▲高年式・低走行の輸入プレミアムSUVというと中古車でもかなり値が張るのが普通ですが、探せばかなりの「高コスパモデル」だって存在しているのです ▲高年式・低走行の輸入プレミアムSUVというと中古車でもかなり値が張るのが普通ですが、探せばかなりの「高コスパモデル」だって存在しているのです

「世の中のメインストリームに乗っかる」というプレジャー

若い時分というのは大なり小なり誰でも似たようなものだと思うが、筆者も少年~青年期にかけては「反逆者」であることを志向していた。パンクロックバンドを組んで「デストロイ!(破壊せよ!)」と歌い、盗みはしないがバイトして買ったバイクで走りだし、社会人となってからはWindowsではなくMacをひたすら愛用した。

しかし、これまた誰もが似たようなものかと思うが、年を重ねるにつれて角みたいなものがずいぶん取れてきた。というか、もっと言ってしまえば反逆どころか「長いものに巻かれる歓び」を知ってしまった。それゆえ、現在歌うオリジナル曲はパンクロックではなく周囲の受けが良いラブソングであり、バイクではなく快適な四輪車で移動し、そして「Windowsはソフトが豊富で安いからイイよね!」とか言いながらLet’s noteのキーをパチパチ叩いている。

ということは、そろそろ「輸入プレミアムSUV」にも乗るべきなのだろう。

駆けぬける歓びならぬ「長いものに巻かれる歓び」を知った筆者だが、なぜか車趣味に関してだけはヤンキー中学生のようなツッパリ精神が抜けず、「ヘッ、メジャーな車に乗るなんて堕落だぜ! 男は黙ってマイナー車だろ! デストロイ!」とばかりに、ひたすら修羅の道を歩んできた。

そういった修羅の道にもそれなり以上の価値はあったと思うが、しかしそろそろ「別に突っ張る必要もないかな……」とは思うわけだ。つまり、今現在主流であり、便利でカッコよく、走りもなかなかのもので、もしかしたら婦女子にモテる可能性もある「輸入プレミアムSUV」をごくフツーに選ぶという行為に身を任せたいのである。

▲主流派すぎるため敬遠するマニアもいるが、プレミアムSUVというのは普通に考えて「使い勝手良し・走り良し・イメージ良し」ということで、やはり選ばない手はない選択肢の一つ。写真はポルシェ マカン ▲主流派すぎるため敬遠するマニアもいるが、プレミアムSUVというのは普通に考えて「使い勝手良し・走り良し・イメージ良し」ということで、やはり選ばない手はない選択肢の一つ。写真はポルシェ マカン

走行2万km台までの物件でも妙にお手頃なボルボ XC60

だが問題は、「人気の輸入プレミアムSUVは高い」という身も蓋もない現実だ。

新車がベラボーに高いのは当然として、中古車を選ぶにしてもなかなかの価格なのである。ポルシェ カイエンやらBMW X5などの巨大系は普通の車庫には入りづらいため除外するとして、ほどほどサイズな輸入プレミアムSUVの中古車各種を選ぶにしても、それらは決して安くはない。

例えば現行BMW X3は、走行2万km台ぐらいまでの好条件車を探すとなると車両300万~350万円ぐらいになるのは必至。同クラスのアウディ Q5も好条件車は290万~380万円ぐらいになるのが一般的で、ニッポンの中流ド真ん中を自負する筆者としは少々手を出しづらいプライスだ。できれば100万円台、そうでなくても200万円台の前半ぐらいでなんとか手を打ちたいものだが、そんなうまい話はやっぱりないのか……と絶望していたとき、一筋の光が見えた。

ボルボ XC60である。

09年8月に登場し、今現在も販売中のボルボ XC60は「スタイリッシュなクーペスタイルとタフなクロスカントリーの性能を併せ持つ、ボルボ初のコンパクト・プレミアム・クロスオーバー」ってやつである。要するにBMW X3やアウディ Q5あたりと競合するミディアムサイズの輸入プレミアムSUVだ。

初期モデルのエンジンは3L 直6DOHC+ターボだったが、10年途中からはその3Lエンジンを改良するとともに、2L直噴ターボのダウンサイジングエンジンも追加。そして11年10月に2L直噴ターボのパワー&トルクと燃費性能をさらに改善し、13年8月にはフロントフェイスのデザインを変更。そして14年2月からはボルボの「Drive-E」戦略に基づき2L直噴直4ターボを刷新し、トランスミッションも8速ATに進化……というのが、XC60の大まかなモデルヒストリーだ。またこの他にも、先進安全装備を含む細かな改良は何度も実施されている。

で、そのボルボ XC60の09年~13年式T5系(2Lターボ)が今、「走行2万km台まで」というなかなかの好条件車でも車両200万~250万円ぐらいで狙えてしまうのである。それならば、ニッポンの中流ド真ん中を自負する筆者であってもイケなくはない。いよいよ「輸入プレミアムSUVに乗って素敵かつ快適に暮らす」という、まさに長いものに巻かれるプレジャーが炸裂する素晴らしい日々が始まるのだ!

▲こちらがボルボ XC60の前期型。全長4625×全幅1890×全高1715mmという、アウディ Q5とほぼ同じ寸法となる比較的コンパクトなプレミアムSUVだ ▲こちらがボルボ XC60の前期型。全長4625×全幅1890×全高1715mmという、アウディ Q5とほぼ同じ寸法となる比較的コンパクトなプレミアムSUVだ
▲電動テールゲートを開けると現れる荷室の容量は495L(床下収納を含む)。ゴルフバッグ4つを積んだ状態でトノカバーを閉じられるというのもXC60の特長の一つ ▲電動テールゲートを開けると現れる荷室の容量は495L(床下収納を含む)。ゴルフバッグ4つを積んだ状態でトノカバーを閉じられるというのもXC60の特長の一つ
▲基本的にはスポーティな造形でありながら、北欧製品ならではの温かみのようなものも感じられるXC60のキャビン。内装カラーのパターンはこれ以外にも様々な種類が存在している ▲基本的にはスポーティな造形でありながら、北欧製品ならではの温かみのようなものも感じられるXC60のキャビン。内装カラーのパターンはこれ以外にも様々な種類が存在している

デザインおよびパワートレインの少々の古さをどう評価するか?

とはいえ世の中は何だって安いものには必ず理由があるわけで、それはボルボ XC60の前期型も例外ではない。まず第一に、前述のとおり13年8月以降はフロントフェイスのデザインが変更されているため、人によっては前期型のフェイスを「……なんか古くさい」と感じる可能性はある。そのあたりをどう判断するか?

そしてこれまた前述のとおり、14年2月からは2Lターボエンジンとトランスミッションも刷新されたため、燃費性能も少々異なる。具体的には12年式あたりのT5がカタログ燃費9.7km/Lであるのに対し、14年2月以降は13.6km/L。実燃費ではなくカタログ燃費ではあるが、それでも約40%の違いをどうとらえるか?

さらに言えば、正式な情報ではないが、一部海外メディアの報道によれば2017年にXC60はフルモデルチェンジを受ける可能性大とのこと。そうすれば現在のモデルはいわゆる「旧型」「型遅れ」になってしまう。海外メディアの情報が正しいかどうかは不明だが、現行型が09年デビューであったことを考えれば、そろそろフルモデルチェンジが実施されると考えてほぼ間違いないはず。それに伴う「旧型になっちゃう問題」を、果たしてどう評価するか?

このあたりの問いに対する絶対の正解はなく、各人の価値観に基づき十人十色な解答を自ら出すしかない。そして筆者個人の解答は、「まぁ後期型も次期型も正直気にはなるけど、車両200万円ぐらいでこれだけシュッとした感じのプレミアム輸入SUVが買えちゃうなら、それだけですべてはおおむねOKなんじゃないかな?」というものだ。

あなたは、どうお考えだろうか?

▲ちなみにコレが14年2月からの後期型のデザイン。確かにグッと現代的にはなっているが、前期型だっていいのではないだろうか ▲ちなみにコレが14年2月からの後期型のデザイン。確かにグッと現代的にはなっているが、前期型だっていいのではないだろうか
text/伊達軍曹
photo/ボルボ、ポルシェ