「ミニクーパーはやめとけ」は本当か? 輸入中古車評論家がお答えします!
2022/08/30
「やめといた方がいい」と言われたが……?
過日、22歳になった筆者の姪っ子から「ミニクーパーを中古で買おうと思い友だちに相談したら『やめといた方がいい』と言われたけど、輸入中古車評論家としてあちこちで活躍(?)してる叔父さんはどう思いますか?」とLINEが届きました。
結論から申し上げると、「ミニクーパー」の中古車購入を「絶対にやめた方がいい」ということはありません。買っても大丈夫です。ただし、世代ごとに注意点があります。
以下、筆者から姪っ子へのLINEの返信をおおむね再現する形で、「中古ミニクーパーの真実」をお伝えしましょう。
【概要】そもそも「ミニクーパー」とはどんな車か?
まず姪っ子が言う「ミニクーパー」というのは、「ミニ」という車のことを指しているのだと思います。
ミニは、もともとは1950年代に発売された英国製の小型車でしたが、2001年以降はドイツのBMW社が「ミニ」という名前のコンパクトカーを製造しています。で、「クーパー」というのはミニという車のひとつのグレードで、他にも「ワン」とか「ジョン・クーパー・ワークス」とか、いくつかのグレードがあります。
しかし、ミニが英国車だった時代から「ミニ クーパー」というグレードがあまりにも有名で、かつ語呂も良かったため、多くの人が「ミニ」のことを「ミニクーパー」と俗称するようになったわけです。
BMW製になってからのミニは3世代に分けることができ、現在新車として販売されているミニは3世代目です。
最初の世代が登場したのは2002年で、グレードは大きく分けて「ベーシックなワン」「中間のクーパー」「強力なエンジンを積んだクーパーS」の3種類です。
第2世代のミニが上陸したのは2007年。第2世代になっても、デザインはいわゆる「キープコンセプト」であったため、初代と見た目はほとんど変わりません。
エンジンおよびその他は新世代のものに変わりましたが、基本となるグレードが「ワン」「クーパー」「クーパーS」の3つである点にも変化はありません。
そして現在新車として販売されている第3世代は、2014年に登場しました。車の基本的なプラットフォームがずいぶん新しくなり、3ドアハッチバックの他に5ドアのハッチバックも追加されたのがこの世代です。
全体的にぐっと品質が上がった第3世代ですが、デザインは初代からのおおむねキープコンセプトで、基本となるグレードも「ワン」「クーパー」「クーパーS」の3つです。
以上を踏まえ、本題である「ミニクーパーはやめた方がよいのかどうか?」を、それぞれの世代について見ていきましょう。
【第1世代】ビギナーには不向き。買うなら5MTのクーパーか、6速ATのクーパーSで
さて。以上のような概要となる「ミニクーパー」の中で、筆者の姪っ子が買おうと思ったのは第1世代、いわゆる初代ミニだったようです。
確かに初代ミニ クーパーの中古車価格は総額25万~100万円といったところですので、就職したばかりの姪としても現実的な選択肢だと思えたのでしょう。
しかし初代ミニ クーパーの中古車は、決して我が姪っ子のような「輸入車ビギナー」にとって最適な選択肢ではありません。
筆者も昔はこの世代のクーパーに乗っていましたので、いい車であることも、車として新しかった頃は特に故障もしない車であったことを、よく知っています。
しかし初代ミニ クーパーは、もはや生産終了から15年以上が経過した「古い車」です。車というのは古くなっても整備をすれば普通に走れますが、整備には、どうしたってお金も手間もかかるものです。
具体的には、初代ミニ クーパーの中古車では冷却関係の各部品が今となっては寿命を迎えている場合が多く、CVTというオートマの耐久性にもハッキリ言って難があります。また発電器やエアコン、燃料ポンプといった重要な部分の状態も気になるところです。
それゆえ、初代ミニは「中古車の履歴や状態を見極めることができるベテラン」には悪くないかもしれませんが、筆者の姪のようなビギナーにはあまりオススメはできません。
それでも「どうしても初代ミニ クーパーが買いたい!」というのであれば、以下のような選び方をオススメします。
●クーパーのCVTは不安なので「5MT」のクーパーを選ぶか、もしくはCVTではなく6速ATを採用していた「クーパーS」を選ぶ
●激安車ではなく、車両価格がある程度高めな物件に狙いをつける。そのうえで、整備記録簿の内容や中古車のコンディションを「読める」人と一緒に販売店へ行き、アドバイスをもらいながら取捨選択する
もしもこのような選び方をできるのであれば、初代ミニ クーパーであってもまあまあ無難に乗り続けることは可能でしょう。
▼検索条件
ミニ ミニ(初代) ×「5MT・クーパー」&「6速AT・クーパーS」× 全国▼検索条件
ミニ ミニ(初代) ×「クーパー」系グレード× 全国【第2世代】「タイミングチェーンの交換履歴」などを要チェック
2007年から2014年まで販売された第2世代のミニ クーパーも、安いモノであれば総額30万円ぐらいから見つけることができます。
そして第2世代のミニは、エンジンもBMWとプジョーグループが共同開発したものに刷新されるなどしましたので、乗り味等は初代よりもずいぶんと上質です。
しかしこの世代も、安めの中古車はビギナーにはオススメできません。
第2世代ミニ クーパーのエンジンには「タイミングチェーン」という部品が使われていて、普通はあまり頻繁に交換する必要がない部品なのですが、第2世代ミニのタイミングチェーンはなぜか8万kmぐらいで伸びてしまったり、ガイドの部分が割れてしまったりすることもあるのです。
タイミングチェーンのガイドが割れると、その破片がエンジン内部を駆け巡ることになるため、そのうちエンジン本体が壊れてしまいます。そうなると100万円ぐらいかけてエンジンを載せ替えるか、いっそ廃車にするか……という選択肢しかなくなるわけです。
とはいえ、現在流通しているすべての第2世代ミニ クーパーが「すぐにエンジンが壊れる」というわけでは決してありません。選び方・探し方次第では普通に快適に乗れるのが、第2世代のミニ クーパーという車です。
第2世代のミニ クーパーを探す際は、以下の方向性で検討するといいでしょう。
●一概に価格で切れる話でもないのだが、車両価格は「80万円以上」をひとつの目安にする
●整備記録簿などで「おおむね1万kmごと、または1年ごと」にエンジンオイルが交換されてきたかどうかを確認する(※メーカー指定は「2万5000kmごと」ですが、日本の使用環境を考えると1万km以内での交換が望ましいでしょう)
●走行距離多めの物件の場合は、走行6万kmぐらいの頃にタイミングチェーンが交換されているかどうかを確認する
●その他、整備記録簿の内容確認と内外装の目視により「なるべく丁寧に扱われ、定期的な整備を経てきたと確信できる個体」に的を絞り、それ以外の個体は完全に無視する
このような探し方をすれば、第2世代のミニ クーパーならではのキビキビした走りを普通に楽しめる可能性は高いでしょう。
もちろん、自分が買った後の定期的な点検とメンテナンス=年に1回はオイル交換のついでに、整備のプロに下まわりなどを見てもらうことも重要です。
▼検索条件
ミニ ミニ(2代目) ×本体価格80万円以上×「クーパー」系グレード× 全国▼検索条件
ミニ ミニ(2代目) ×「クーパー」系グレード× 全国【第3世代】前期型は冷却系の部品などの交換履歴をチェックしたい
2014年に登場した第3世代のミニ クーパー、すなわち現行型のミニ クーパーは中古車でも我が姪っ子にとってはやや高額で、彼女の健闘範囲には入っていなかったようですが、いちおう第3世代についても軽くご説明しておきましょう
現行型(第3世代)ミニ クーパーの中古車価格は総額100万~420万円ぐらいと、かなり上下に幅広い状況。
そのうち、2018年8月のマイナーチェンジ前の「前期型」は総額100万~260万円といったところで、内外装デザインとトランスミッションが変更された「後期型」は総額総額240万~420万円ぐらいのイメージです。
2018年半ば以降の後期型ミニ クーパーはまだ新しい世代ですので、「内外装がきれいかどうか?」「変な音やにおいはしないか?」「ディーラーで2年に一度は点検と整備を受けているか?」ぐらいの基本的なチェックをすれば、おおむね失敗はしないことでしょう。
しかし前期型では、冷却系のサーモスタットという部品などが最初の寿命を迎えるタイミングとなっています。そのため、
●あくまで目安ではあるが「車両価格120万円以上」に絞って検討する
●整備記録簿でサーモスタットなどの交換履歴を確認する
等々の、比較的細かな検討は必須であると思ってください。
▼検索条件
ミニ ミニ(3代目) ×本体価格120万円以上×「クーパー」系グレード× 全国▼検索条件
ミニ ミニ(3代目) ×「クーパー」系グレード× 全国いろいろと申し上げたことで、「中古のミニクーパー=やめといた方がいい」というネット上の言説が「まったくの間違いではない」ということは伝わったかと思います。
特に第1世代と第2世代のミニ クーパーは「慎重に選ぶべき中古車」であるといえます。
しかし、ツボを押さえた探し方ができるのであれば、決して「絶対にやめといた方がいい」という選択肢ではないのです。
あせらずじっくり、そして激安車狙いではなく「ある程度以上の価格の中古車」に的を絞り、ぜひともステキでかわいい「ミニクーパー」を探してみてください。
▼検索条件
ミニ ミニ(初代&2代目&3代目) ×「クーパー」系グレード× 全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。