▲スポーツカー然としたフェラーリとは姿形もイメージも異なるアルファロメオですが、その往年のV6エンジンは、フェラーリのV8エンジンにちょっと近いフィーリングなのです ▲スポーツカー然としたフェラーリとは姿形もイメージも異なるアルファロメオですが、その往年のV6エンジンは、フェラーリのV8エンジンにちょっと近いフィーリングなのです

祭りやフェラーリには問答無用で燃えてこそ人間の生!

過日、誘われて東京都品川区にある「戸越銀座」という商店街のお祭りを見に行った。地味な私鉄沿線駅のお祭りということで、事前の段階では失礼ながらナメていたのだが、実際目の当たりにしたそれはかなりのモノであった。特に、3年に1回のみ出動する戸越八幡神社の「本社神輿」においては、地元男衆の荒ぶる魂が熱く燃焼しまくる様が見て取れ、部外者にすぎない筆者でも感動を覚えずにはいられなかった。

なぜ、人は祭りに燃えるのだろうか? その問いに対して民俗学や文化人類学、心理学などの立場から分析することも可能なのだろう。しかし、戸越の男たちの熱く燃焼する魂を間近で見た直後の筆者としては、「分析なんざどうでもいい!」としか思えないのが正直なところだ。

▲8月末に開催された「とごしぎんざまつり」にて、3年に一度だけ登場する戸越八幡神社の本社神輿で大いに燃え上がる担ぎ手各位と、筆者を含む群衆たち。大変な騒ぎであった ▲8月末に開催された「とごしぎんざまつり」にて、3年に一度だけ登場する戸越八幡神社の本社神輿で大いに燃え上がる担ぎ手各位と、筆者を含む群衆たち。大変な騒ぎであった

無論、アカデミックな立場で分析や研究を職業にしておられる人のことを悪く言うつもりなどあるはずもない。だが「踊る阿呆に見る阿呆」ではないが、そこに何か燃えられる対象があるのであれば、まずはすみやかに自らのソウルを最大限燃焼させることこそが、人生においては大変重要かつ美しいわけで、「分析」はその次に来るべきものなのではないか……と思う次第なのだ。

ひるがえって自動車界における「魂燃焼系」といえば、やはりV8フェラーリに尽きるだろう。

V8フェラーリに乗ることを「オリンピックの100m走決勝のスタートラインに立ち、パンパカパーン! というファンファーレを聴く感じ」と例えたのはフェラーリ評論家(?)の清水草一氏だが、さすがは言い得て妙である。まぁオリンピックに出場したことはないので正味のところは不明だが、ドライバーの背後で甲高く炸裂するフェラーリ製V8の咆哮を聞くと人はまさにそんな気分となり、フェラーリ信者ではない筆者の魂すらも大いに燃え上がる。「もうこのまま壁に激突して死んでも悔いはない!」と思ってしまうぐらい、なぜか魂が最大限燃焼するのだ。そのあたりが、フェラーリという車に世界中の男たちがホレる理由の一つなのだろう。

▲写真は94年から99年まで販売されたV8フェラーリ、F355。往年のF1マシンもかくやの甲高く官能的なエンジンサウンドが魅力で、サウンドの心地よさに関しては現行モデル以上かも ▲写真は94年から99年まで販売されたV8フェラーリ、F355。往年のF1マシンもかくやの甲高く官能的なエンジンサウンドが魅力で、サウンドの心地よさに関しては現行モデル以上かも

理想はV8フェラーリだが、現実的な線としてはV6アルファか

ということで筆者も常々「超長期ローンを組めば庶民でもV8フェラーリの中古車は買えるし、リセール価格が鬼のように高いので、超長期ローンを組んでも家計破綻のリスクはきわめて低い」という趣旨の原稿を書いてはいる。

が、正直「やっぱ高いものは高い……」という気持ちもどこかにある。

「超長期ローンを組めば庶民でもV8フェラーリの中古車は買える」という言葉にいっさいの嘘はないが、とはいえそれなりに高額な頭金および毎月の支払額を用意する必要はあるので、そう簡単に踏み切れるわけでもないのだ。事実、筆者もさんざんそんな原稿で煽っていながら、自分ではまだV8フェラーリを買っていない。すみません。

そこで現実的な「魂燃焼系マシン」として注目したいのが、往年のV6エンジンを搭載するアルファロメオ各車だ。

フェラーリとアルファロメオでは姿形もイメージもずいぶん違い、なおかつ最近のアルファロメオ製エンジンの燃焼および回転フィールは、残念ながらフェラーリのような炸裂系/魂燃焼系ではない。が、00年代途中まで搭載されていたいわゆる純血V6は、フェラーリ製V8エンジンにきわめて近い魂燃焼系のエンジンなのだ。

まぁ「きわめて近い」と評するとフェラーリ愛好家から文句も出そうなので「けっこう近い」に訂正するが、とにかく旧世代のアルファ製V6は非常にフェラーリ的だ。ハッキリ言って燃費はイマイチで、オイル交換も3000kmごとぐらいに行わなればならない面倒くささはある。しかしその分、燃焼および回転フィールの甘美さだけは超絶的。V8フェラーリのように「このまま壁に激突して爆死しても構わない!」とまでは思わないが、「このまま壁に軽く激突して少々のケガをしても構わない!」ぐらいのことは思う。もちろん実際は紳士的運転に務めると同時に、自他の安全を再優先しなければならないのは言うまでもないが、この感覚は紛れもない事実である。

▲筆者が数年前まで乗っていたアルファロメオ アルファGTV 3.0 V6 24Vのエンジン。燃費や整備性はお世辞にも良いとはいえないが、そのフィーリングはフェラーリにも通じるやたら官能的なものであった ▲筆者が数年前まで乗っていたアルファロメオ アルファGTV 3.0 V6 24Vのエンジン。燃費や整備性はお世辞にも良いとはいえないが、そのフィーリングはフェラーリにも通じるやたら官能的なものであった
▲そのGTVのサイドビュー。鬼才エンリコ・フミアの筆による得も言われぬ造形も魅力だった ▲そのGTVのサイドビュー。鬼才エンリコ・フミアの筆による得も言われぬ造形も魅力だった

良質なV6アルファは残念ながら日々減少中。買うならちょい急げ!

そんな往年のアルファ純血V6エンジンを搭載する中古車を今から探すとなると、さしあたって選びやすい候補は以下のとおりとなるだろう。

■素の156 2.5 V6 24V(相場:30万~130万円ぐらい)
■スペシャルな3.2L搭載の156 GTA(相場:130万~270万円ぐらい)
■上記と同エンジンを搭載する 147 GTA(相場:80万~160万円ぐらい)
■後席が広い2ドアクーペ、GT 3.2 V6 24V(相場:150万~210万円ぐらい)
■後席が狭い2ドアクーペ、GTV 3.0 V6 24V(相場:50万~150万円ぐらい)
■上記の後期型にあたるGTV 3.2 V6 24V(相場:120万~150万円ぐらい)
■2シーターオープンの旧型スパイダー3.0 V6 24V(相場:120万~130万円ぐらい)
■上記の後期型にあたる旧型スパイダー3.2 V6 24V(相場:170万~200万円ぐらい)

素の156のV6搭載グレードはそれなりに流通量豊富だが、今や良質な個体は日々減少中。そしてその他のモデルは、流通量自体がかなり少なくなってきている。

往年のV6搭載アルファロメオは、高頻度のエンジンオイル交換やタイミングベルト交換およびその他整備など、多少の手間はかかる車だ。しかしそれだけの価値は絶対にある、貴殿の魂が震えること間違いなしの素晴らしい車であることだけは間違いない。一般的な市場から消えてしまう前に、ぜひあなた自身の身体でそれを堪能していただきたい。そして貴殿の限りある生を最大限燃焼していただきたいと、余計なお世話ながら強く思う次第なのだ。

▲4ドアセダンのアルファロメオ アルファ156。写真は3.2Lの特製V6エンジンを搭載する156GTA ▲4ドアセダンのアルファロメオ アルファ156。写真は3.2Lの特製V6エンジンを搭載する156GTA
▲こちらは小型ハッチバックのアルファロメオ アルファ147。写真は同じく特製V6搭載の147GTA ▲こちらは小型ハッチバックのアルファロメオ アルファ147。写真は同じく特製V6搭載の147GTA
▲2ドアクーペながら後席の居住性も良好なアルファロメオ アルファGT。市場の中心は直噴の直4だが、少数ながらV6搭載グレードも流通している ▲2ドアクーペながら後席の居住性も良好なアルファロメオ アルファGT。市場の中心は直噴の直4だが、少数ながらV6搭載グレードも流通している
▲こちらは純然たる2ドアクーペのアルファロメオ アルファGTV。写真は03年以降の後期型 ▲こちらは純然たる2ドアクーペのアルファロメオ アルファGTV。写真は03年以降の後期型
▲2シーターオープンの旧型アルファロメオ アルファスパイダー。フロントマスクはGTVと同一だ ▲2シーターオープンの旧型アルファロメオ アルファスパイダー。フロントマスクはGTVと同一だ
text/伊達軍曹
photo/フィアット・クライスラー・オートモービルズ、大子香山、伊達軍曹