▲「いつかはポルシェ 911」と思っているうちに、人は意外と早く年を取り、乗らないまま自動車人生を終える。林先生じゃないけど「いつかは」じゃなくて「今!」なんですよ、何ごとも ▲「いつかはポルシェ 911」と思っているうちに、人は意外と早く年を取り、乗らないまま自動車人生を終える。林先生じゃないけど「いつかは」じゃなくて「今!」なんですよ、何ごとも

限りある生と健康を享受できている今のうちに、ぜひ

私事で大変恐縮ではあるが、過日休暇を取って日本最西端の地・与那国島に行った際、同地の海辺コンクリート階段にて転倒し後頭部を強打、いわゆる脳震盪を起こしてしまった。島内唯一の診療所で診てもらったところ幸い脳内に異常はなく、その後安静につとめたことで現在は快癒している。

ただ、たまたま軽症で済んだ筆者ではあったが、打ちどころによっては頚椎を折るなどして「与那国島にて客死」という人生の結末を迎えた可能性もなくはない。たまたま生かされたことに感謝すると同時に、「人の一生というのは思いのほか短く、そしてあっけないものなのだなぁ」と昏倒直後、与那国島の真っ青な空を(必然的に)見上げながらぼんやりと思った筆者であった。

▲与那国島で脳震盪を起こした直後の筆者。しばらく写真の場所で休んでみたが、頭のふらつきが一向に治まらないため、友人が運転する車にて島唯一の診療所に運んでもらった。……死ぬかと思いました ▲与那国島で脳震盪を起こした直後の筆者。しばらく写真の場所で休んでみたが、頭のふらつきが一向に治まらないため、友人が運転する車にて島唯一の診療所に運んでもらった。……死ぬかと思いました

そう、かように人の一生ははかない。例えば「与那国島で死にかけましたが、おかげさまで大丈夫でした」などとのんきに書いている筆者がその直後、コンビニに牛乳を買いに行く途中でダンプにひかれてあっけなく死亡する可能性もゼロではなく、その他、いきなり見つかった重大疾病にていきなり命を落とす可能性だってあるだろう。とにかく、人は儚いのだ。

であるならば、月並みなフレーズで恐縮だが、とにかく人は「今を精いっぱい生きる」ほかない。「明日からやろう」「来年あたりには始めてみようかな」という気持ちもわかるが、しかしその「明日」や「来年」が来る保証などどこにもないのだ。ならば、わたしたちが今するべきことは「いつどうなったとしても悔いが残らないよう生きる」ことしかない。特に筆者を含む中年にカテゴライズされる人間は、残り時間がそう多いわけでもない。無駄に煽るつもりはないが、何かと急ぐべきではあるだろう。

で、悔いといえば「ポルシェ 911に乗らずして終える自動車人生」だ。

▲自動車史に燦然と輝く稀代の名車、ポルシェ 911。左が初代で、右が最新世代 ▲自動車史に燦然と輝く稀代の名車、ポルシェ 911。左が初代で、右が最新世代

いや、乗らずに終えると後悔するのはポルシェ 911だけではないだろうが、しかし自動車愛好家(特に輸入車を愛好する者ら)のうち多くは、それを一度は所有してみたいと考えているはずであり、そしてそれは本当にそのとおりなのだ。つまり、嫌いな人に無理して買えとは言わないが、もしも好いているのであれば、一度は所有した方がいいのだ、ポルシェ 911という車は。

筆者は幸いにして過去、タイプ964のカレラ2というモデルにしばらくの間乗っていたため「やるべきことはやった」というそれなりの自負はある。が、もしもそのカレラ2経験がなかったとしたら死んでも死にきれず、それでも死んでしまったとしたら、どこかのポルシェ専門店に化けて出てしまいそうな気もする。いや、知りませんが。

さて、限りある生と健康を享受できている期間中にぜひ乗らなければならないポルシェ 911という車。しかしひと口にポルシェ 911と言っても、その生産期間は50年以上にわたり、いわゆる「世代」の数は7にものぼる。その中からどれを選ぶべきかというのは、なかなか難しい問題だ。

筆者が考える本当の結論は「あなたが好きで好きでたまらない、欲しくて欲しくて夢にまで見てしまうものであれば何でもいい」ということになるが、それではあまりにも投げっぱなしな感もあるため、一応のオススメというか考え方のようなものを記しておきたい。

金に糸目を付ける必要のない富裕層の皆さんはさておき、一般的なお財布フィールで物事を考えるなら、選ぶべきは「500万~600万円台あたりのタイプ997カレラ」か、「同じく500万~600万円台あたりのタイプ996ターボ」であると個人的には思う。

▲型式名「タイプ997」こと旧型ポルシェ 911。販売期間は04年8月から11年10月で、写真は現在おおむね600万円前後でも十分探すことができる08年6月までの前期型 ▲型式名「タイプ997」こと旧型ポルシェ 911。販売期間は04年8月から11年10月で、写真は現在おおむね600万円前後でも十分探すことができる08年6月までの前期型
▲こちらは「タイプ996」こと旧々型ポルシェ 911の「ターボ」。最高出力420psの水冷水平対向6気筒エンジンをリアに搭載し、四輪を駆動する超ハイパーフォーマンスモデルだった ▲こちらは「タイプ996」こと旧々型ポルシェ 911の「ターボ」。最高出力420psの水冷水平対向6気筒エンジンをリアに搭載し、四輪を駆動する超ハイパーフォーマンスモデルだった

前者の997カレラは最新世代ではなく「1個前の世代」ではあるものの、それなりに新しい世代としてのポルシェ 911の魅力を、比較的手頃な予算で味わうことができる選択だ(まぁ手頃っつっても600万円級なんですが)。後者の996ターボは2世代前の911であるため若干の古さは感じるわけだが、しかしながら「911ターボ」という、性能的にも記号的にも心情的にも圧倒的な何かを、同じく比較的手頃な予算で味わうことができる選択。この2つが、筆者が現時点で考える「ちょうどいい落とし所」だ。

本当ならタイプ964あるいは993といった空冷モデルを推奨したいのだが、そちらの相場は今アホほど高騰してしまっている。高騰を承知で突撃するのも一つの男道であり、また高いカネを払って突撃するだけの価値は間違いなくある車だと確信しているが、しかしさすがに、数年前まで350万円ぐらいで買えた車に700万円とか800万円出すのはいささか業腹である。まぁこのあたりの感じ方は人それぞれゆえ、もしも業腹に感じないのであれば、そして年式ゆえそれなりに必要となるメンテナンスフィーを負担する覚悟があるのであれば、あえて空冷911に突撃することを止めるものではない。

▲写真は89年から93年まで販売された「タイプ964」。中古車相場は大きく跳ね上がっており、走行距離少なめのMT車はほとんどが「価格応談」で、実勢価格は800万円オーバーになることもしばしば ▲写真は89年から93年まで販売された「タイプ964」。中古車相場は大きく跳ね上がっており、走行距離少なめのMT車はほとんどが「価格応談」で、実勢価格は800万円オーバーになることもしばしば

いずれにせよ、人生は短い。やりたいことを、やれるうちにやるべきなのだ。「命短し恋せよ乙女」ではないが、「命短し(911に)乗れよ中年」とは歌いたい筆者なのである。ということで今回のオススメはずばり「500万~600万円台のポルシェ 911・タイプ997または996ターボ」だ。

  • Search the selection!
  • Car:ポルシェ 911
  • Conditions:修復歴なし&走行5万km以内&総額700万円未満(※総額700万円を超えるプランが用意されている場合があります)
text/伊達軍曹