▲今回の車検でかかった費用は、重量税や自賠責保険などの法定費用が7万40円。車検整備費用(含むパーツ&アライメント代)が6万8200円で合計13万8240円 ▲今回の車検でかかった費用は、重量税や自賠責保険などの法定費用が7万40円。車検整備費用(含むパーツ&アライメント代)が6万8200円で合計13万8240円

11年落ち、走行8万km車の状態とは?

「そろそろ車検か……」と、ため息交じりにつぶやいたことはないだろうか?

車検は、車の状態や自分の意思と関係なく強制的に“やらなければならない”義務であり、場合によっては3~5日も車を預ける必要もある面倒事であり、それでいて結構な額の出費を強いられるのだから、ぼやきたくなる気持ちもわかる。

古い車に乗る人にとっては、車検を通して乗り続けるか、思い切って買い替えるかの決断を迫られる頭の痛いタイミングでもある。そんな、多くの自動車ユーザーに忌み嫌われている車検が、総額75万円で購入した我が2代目マツダ ロードスター(NR-A)にもやってきた。

我がNR-Aの初度登録は平成15年6月。現時点での走行距離は8万km。昨年12月末に手に入れてから約7000km走っており、サーキットでのスポーツ走行や耐久レースも行っているため、使い方はかなりハードだと言えよう。

「11年落ち以上」かつ「走行距離8万km以上」の2代目ロードスターの流通量は約180台(2016年5月27日現在のカーセンサーnet参照)。この数は、同モデル全流通量の約6割を占めている。つまり、我がNR-Aの現状は、中古車市場に流通している2代目ロードスターの“おおよそ”のコンディションを推し量るヒントとなるかもしれない。ということで、我がNR-Aの主治医である大山オート自動車部による診断結果を公開しよう。

・フロントのロアサスペンションアームのボールジョイントブーツがひび割れており、左右ともに交換
・左ヘッドライト(ロービーム)の電球が暗いため調整
・LSD(リミテッド・スリップ・デフ)のオイルが劣化しているため交換
・トランスミッションオイルが劣化しているため交換
・ブレーキフルードが劣化しているため交換

以上。

費用は、重量税や自賠責保険などの法定費用が7万40円、車検整備費用(含むパーツ&アライメント代)が6万8200円で合計13万8240円だった。

▲初度登録から11年経過し、走行距離は8万km。エンジンヘッドガスケットのオイル染みなど年式相応の症状はあるが、2代目ロードスターの賞味期限はまだたっぷり残っている ▲初度登録から11年経過し、走行距離は8万km。エンジンヘッドガスケットのオイル染みなど年式相応の症状はあるが、2代目ロードスターの賞味期限はまだたっぷり残っている

実は丈夫なロードスター

主治医によると、エンジンは全く異常なし。その他の部分も、年式相応ではあるものの状態はすこぶる良好とのこと。ちなみに走行距離が8万kmに達したため、予防も兼ねタイミングベルト交換を相談したが、その必要は全くないと主治医に一蹴された。2代目ロードスターの1.6Lエンジンは、ウォーターポンプなどの補器類を含め非常に作りが堅牢なため、走行10万km以前にベルトを交換するのは無駄とのこと。

もう少しお腹が痛くなるような診断結果を想定していたが、拍子抜けするほど11年落ち&8万kmのNR-Aには何も起きていなかった。だが一点だけ主治医の目がキラリと光る箇所があった。それはオイル。エンジンオイルは耐久レース前に交換していたため問題なかったが、デフとトランスミッションとブレーキのオイルは、「最後に交換されたのがいつかわからないくらい」古いもので、劣化がかなり進んでいたそうだ。この状態でハードに走り続けていたら、早晩ミッションやデフが壊れるというレベルだったとか。

▲わかりづらいかもしれないが、写真中央の光が当たっている黒いゴム部分が、今回交換したフロントロアアームのブッシュ。ひび割れていると車検に通らない ▲わかりづらいかもしれないが、写真中央の光が当たっている黒いゴム部分が、今回交換したフロントロアアームのブッシュ。ひび割れていると車検に通らない
▲7番のプラグでも焼けすぎの状態だったため、熱価の高い8番を購入。サーキット走行時だけ8番に交換する予定だ ▲7番のプラグでも焼けすぎの状態だったため、熱価の高い8番を購入。サーキット走行時だけ8番に交換する予定だ

車にもリフレッシュ休暇をプレゼント

デフとミッションのオイルは、エンジンのそれのように、状態を調べることが構造的に難しいそうだ。状態チェック=オイル交換となるため、特に不具合がなければ頻繁に交換するものではない。

だが今回は、不具合の予兆があった。車検の一月前に行ったサーキット練習走行の後、50km/h以上のスピードが出ると、どこかから「カリカリ」と金属音が鳴っていた。その音は翌日になると聞こえなくなった。それを主治医に伝えたところ、瞬時にデフオイルの劣化が原因だと判明。今回の車検で交換することになったのだ。

ところが、デフオイルを抜いてビックリ。入っていたものはかなり劣化してゼリー状になっており、もはやオイルの役割を果たしていなかったそうだ。トランスミッションオイルとブレーキフルードの状態にも疑いがかかり調べてみたところ、同様にかなり劣化が進んでいたことが判明したのだ。

時間もお金もかかる車検を、煩わしく感じるユーザーもいるだろう。一方で、愛車の状態を正しく把握でき、部品の破損や故障を未然に防げるなど、メリットも大きい。車検残のある中古車を購入した場合は、油脂類やゴム類などの消耗品をゼロリセットできるチャンスでもある。車検という制度自体を好きにならなくてもいいが、人の命を乗せて走る大切な相棒へリフレッシュ休暇をプレゼントすると考えれば、少しは気が楽になるのではないだろうか。

今回、我がNR-Aにはフレッシュなオイルだけではなく、サーキット走行を視野に入れたアライメント調整と、レース用に番手を上げた8番のスパークプラグも奮発。さぞやスッキリ爽快な走りで、楽しませてくれるに違いない! 次回のサーキット走行が楽しみだ。

▲アライメントとは、サスペンションとホイールの取り付け角度のこと。トーイン、キャンバー、キャスターの3つの角度があり、それぞれ直進/コーナリングの特性を左右する。今回はサーキット走行を踏まえ、「まっすぐ走る」と「コーナリングでリアが踏ん張る」という2つの特性を強化した数値に調整してもらった ▲アライメントとは、サスペンションとホイールの取り付け角度のこと。トーイン、キャンバー、キャスターの3つの角度があり、それぞれ直進/コーナリングの特性を左右する。今回はサーキット走行を踏まえ、「まっすぐ走る」と「コーナリングでリアが踏ん張る」という2つの特性を強化した数値に調整してもらった

【CERCとは】
中古車情報誌『カーセンサー』の連載『CERC』のスピンオフバージョンである。カーセンサー本誌に収録しきれなかった話題を、同連載の語り手である本誌デスク本人が赤裸々に綴る。ちなみにCERCとはCarsensor Editors Racing Club(カーセンサー・エディターズ・レーシング・クラブ)の略。

【筆者プロフィール】
1970年生まれ。群馬県在住の編集・ライター。カーセンサー本誌の編集デスク担当。
2015年9月に参加したメディア対抗ロードスター4時間耐久レースでの惨憺たる結果から一念発起。運転技術を磨くべく、マツダ ロードスター(2代目)のNR-Aを購入した。

text・photo/編集部 中野