▲おしゃれで、そして単におしゃれなだけではない「芯」があり、なおかつ総額100万円台前半というお手頃予算で狙える輸入車……というワガママなニーズに応える車種はこれしかない? ▲おしゃれで、そして単におしゃれなだけではない「芯」があり、なおかつ総額100万円台前半というお手頃予算で狙える輸入車……というワガママなニーズに応える車種はこれしかない?

手頃な前期型ベースグレードが実は一番ステキかも

輸入中古車評論家を自称するわたしだが、自慢じゃないがカネはない。いや日々の食事に困窮するほど貧乏しているわけではないが、伸びてきた髪を切る際は「ホットペッパービューティー」の割引クーポンをフル活用して生活費の節減に努めながら、ニッポンの中流ど真ん中を生きている。

だが、髪を切るときはセコくクーポンを使いまくっている筆者であっても、いちおう「おしゃれでありたい」とは思っている。髪型だけではなく、車だってそうだ。できれば「あいつはなかなかしゃれた車に乗ってるじゃないか」と思われたい。ホメられたい。そしていちおう真摯な車好きでもあるため、単におしゃれなだけでなく「しっかり走る車」に乗りたいとも常々思っている。

しかしそういった車像を別の表現に置き換えるとしたら、それって要するに「才色兼備な車」ということであり、才色兼備なモノというのは車にしろ人間にしろ、決して安く手に入るものではない。それ相応のお金を積まない限り、こちらを振り向いてはくれないのだ。例えば五郎丸選手に「年俸300万円でぜひウチのチームに移籍しないか?」なんてオファーを出すわけにはいかないのである。

となると、年俸300万円どころかせいぜい100万円台半ばぐらいまでの車両購入予算しか用意できない(したくない)中流ど真ん中の筆者としては、なかなかキツい。「オレは、おしゃれでもなくしっかり走るわけでもない車に、これからもずっと乗っていくしかないのか? そういう宿命なのか?」と絶望しながら、アニメ『タイガーマスク』のエンディングテーマだった『みなし児のバラード』を口ずさみたくなる。

だがそんな厭世的な気分だった筆者に、1つの天啓がくだった。「そうだ、シトロエン DS3があるじゃないか……!」と。

▲日本市場へは2010年3月に登場したシトロエンDS3。「DS」シリーズの中ではエントリーモデルにあたる、全長3965mmのプレミアムコンパクトだ ▲日本市場へは2010年3月に登場したシトロエンDS3。「DS」シリーズの中ではエントリーモデルにあたる、全長3965mmのプレミアムコンパクトだ
▲往年のシトロエンほど奇想天外なわけではないが、それでも往時のテイストをどことなく感じる内装 ▲往年のシトロエンほど奇想天外なわけではないが、それでも往時のテイストをどことなく感じる内装

今さら説明するまでもないだろうが、シトロエン DS3とはフランスのおしゃれブランドであるシトロエンが製造するプレミアムコンパクトカーで、日本では2010年3月から販売された。初期モデルはAT仕様が1.6L自然吸気エンジンで、6MTの「スポーツシック」が1.6Lの直噴ターボエンジン。2014年の初頭からはベーシックグレード「シック」のエンジンが前述の1.6Lから1.2Lの直3DOHCに変更され、そのATは2ペダルMTの「ETG5」に変更されている。

そもそも「DSシリーズ」というのはシトロエンの上級ラインだったが、最近では「DSというひとつのブランド」として独立し、過日の東京モーターショー2015でもシトロエンとは別のブースを出展した。つまりDSとは、ただでさえおしゃれで、そして大変よく走る車でもあるシトロエンの、さらなる上級おしゃれブランドである……と認識しておけばそう大きな間違いはない。

そのDS3が、より具体的には1.2Lエンジンになる前の初期世代シックが、今かなり安くなっている。走行距離4万km以下の好条件物件であっても、支払総額で見てもおおむね120万円から160万円ほど。……これなら筆者でも十分狙える。となれば『みなし児のバラード』を口ずさんでいじけてる場合ではない、買わねばならない。

しかしここで問題となるのが「前期型のシックで妥協しちゃっていいの? 後期型シックとか、あるいは直噴ターボ+6MTのスポーツシックの方がいいんじゃないの?」という悪魔のささやきだ。

▲2014年2月に「シック」のエンジンが1.2Lの直列3気筒に変更されると同時に、トランスミッションもそれまでのトルコン式ATから2ペダルMTの「ETG5」に変更された ▲2014年2月に「シック」のエンジンが1.2Lの直列3気筒に変更されると同時に、トランスミッションもそれまでのトルコン式ATから2ペダルMTの「ETG5」に変更された
▲こちらは最高出力156psの1.6L直噴ターボ+6MTとなるスポーツシック ▲こちらは最高出力156psの1.6L直噴ターボ+6MTとなるスポーツシック

そのささやきにも一理なくはないと考えるが、しかし筆者は悪魔に対してこう答えるだろう。

「1.2L+ETG5が悪いとは思わないが、わたしの個人的な感覚ではフツーの1.6L+フツーのトルコンATである前期型シックが、DS3という車の魅力を最もストレートに表現できていると思う。前期シックってプレーンで、とってもステキな車なのだ。そして直噴ターボ+6MTのスポーツシックについては、これまた超個人的な感覚ではあるが、実は賛同者もけっこう多い意見を述べておく。……『必要ない!』と。 いやもちろん“わたしにとっては”だが、スポーツシックに試乗した限りにおいては、大のMT車好きであるわたしが『とってもいい車だけど、ATのシックでも十分かな。いやむしろATのほうがイイかもしれない』と思ったのだ」

個人的な感覚を押し付けるつもりは毛頭ないため、シトロエン DS3が気になる人は、可能であればスポーツシックにも後期1.2L仕様にも試乗してみることを強くオススメしたい。しかし、それでもけっこうな自信はある。「いろいろ試乗してみたけど、結局はフツーの1.6Lがいちばんしっくりくるね」と、あなたが言う可能性について……。

▲写真は後期型限定車の「DS3 Faubourg Addict」。さすがにコレは100万円台前半では買えないが、このおしゃれ過ぎる世界観に近いものは、前期型シックであっても醸しだすことはできる ▲写真は後期型限定車の「DS3 Faubourg Addict」。さすがにコレは100万円台前半では買えないが、このおしゃれ過ぎる世界観に近いものは、前期型シックであっても醸しだすことはできる
text/伊達軍曹