<br />
</p>
<div class="taC w600_img"><img alt="メルセデスベンツ Gクラス" data-credit="日刊カーセンサー" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65850/internet_mono_things.jpg" width="600" /><span class="CP_txt">▲半導体はあらゆる製品に使用されている私たちの生活に欠かせないもの(家電製品イメージ)</span></div>
<p><b>西村</b> 私たちが暮らす中で、電気を使うものにはまず間違いなく半導体が使われている。そう考えても問題ないですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> そうですね。もう必ず使われていると言っても過言ではありません。しかも、その数がとめどもなく増え続けている。そう考えてもらって大丈夫です。<br />
<br />
<b>西村</b> 読者の方々は、半導体と聞いてどれくらいのサイズ感のものが製品の中に入っていると考えればいいですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 中心の石の部分は2cm角くらいもあれば、0.5mm角というものもあります。電車に使われるパワー半導体では10cm角というものもありますが、それは特殊なもの。普通の人が使う製品に入るものだと、最大でも2cm角とかじゃないかな。それより大きなものはないと思います。<br />
</p>
<h3>電気自動車よりガソリン車の方が多くの半導体を使っている</h3>
<p><b>西村</b> なるほど。半導体はとても小さなものだということが分かりました。前回のこの企画では電気自動車の未来について話をしました。この企画ではまだ取り上げていませんが、自動車業界ではADAS(エーダス:先進運転支援システム)も大きな話題です。それらが進んでいくと、使われる半導体の数も加速度的に増えていくという理解で大丈夫でしょうか。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> ADASに関してはその理解で大丈夫ですが、電気自動車に関しては単純に現在の車の形で電気自動車になると、<b>半導体の数は逆に減っていきます。</b>先日あるティア1(メーカーに直接部品や製品を納入するサプライヤー)の方に「今後、車の電動化が加速すると御社はもうかりまくって笑いが止まらないですね」と話したら <b>「それは違います。今、この瞬間にすべての車がEVになるとうちの売り上げは20%ダウンです」</b>と聞きました。<br />
<br />
<b>西村</b> それはなぜですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 現在のガソリン車やディーゼル車には、燃料噴射や温度管理など様々な形で電子制御が入っていてセンサーをたくさん使っていますが、 <b>電気自動車だとそれらが必要なくなる</b>のです。<br />
</p>
<div class="taC w600_img mB10"><img alt="日産 アリア" data-credit="日刊カーセンサー" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65850/Nissan_Ariya_front_quarter_3.jpg" width="600" /> <span class="CP_txt">前回の放談テーマでもあった「電気自動車」(日産 アリア)。素人感覚では半導体がたくさん使用されているようなイメージなのだが……</span></div>
<p><b>西村</b> 電気自動車の場合は、ガソリン車ほど複雑な制御が必要ないということですね。日本人の感覚だと、 <b>ハイブリッドカーやPHEVなどガソリン車とEVの中間的なものにまだ安心感を覚える傾向</b>があって、メーカーも様々な選択肢を用意するという形を取っています。そうすると、エンジンを置くスペースとバッテリーを置くスペース両方に対応できる車作りが必要になって、制御面でも両方用意しないといけない。でも、半導体不足の影響を考えると実はEV専用モデルを生産すると供給が安定するなんてこともありそうですね。数が出れば価格も抑えることができるし。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> それもひとつの考え方として理解できます。<br />
<br />
<b>西村</b> 欧州は政治も含めて電動化、それもEVの方に舵を切っています。ただ、すべてを置き換えたときにエネルギーやサプライヤーなどを置き換えることができるのか。そこにも難しさがありますね。<br />
<br />
<b>大津</b> お話が盛り上がっているところにすみません。今回はまず半導体の基礎の基礎にあたるお話を伺いました。この続きは、次回のお話にしてもよろしいですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 分かりました。次回からはいよいよ現在世界で起こっている深刻な状況について迫っていきましょう。<br />
<br />
<b>大津</b> 楽しみにしています!<br />
<br />
(次回へ続く!)<br />
</p>
<div class="author2019">文/フェルディナント・ヤマグチ 写真/いらすとや、日産</div>
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<figure class="konokiji_face"><img alt="フェルディナント・ヤマグチ" height="200" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65371/fy02.jpg" width="200" /></figure>
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<p class="katagaki">コラムニスト</p>
<p class="writername">フェルディナント・ヤマグチ</p>
</div>
</div>
<div class="konokiji_box_text">
<p>カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。</p>
</div>
<div class="kijiyomu">
<p><a class="iconLink arrowRight" href="https://www.carsensor.net/contents/tag/tag_3141/">この人の記事を読む</a></p>
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<!--ライター紹介パーツ終了-->
<h3 class="link_tit">【関連リンク】</h3>
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<ul class="Base_Templete_Link3">
<li><a href="https://www.carsensor.net/contents/tag/tag_3172/" target="_blank">これまでの時事放談はこちら</a></li>
<li><a href="https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00105/00099/" target="_blank">西村編集長を取材した日経ビジネス電子版の記事はこちら(※外部サイトに遷移します)</a></li>
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<div class="taC w600_img"><img alt="アイサイトイメージ" data-credit="スバル" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65807/01.jpg" width="600" /><span class="CP_txt">▲自動車・カーライフに関する調査研究機関「カーセンサー自動車総研」の膨大な統計データを基に、ユーザーの購買行動や世の傾向を勝手に予想したり解説したりするコラム</span></div>
<h3>年々増加傾向を見せる高品質アイテムへのニーズ</h3>
<p>時代時代の豊かさや憧れを象徴するアイテムを“三種の神器”と呼んだりする。<br />
<br />
戦後の復興期は、「白黒テレビ、洗濯機、電気冷蔵庫」が三種の神器といわれていたが、後の高度経済成長期に入ると「カラーテレビ、車、クーラー」がそれに代わった。<br />
<br />
車の装備にも時代を反映する“三種の神器”が存在する。<br />
<br />
例えば、今では当たり前の「エアコン、パワステ、パワーウインドウ」が愛車に付いていると、鼻高々な時代があった。<br />
<br />
また、買い取りや下取りで高い査定が付くということで、「本革シート、サンルーフ、カーナビ」が今でも“三種の神器”に見立てられることがしばしば。<br />
</p>
<div class="taC w600_img mB10"><img alt="カーセンサー自動車総研グラフ" data-credit="日刊カーセンサー" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65807/02.jpg" width="600" /></div>
<p>グラフ①をご覧いただこう。2017年以降、車や車に関連するものは高品質で良いものを持ちたい、と考えている人が、年々増加していることがわかる。<br />
<br />
“車に関連するもの”に装備が含まれると考えると、時代によって豊かさや憧れを象徴する装備が変化していることの裏付けとして、このデータを見ることができそうだ。<br />
<br />
最近の人気装備のトレンドを知るべく、中古車購入時に合わせて買った装備を調べてみたところ、カーナビやカーオーディオ、DVDプレーヤーといった「カーAV機器」が一番多かった。それにバックモニターやサイドモニターなどの「モニター装備」と「ドライブレコーダー」が続く。<br />
<br />
ところが、同じデータを世代別に見てみると、若い世代、特に20代は「衝突軽減ブレーキ」がトップになるなど、他の世代と異なる傾向があることがわかった(表①)。<br />
<br />
他の世代で人気の「カーAV機器」に対する20代の興味関心の低さを示すこの結果は、彼らがスマホやタブレットを使いこなすデジタルネイティブと呼ばれていることと重ね合わせると、とても説得力がある。<br />
<br />
おそらく「衝突軽減ブレーキ」を筆頭とする安全関連の装備が、令和の“新・三種の神器”の有力候補だと考えて間違いないだろう。<br />
<br />
つまり、表②の結果はこれからの車選びにおいて、安全装備の重要度が一層増すことを示唆していると考えられる。<br />
<br />
5月20日発売の中古車情報誌「カーセンサー」の特集では、キラリと光る個性が魅力の贅沢コンパクトカーに注目している。“三種の神器”がそのときどきの豊かさや憧れを象徴するアイテムであるなら、その筆頭候補である安全関連の装備も、ある意味、贅沢を味わえる個性となりうるはずだ。<br />
<br />
とはいえ、新車購入時に最先端の安全装備をフルスペックで導入するとなると、購入予算が必然的に上がってくる。<br />
<br />
だからこそ、装備の有無による価格差がかなり解消されている中古車は、これからも魅力的な選択肢であり続けるだろう。<br />
</p>
<h3>20代にオススメ! 予算100万円で買える贅沢装備付きモデル3選</h3>
<p><b>1:スバル インプレッサスポーツ(初代)</b><br />
</p>
<div class="taC w600_img mB10"><img alt="スバル インプレッサスポーツ" data-credit="スバル" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65807/03.jpg" width="600" /> <span class="CP_txt">▲衝突軽減ブレーキの先駆けとして抜群の知名度を誇る「アイサイト」。初代インプレッサスポーツの場合、アイサイトver.2が付いた前期型の2L車が予算100万円の射程圏内だ</span></div>
<ul class="Base_Templete_Link3">
<li><a href="https://www.carsensor.net/usedcar/search.php?STID=CS210610&FAIR=96816&fed=contnikkancs_20210513_oc20210513001to" target="_blank">総額100万円以下のスバル インプレッサスポーツ(初代)の中古車はこちら</a></li>
<li><a href="https://www.carsensor.net/catalog/subaru/impreza_sport/F001/" target="_blank">スバル インプレッサスポーツ(初代)の詳しい情報はこちら</a></li>
</ul>
<p><b>2:トヨタ アクア(初代・現行型)</b><br />
</p>
<div class="taC w600_img mB10"><img alt="トヨタ アクア" data-credit="トヨタ" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65807/04.jpg" width="600" /> <span class="CP_txt">▲衝突軽減ブレーキなどの安全装備をパッケージ化したトヨタセーフティセンスCが採用された2015年11月以降の物件に注目。予算100万円でも選択肢が豊富なのがグッドだ</span></div>
<ul class="Base_Templete_Link3">
<li><a href="https://www.carsensor.net/usedcar/search.php?STID=CS210610&FAIR=96817&fed=contnikkancs_20210513_oc20210513001to" target="_blank">総額100万円以下のトヨタ アクア(初代・現行型)の中古車はこちら</a></li>
<li><a href="https://www.carsensor.net/catalog/toyota/aqua/" target="_blank">トヨタ アクア(初代・現行型)の詳しい情報はこちら</a></li>
</ul>
<p><b>3:ホンダ フィット(3代目)</b><br />
</p>
<div class="taC w600_img mB10"><img alt="ホンダ フィット" data-credit="ホンダ" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65807/05.jpg" width="600" /> <span class="CP_txt">▲衝突軽減ブレーキなどをセットにした安心パッケージが一部グレードを除き標準化された2014年11月以降の物件がターゲット。ガソリン車だけでなくハイブリッド車も視界に入るぞ</span></div>
<ul class="Base_Templete_Link3">
<li><a href="https://www.carsensor.net/usedcar/search.php?STID=CS210610&FAIR=96818&fed=contnikkancs_20210513_oc20210513001to" target="_blank">総額100万円以下のホンダ フィット(3代目)の中古車はこちら</a></li>
<li><a href="https://www.carsensor.net/catalog/honda/fit/F003/" target="_blank">ホンダ フィット(3代目)の詳しい情報はこちら</a></li>
</ul>
<div class="author2019">文/編集部、写真/スバル、トヨタ、ホンダ</div>
<h3 class="link_tit">【関連リンク】</h3>
<ul class="Base_Templete_Link3">
<li><a href="https://www.carsensor.net/contents/tag/tag_2972/" target="_blank">この他の「カーセンサー自動車総研」記事はこちら</a></li>
</ul>
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<p>みなさまごきげんよう。フェルディナント・ヤマグチでございます。<br />
<br />
「半導体の供給不足により自動車メーカーが工場の稼働を停止」というニュースをご覧になった方も多いでしょう。5月18日には、これまで供給網の整備などでこの状況をしのいでいたトヨタも6月に初めて国内工場の一時停止をするというニュースが流れました。<br />
<br />
1台の車は数万点にもおよぶ部品が組み合わさってできています。半導体はとても小さく、車に使われるのはどんなに大きくても数cmほどのサイズ。それでも、ひとつでも足りなければ車を製品として世に送り出せません。<br />
<br />
半導体不足という自動車業界を襲った深刻な問題。今回はその核心に迫ります。専門的な話も出てきますが、みなさんしっかりついてきてください。<br />
<br />
※この対談は2021年6月4日に行いました。<br />
</p>
<ul class="Base_Templete_Link3">
<li><a href="https://www.carsensor.net/contents/editor/category_1585/_65850.html" target="_blank">前編はこちら</a></li>
</ul>
<h3>グローバルで分業化が進んだ半導体業界</h3>
<p><b>編集担当・大津</b> フェルさん、編集長。今回もよろしくお願いします。前回は本題に入る前に半導体がどういうものなのかを読者の皆さんにも理解していただこうと、基礎的なお話を伺いました。いよいよ今回から、自動車業界で現在起こっている問題についてお話を伺えればと思います。<br />
<br />
<b>カーセンサー・西村編集長(以下、西村)</b> 車はスマホや家電などと比べて大きな製品だし、使う半導体の数も半端じゃないから、半導体メーカーにとっては上得意では? という感覚があります。実際、半導体業界ではどのような位置付けなのですか? 例えば半導体が使われている量だとか、半導体の供給先として自動車産業が占める割合などを教えてもらっていいでしょうか。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェルディナント・ヤマグチ(以下、フェル)</spam> 2020年の世界の半導体市場は4403億ドルでした。1ドル=109円で換算すると約48兆円ですね。その中で、車載の半導体は500億ドル。シェアは約11.4%です。<br />
<br />
<b>西村</b> 思ったよりも少ないですね。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 車には非常に多くの半導体が使われていますが、そのほとんどは何年も前に開発されて価格も十分下がったものになります。今、高度な半導体の需要は圧倒的にスマートフォンなんですよ。西村さん、大津さん、そして読者の皆さんにも半導体のことを学ぶうえで「TSMC」という会社を絶対に覚えておいてもらいたい。<br />
<br />
<b>西村</b> 台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングですね。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> TSMCは世界一の半導体受託生産会社です。半導体業界はグローバルで分業化が進んでいて、日本の半導体メーカーは最先端の半導体を製造していません。<b>高度な技術を要する最先端の半導体の多くをTSMCが生産を請け負っています。</b><br />
<br />
車載半導体はドイツのインフィニオン・テクノロジーズとオランダのNXPセミコンダクターズ、そして日本のルネサス エレクトロニクスが3大メーカーといわれています。<br />
<br />
半導体は中の線の幅が細いほど性能が高くなりますが、これらの会社も線幅が40ナノメートルより細いものの製造はTSMCに委託しています。<br />
<br />
<b>西村</b> それはなぜですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 最も大きな理由は設備投資です。半導体の生産ラインを作るためには莫大な設備投資が必要で、高度なものになるほどその額も跳ね上がります。ハイエンドの半導体製造ラインだと一棟数千億円は必要になるでしょう。<br />
<br />
<b>大津</b> 数千億! それをいくつか作ったら兆の設備投資が必要ですね。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> だとしたら自前で作るのではなく受託生産の方が効率的であるという判断ですね。半導体メーカーの中には自社で一切製造ラインをもたないところもあります。<br />
このようなメーカーを“ファブレス”といいますが、ルネサスなどはミドルレンジまでを自身で製造し、ハイエンドの製品を外部に委託しているので“ファブライト”といわれています。<br />
<br />
<b>西村</b> なるほど。そして、その能力をもった会社に生産依頼が集中する構造になったわけですね。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> では、TSMCの売り上げの中で車載半導体のシェアはどれくらいか。大津さん、分かりますか?<br />
<br />
<b>大津</b> 半導体市場での車載のシェアが1割強ですから、同じくらいでしょうか。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> わずか4%です。しかも、それは車載の中では最先端ですが、TSMCが製造する半導体の中ではそこまででもない。いま、TSMCが作っている<b>超最先端の半導体は線幅が5ナノメートルのもの</b>になります。それを使うのはスマホなのです。<br />
<br />
<b>西村</b> 車載向けのものはどれくらいの線幅ですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> スバルの新しいアイサイトには最先端の半導体が使われていますが、それも16ナノです。スマホより3倍も太い。しかも、半導体メーカーは車載向けに対して、その他の半導体の6倍のテストを行っています。<br />
<br />
<b>大津</b> 6倍も! それはなぜですか?<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> ひとえに、<b>車が人の命を預かる製品だから</b>です。万が一、走っている最中に半導体が原因でトラブルが発生したら、人の命が奪われる可能性だってありますよね。スマホは最悪壊れたとしても、人が死ぬことはありません。<br />
</p>
<div class="taC w600_img mB10"><img alt="スバル アイサイトイメージ" data-credit="日刊カーセンサー" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65851/2010LEV017(1).jpg" width="600" /> <span class="CP_txt">スバルが最先端のテクノロジーを駆使して搭載した「アイサイト」は、自動車位置を正確に把握して複雑な道路情報まで認識する。この技術にも、もちろん半導体が欠かせない</span></div>
<p><b>西村</b> 確かに。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> テストに6倍の時間がかかるということは、その分コストもかかる。製造側の負担は非常に大きなものになります。それなのに、売り上げは全体のわずか4%しかない。<br />
<br />
<b>西村</b> そうなると半導体メーカーの立場で考えれば、値段は高いし手間もかからないからスマホ向けのものを作った方がいいとなります。<br />
</p>
<h3>コロナに停電、火災……。半導体業界を襲った悲劇</h3>
<p><spam class="text-bold-orange">フェル</spam> そのとおりです。そして、ここからが悲劇の始まりの話になります。昨年からの新型コロナウイルスによるパンデミックで世界の自動車メーカーは需要が大幅に減ると判断し、注文していた半導体製造を大量にキャンセルしました。<br />
<br />
<b>西村</b> 突如キャンセルされた方はたまったもんじゃないですね。当然、他の業界へ営業をかける。<br />
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<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> そのとき、TSMCの中で車載半導体のシェアは2%にまで落ちたそうです。<br />
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一方で、同じ時期に巣ごもり需要でスマホやゲームPCをはじめとするハイエンドPC向けの半導体の注文が大量に入った。そのため、半導体メーカーはそちら向けの生産にシフトしました。一方、ふたを開けてみたら自動車はパンデミックの中でも思ったより需要が下がりませんでした。<br />
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<b>西村</b> 日本でも公共交通機関を使うのが不安だからと、<b>これまで車は必要ないと考えていた人が車を買う</b>という現象も見られましたね。自動車業界は再び半導体を注文するけれど、半導体メーカーは生産体制をガラッと変えたからそれを急に戻すことができない。スマホやハイエンドPCの需要が減ったわけではないから。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 「は? 突然キャンセルして今さら再注文と言われたって対応できるわけないでしょう」というのが半導体メーカーの正直な気持ちでしょうね。それでも、なんとか頑張って戻そうとしていますが、先のTSMCでいえば、社内の比率はやっと3%になったくらい。コロナ前の状態にはまだまだ戻っていません。<br />
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<b>西村</b> つまり、いまの状況は<b>たった1%元に戻っていないだけで起こっている</b>ということですね。<br />
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<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> そして、この状況に追い討ちをかけるように大問題が起こりました。<br />
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<b>西村</b> それはなんですか?<br />
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<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 先ほど名前を挙げたNXPとインフィニオンの車載半導体の工場はアメリカのテキサスにあります。今年の冬にテキサスが大寒波に見舞われて大停電が発生し、両社の工場は長期の生産停止を余儀なくされたのです。さらに、ルネサスは今年3月に茨城県にある那珂工場の生産ラインで火災が発生。やはり、こちらも半導体の製造がストップしました。<br />
<br />
<b>西村</b> 最先端の半導体だけでなく、大量に使う部分まで供給がストップした……。<br />
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<b>大津</b> ルネサスの火災は日本の自動車メーカーなど取引先からの応援が入って、火災から1ヵ月で生産が再開し、5月末時点で9割弱まで生産能力が復旧したという報道がありました。<br />
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<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 実はルネサスの工場は東日本大震災のときにも完全に倒壊してしまい、このときも世界中の自動車メーカーが車を作れないという事態になったことがあります。その際、トヨタをはじめ日本の自動車メーカーが再建に向けて社員を大量に応援に出して、わずか半年で工場がフル稼働できるようになりました。<br />
</p>
<h3>半導体不足の影響で中古車の落札価格も上昇傾向に</h3>
<p><b>西村</b> もう少し話を掘り下げてもいいですか。半導体が不足しているという危機感とそれをすぐには補えないという事情はよく分かりました。この話は自動車メーカーが全体的に業績を下方修正するような話なのか、あるいは特定メーカーや特定の機能の部分に影響が出る話なのか。そのあたりはいかがでしょう。<br />
<br />
<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> コロナ前だと<b>世界の自動車販売台数は年間9000万台強</b>でした。2021年の第一四半期では、半導体不足によって世界中の電動車が100万台減産されたといわれています。通年だと、300万台分の生産が遅れるのではないかという見方も出ています。<br />
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<b>西村</b> なるほど。それはかなりの数です。<br />
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<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> TSMCは台湾にある会社ですが、実は今、台湾は深刻な水不足に陥っています。半導体は製造過程で大量の水を使うんですよ。<br />
それによって減産を強いられる事態も出ています。シェアが低いとはいえ、<b>この影響は自動車業界にも出てくるでしょう。</b>先ほど話した100万台、300万台という数字はあくまで電動車の数字です。普通の車にも半導体はたくさん使われているので、今年はかなり厳しいかもしれないですね。<br />
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<b>西村</b> ちなみにいま、中古車まわりでは新車がお客さんのところに納車できないので下取り車が発生しないために、オークションに車が出てこなくて落札価格が上がっているという現象が出てきています。<br />
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<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 新車がないから、中古車がたくさん売れてもうかるという単純な話ではないわけか。<br />
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<b>西村</b> 業態にもよりますが、仕入れ値に影響が出ているので中古車だけが売れて、中古車業界がもうかるという単純な構図にはなかなかなっていないですね。<br />
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<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 仕入れ値が上がったからといって、すぐに売値に反映できるわけではない。<br />
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<b>西村</b> それもありますし、あとは単純に商品を仕入れにくくなっているという状態だと思います。中古車マーケットの需要は盛り上がっていますが、すべての販売店がすべからく利益を上げているかというと、必ずしもそうではなくグラデーションがある状況でしょうか。<br />
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<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> なるほど。それは分かりやすい。<br />
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<b>西村</b> コロナ禍になってからは、<b>世界中でハイエンドの車やスポーツカーの人気が高まっています。</b>どこかに行って何かを楽しむことができなくなった中で、ただ走るだけで楽しめる、あるいは1人でいじって楽しめる車が日本はもちろん、世界中で盛り上がっています。<br />
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<spam class="text-bold-orange">フェル</spam> 日産のスカイラインGT-Rや80系スープラ、あるいは初代ロードスターなどは海外での人気もあって相場が高騰していますよね。私のポルシェも値段が上がらないかな。<br />
<br />
<b>大津</b> すみません。そろそろ中編のお話を終わりにしてもいいでしょうか。いまの半導体不足がなぜ発生したのか、それをすぐ解消できない理由は何かがよく分かりました。後編では半導体を軸にこれからの自動車業界がどうなっていくか、フェルさんの考えをぜひ聞かせてください! <br />
</p>
<div class="taC w600_img mB10"><img alt="マツダ ロードスター" data-credit="日刊カーセンサー" src="//wwwtst.carsensor.net/contents/article_images/_65851/P1J16502l.jpg" width="600" /> <span class="CP_txt">世界中のファンから熱視線を集めているマツダ ロードスター(初代)。半導体不足によって中古車の価値も上昇する未来が来る?</span></div>
<p>(次回へ続く!)</p>
<div class="author2019">文/フェルディナント・ヤマグチ 写真/スバル、マツダ</div>
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<p class="katagaki">コラムニスト</p>
<p class="writername">フェルディナント・ヤマグチ</p>
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<p>カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。</p>
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<li><a href="https://www.carsensor.net/contents/editor/category_1585/_65850.html" target="_blank">前編はこちら</a></li>
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