▲使い勝手やら居住性やら、ということを抜きに、ただただ美しいクーペを406ベースに作った雰囲気がイイんです ▲使い勝手やら居住性やら、ということを抜きに、ただただ美しいクーペを406ベースに作った雰囲気がイイんです

ただただ美しさを追求したようなカタチ

原稿執筆時点でカーセンサーに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2015年11月4日に発見したのは「プジョー 406クーペ」です。絶版となってから10年が経過し、406クーペの流通台数自体、少なくなりつつあります。中でもサプライズな発見はMT車がカーセンサーに掲載されていることです。

日本正規輸入モデルは3L V6エンジンに4速ATのみの設定でしたが、本国には2Lエンジン(後に2.2Lまで排気量を拡大)や5速MTの設定もありました。当該中古車の初代オーナーは、わざわざMT車の406クーペを並行輸入したのでしょう。この頃の406クーペのATはフリクションロスの多さを感じさせるもので、MTの方がキビキビしていてエンスー(自動車好き)には人気が高かったのも事実です。

406クーペはセダンやブレーク同様、ピニンファリーナがデザインを手がけたものです。リアフェンダー下のサイドボディやダッシュボードの化粧板には、ピニンファリーナのエンブレムが採用されています。しかも406クーペはデザインだけでなく、生産もピニンファリーナが行いました。

基本デザインは406セダンやブレークなどから譲り受けていますが、406クーペのエクステリアはすべてが専用設計です。コンパクトなボディながらロングノーズ、大人4名が快適に座れるインテリアと、同時期のフェラーリ456に相通じるエレガントさが漂っています。ダッシュボードは406セダンやブレークと同じですが、インテリアは格段に“艶っぽく”仕上がっています。フロントシートはプジョーとレカロの共同開発で、座面が広く、大きな車に乗っているように“物理的”に感じさせてくれます。

▲ロングノーズ、大人4名に十分なキャビンスペース、ショートデッキなトランク……。どれをとっても美しいデザインです ▲ロングノーズ、大人4名に十分なキャビンスペース、ショートデッキなトランク……。どれをとっても美しいデザインです
▲インパネ周りは406セダンやブレークと同じですが、スポーティかつシックな雰囲気でクーペが最もしっくりきます ▲インパネ周りは406セダンやブレークと同じですが、スポーティかつシックな雰囲気でクーペが最もしっくりきます
▲トランクは大人4名分と考えると小さいかもしれませんが、2名乗車が前提なら大丈夫です ▲トランクは大人4名分と考えると小さいかもしれませんが、2名乗車が前提なら大丈夫です

406クーペは流通台数も少なく、予想外に中古車相場は高止まりしています。407セダンとほぼ同等の相場を維持しているので、割安感には乏しいと言わざるを得ません。でも、概ね100万円ほどでこれほど美しいクーペを手に入れられると思えば、納得できるでしょう。

当該中古車、走行距離は13.1万kmと多めですが、新車時登録から9年が経過していることを鑑みれば、驚くほどではありません。現行執筆時点で唯一のMT車でありながら走行距離が多めだからか、さほど“プレミアム”がつけられている雰囲気もありません。

日本未導入の2.2L直4気筒エンジンはMTとのマッチングがよく、シャンシャン回りますし、実は長距離クルージングにもうってつけ。すでにMTの存在自体が貴重となりつつある昨今ですが、MT車は「クラッチを踏む」「シフトチェンジをする」という“操る”魅力が満点です。隣に座った人からは、MTを操る姿にさぞ感心されることでしょう(笑)。そして、現行プジョー車の押し出し感とは真逆にある、控えめの中の優雅さが406クーペ最大の魅力だと思います。

■本体価格(税込):78.0万円 ■支払総額(税込):95万円
■走行距離:13.1万km ■年式:2006(H18)
■車検:2017(H29)年5月 ■整備:付(12ヵ月) ■保証:無
■地域:香川

text/古賀貴司(自動車王国)