▲筆者が過日試乗したBMW M6カブリオレ。オプション込みで2000万円超だけに大変素晴らしかったが…… ▲筆者が過日試乗したBMW M6カブリオレ。オプション込みで2000万円超だけに大変素晴らしかったが……

人は「平常心を保てる金額」の中でしか楽しむことはできない

株や為替などのデイトレードを行っている者がよく言うのが、「少ない賭け金だとうまくいくのに、額を増やすと途端にうまくいかなくなる」ということだ。例えばの話、ほぼ確実に100円儲かる何らかの手法を発見したとして、「……ってことは枚数(賭け金)を100倍にして同じことやれば1万円、レバレッジかけて1000倍にすれば10万円。……それを複利で繰り返せばオレ、あっという間に億万長者じゃん!」と多くの者が思うわけだが、そうは問屋がおろさないわけである。

張る金額が上がると人間どうしても平常心が保てなくなり、余計なことをしてうまくいかなくなったり、それだけならまだしも、時には身の破滅を招いたりする。結局のところ平常心を保っていられる金額の範囲内でトレードするのが肝要であり、その額がそのまま、その者の器(うつわ)である……ということだ。自分の器を極度に超えることにトライしても、世の中ロクなことはないのである。

これとほぼ同様のことが自家用車選びにおいても言える。

過日、筆者はBMW M6カブリオレで都内各所を徘徊していた。最高出力560psの超絶研ぎ澄まされた4.4L V8DOHCを搭載するスーパーマシンであり、お値段の方もスーパーな1827万円。諸々のオプション装備を合わせれば2000万円オーバーとなる超絶セレブ系だ。当然わたくしの車ではなく借り物である。しかし借り物とはいえ超絶スーパーセレブ系マシンは、自動車愛好家であるわたくしに歓びを与えたか?

あまり与えなかった。

いや、もちろんM6カブリオレは素晴らしい車である。燃費以外はすべてにおいて「無敵!」と言って構わないだろう。よくわからないが、これに乗っていればわたくしのような者でも婦女子にモテる可能性があるとすら思った。

しかし、運転していてまったく嬉しくないのだ。

▲筆者がiPhoneのカメラで適当に撮っただけで絵になってしまうM6の素敵なエンジンルームだが ▲筆者がiPhoneのカメラで適当に撮っただけで絵になってしまうM6の素敵なエンジンルームだが

せっかく業務上の役得としてスーパーなマシンに乗れているというのに、運転中に考えたことといえば「車高低いから段差でキズ付けそうだなぁ」「そうなったら高くつくだろうなぁ」「いろいろと機能が凄すぎて使いこなせないなぁ」「正直、似合ってねえなぁオレ……」というようなことばかりだ。あまつさえ、ガソリン代はクライアント持ちだというのに「燃料計の減りが速いなぁ……ガス代いくらかなぁ」とまで心配してしまった。根っからの貧乏性である。

要するにわたくしの「器」がBMW M6カブリオレという大物とまったく釣り合っておらず、そのため平常心を保つことができないのだ。責任の所在はM6カブリオレではなく筆者のしょっぱい器にある。しょっぱいわたくしにはせいぜい200万円とか300万円、頑張っても400万円ぐらいの車が、決して卑下するわけではなくお似合いなのだ。ジャストフィットなのである。

そして同時に思うのが、「これってたいていの人に当てはまる話なのでは?」ということだ。

もちろん人としての器やサイフの中身は人それぞれだが、少なくとも国税庁の「平成24年 民間給与実態統計調査結果」によれば、ここ日本で年収2000万円以上の給与所得者は約0.6%にすぎない。ということは「たいていの人のおサイフ状態は筆者と似たようなもの」とざっくり言うことはできるはずだ。となれば、「たいての人が買うべき車……というか平常心で楽しめる車は200万円とか300万円、せいぜい400万円ぐらいだ!」とここで断定してもあながち間違いではないと思うのだが、どうだろうか。

で、もしも筆者が、筆者としての妥当な予算(200万円台ぐらいか?)でM6カブリオレ的な「色っぽくてスポーティな車」を買うとしたら……様々あるが、有力候補はプジョー RCZだ。

▲10年7月に登場したプジョー RCZ。同社の「308」をベースとする流麗なデザインの2+2クーペだ ▲10年7月に登場したプジョー RCZ。同社の「308」をベースとする流麗なデザインの2+2クーペだ
▲インテリアもなかなか色っぽい。写真はインテグラルレザーパッケージ ▲インテリアもなかなか色っぽい。写真はインテグラルレザーパッケージ

新車価格は基本的に400万円オーバーだが、中古車ならば今や200万円台半ばから狙うことができる。しかしその流麗なアピアランスは到底200万円台の車には見えないどころか、新車時の400万円+αすら軽く超えていると個人的には思える。

RCZは、詳しくない人が見れば「600万円ぐらいのステキなガイシャ!」には確実に見える車なのだ。そして走りも実際ステキである。もちろんあまりにもスーパーなM6とは比べるべくもないが、RCZの走りもある意味十分以上にステキだ。乗り味は基本的にタイトなのだが、どこかフランス車らしいソフトさも備えている。いい車だ。

▲搭載エンジンは1.6L直噴ターボ。デザインとしては「ダブルバブルルーフ」も大きな特徴となる ▲搭載エンジンは1.6L直噴ターボ。デザインとしては「ダブルバブルルーフ」も大きな特徴となる

プジョー RCZと似たジャンルの車といえる現行アウディ TTもかなりステキだが、希少性という意味で、RCZの方が若干ステージが高いのではないかと個人的には思っている。

ということで、今回のわたくしからのオススメはずばり「300万円以下のプジョー RCZ」だ。

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  • Car:プジョー RCZ
  • Conditions:修復歴なし&総額300万円以下(※総額300万円を超えるプランが用意されている場合があります)
text/伊達軍曹