EVハイパーカーメーカー「リマック」が今熱い!従来のスーパーカーを猛追するクロアチアの新星【INDUSTRY EDGE】
カテゴリー: クルマ
タグ: EV / EDGEが効いている / 古賀貴司 / c!
2021/06/19
感性を震わす多くのスーパーカーを作る会社も、もちろん山あり谷ありのドラマティックな道を歩んできた。買収、経営者交代、資金不足、リコール問題。そして、現在も絶え間なく状況は変わり続けている。まさに、波乱万丈なスーパーカーメーカーの「今」を自動車ライター古賀貴司氏が分析。
今回は、販売台数10台未満にもかかわらずEVスーパーカーの世界をけん引する「リマック」について解説する。
圧倒的クオリティと性能に伝統ある老舗メーカも大注目
「テスラ」の名前を耳にしない日はないと言ってもいいくらいだが、日本で「リマック」を聞く機会は少ない。最近はブガッティを買収するのではないか、という噂がチラホラ出ていて、個人的にはものすごく注目している。
創業者のメイト・リマック氏はBMW M3(E30型)でレースを楽しむエンスーだったが、車が壊れて電気部品を購入してEV化したのがリマック創業の始まり。まさに、アメリカンドリームならぬクロアチアンドリームだ。しかも、2009年に創業したとき、弱冠21歳……。
インホイールモーター、高出力バッテリー、トルクベクタリング(四輪インホイールモーターを電子制御して安定性を確保)、というリマックのEV“方程式”を用いて、2011年には「コンセプト ワン」を発表。たしかに、ものすごい加速力を披露していた。
たった8台しか生産されず、しかも1台はネット番組「グランドツアー」(元トップギアメンバーによる車番組)で撮影中にスリップ、坂を転がり落ち炎上……。運転していたリチャード・ハモンドは足を骨折するも命に別状はなかった、ということでリマックにとっては良い宣伝になったのかもしれない。
スーパーカーを超える、"EVハイパーカー”メーカーとしての世界的な認知度は十分ある。技術力は確かなようで、モンスター田嶋のパイクスピーク・ヒルクライム・マシンに、パワートレインとバッテリーを供給していた。
目を見張るのは、CRUNCHBASEで公開されている出資者履歴でEUの中小企業支援金、中国のバッテリーメーカー「キャメル・グループ」、ポルシェの投資会社「ポルシェ・ベンチャーズ」と「ポルシェ」本体、韓国の「起亜」と「現代自動車」などが株主として収まっていることだ。なお、イギリスの自動車誌「Car」によるとジャガー、ケーニグセグ、マグナなども株主だとか。
そんなリマックが、新社屋の建設着工を発表した。もちろん、昨今の資金回りの良いテック系ベンチャーらしく、「新社屋」ではなく「キャンパス」と呼んでいる(笑)。自社製品の生産・開発のみならず、他社へのバッテリーシステムのOEM供給も決まっているとか。
約2500名の従業員を迎え入れるキャンパスは、生産工場だけでなくR&D施設やテストコースも備える予定だ。また、従業員の待遇を最優先しゲームルーム、ジム、キャンティーン、幼稚園、トレーニングセンター、カンファレンスホール、ミュージアム、牧場なども完備するという。
そして、リマックの新しいテストコースには、ドリフトをしないと曲がれないコーナーが設けられる、と噂されている。リマックはYouTubeで積極的に動画を公開するメーカーなので、そのうちドリフトするテスト車両が見られることだろう。
なお、最近は「C_TWO」と呼ばれる次期ハイパーカーの開発模様が公開されている。とりあえずブガッティ シロンの0 - 400m加速には勝てた、とリマック氏はご満悦の様子。ハイパーカーだけで商売が成り立つとは思えないので、今後のOEM供給内容に要注目だ。
6月1日、量産モデル公開とともにC_Twoの名称が「ネヴェーラ」に決定!
本記事執筆後の6月に、リマックは最新モデルの「ネヴェーラ」を発表した。C_Twoの正式な名前としてつけられたこのネーミングは、リマック社屋の近郊で発生する嵐に由来している。
独自のトルクベクタリングシステムによって、4基のモーターをコントロールする4WDを搭載する。最高出力1914ps、最高トルクは2300N・mを発揮。最高速度は412km/h、0-100km/h加速は1.97秒、1/4マイル(0 - 402mスプリント)は8.6秒と、驚異的なスペックを誇っている。さらに、120kWhという大容量バッテリーを搭載するため、WLTP規格で550kmという航続距離も実現している。
新車販売価格は200万ユーロ(2億6000万円)からで、150台の限定生産となる。
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