▲メルセデス・ベンツ Aクラス。VW ゴルフをはじめ強豪ひしめくCセグメントに、同社のプレミアム感で真っ向勝負を挑むモデル。追突のリスクを低減する警報システムやドライバーの疲労を検知して警告するシステムなどを標準装備。1.6Lターボと2Lターボがあり、いずれも7速デュアルクラッチトランスミッションが組み合わされる ▲メルセデス・ベンツ Aクラス。VW ゴルフをはじめ強豪ひしめくCセグメントに、同社のプレミアム感で真っ向勝負を挑むモデル。追突のリスクを低減する警報システムやドライバーの疲労を検知して警告するシステムなどを標準装備。1.6Lターボと2Lターボがあり、いずれも7速デュアルクラッチトランスミッションが組み合わされる

メルセデス・ベンツの味は中古車の方が濃厚だ

Eクラスの祖であるW123が、全長4700mmを超えるにも関わらずコンパクトクラスと呼ばれていた頃のメルセデス・ベンツを知る私からすれば、300万円を切るプライスから同ブランドの新車が手に入るなんて、今は夢のような時代です。

VW ゴルフと同じくらいの大きさのAクラスは、ゴルフよりやや高いものの、それでも298万円から購入できます。日本の道路事情には、もちろんコンパクトクラスと呼ばれたW123より小さくてピッタリだし、とはいえメルセデス・ベンツらしい質感や性能、さらに品格を備えています。見た目も、若々しくてアグレッシブな今の同ブランドのイメージを見事に具現化しているといえるでしょう。

しかし、予算が300万円もあれば中古車ならもっと選択肢が広がるのも、れっきとした事実です。というか、選ぶのが大変になるほどです。というわけで、300万円でAクラスを検討している人を惑わすような、中古車のご提案をしてみようかと。でも、選択肢を広くしすぎるとキリがなくなるので、今回はAクラスと同じ、メルセデス・ベンツでまとめてみたいと思います。

まずは旧型CLS(2005年~2011年)。Eクラスをベースに作られた、ラグジュアリーなスペシャルクーペです。この頃からセダンがクーペ風になってきたのですが、このCLSは4ドアなのに、同社の他のセダンのようにボンネット上ではなく、クーペ同様のフロンドグリル内にスリーポインテッド・スターを配置するなど、Eクラスセダンとはキャラクターが明確に分けられています。

もちろん装備は、さすがはメルセデス・ベンツな充実ぶり。ミッションも7速ATですから、今乗っても十分新しさが感じられます。新車時価格は851万円~でしたが、中古車なら300万円以下で十分に狙えます。
 

▲メルセデス・ベンツ CLSクラス。横から見るとスッと円弧を描くキャラクターラインが新鮮だ。乗車定員は4名。後席はセパレート。そのキャラクターに合わせて、Eクラスセダンよりスポーティな足回りを備える。インテリアには本革とウッドが惜しみなく使用されるなどスペシャリティ感いっぱいだ ▲メルセデス・ベンツ CLSクラス。横から見るとスッと円弧を描くキャラクターラインが新鮮だ。乗車定員は4名。後席はセパレート。そのキャラクターに合わせて、Eクラスセダンよりスポーティな足回りを備える。インテリアには本革とウッドが惜しみなく使用されるなどスペシャリティ感いっぱいだ

続いてオススメしたいのが旧型Eクラス(2002年~2009年)のクリーンディーゼル車です。グレードでいうとE320 CDI アバンギャルド ディーゼルターボ。今でこそマツダの頑張りによって、ディーゼル車が脚光を浴びていますが、2006年から登場したこの車こそ、石原都政の「ディーゼル悪者論」をいち早く論破したモデルです。

排気ガスがキレイなのはもちろん、燃費も良いし、ガラガラなんて聞こえません。さらにトルクが太いから軽く踏むだけでスッと加速してくれるため高速道路のクルージングが楽チンだし、同社の中核をなすEクラスゆえ装備は充実……と、いいことずくめ。原稿執筆時点(2015年11月5日現在)では300万円以下で2007年式/走行距離2.9万kmなんてものも見つかりましたが、最近はディーゼル車人気の高まりもあってすぐ売れてしまうので、見つけたら即買いが良いかと。
 

▲メルセデス・ベンツ E320 CDI アバンギャルド ディーゼルターボ。そもそもディーゼルエンジンは欧州の方が本場。それゆえ日本車より先にこの車が日本の新基準をクリアしたのは、当たり前と言えば当たり前とも ▲メルセデス・ベンツ E320 CDI アバンギャルド ディーゼルターボ。そもそもディーゼルエンジンは欧州の方が本場。それゆえ日本車より先にこの車が日本の新基準をクリアしたのは、当たり前と言えば当たり前とも

最後は190クラス(1989年~1993年)です。同社初となる5ナンバーサイズに収まるコンパクトなボディですが「Sクラスを小さく作る」という思想から生まれたゆえ、性能も品格も当時のSクラス。それはドアミラーひとつとってもわかります。

例えば運転席側のドアミラーの調整は手動ですが、これは「安い車だから」ではなく、この方が当時は微調整しやすかったがゆえ。またフロントワイパーはセンターに1本しかありませんが、独特な動きでほとんどのエリアの水滴を拭き取ります。ちなみにこの頃の同社のスローガンは「最善か、無か」。つまり「ちょっとだけ頑張りました」は「無」と同じであり、「最善」しか許されないんです。
 

▲メルセデス・ベンツ 190クラス。バブル時代は「小ベンツ」などと揶揄されたが、今から考えるとそれはやっかみ? 当時から目の肥えた人はきちんと評価していたし、その後継にあたるCクラスは「190と比べて品質が落ちた」とか、さんざんの言われよう。それくらい、良くできた車だ ▲メルセデス・ベンツ 190クラス。バブル時代は「小ベンツ」などと揶揄されたが、今から考えるとそれはやっかみ? 当時から目の肥えた人はきちんと評価していたし、その後継にあたるCクラスは「190と比べて品質が落ちた」とか、さんざんの言われよう。それくらい、良くできた車だ

……とまぁ、昔の車にはメルセデス・ベンツの歴史に触れる楽しさもあります。確かに新車のAクラスでもメルセデス・ベンツを味わうことができますが、今回取り上げた3台はAクラスよりクラスが上だったり、ビンテージだったりする分、その味がさらに濃厚です。同じお金を出すのなら、私なら濃い味を選ぶのですが、みなさんはいかがでしょうか。
 

text/ぴえいる