▲リアエンジンリアドライブのスポーツカーとして1984年から1991年まで製造。デザインは外装をウーリエ、内装をマルチェロ・ガンディーニが担当し、エンジンは2.5Lターボが与えられた ▲リアエンジンリアドライブのスポーツカーとして1984年から1991年まで製造。デザインは外装をウーリエ、内装をマルチェロ・ガンディーニが担当し、エンジンは2.5Lターボが与えられた

希少で状態の良いモデルは好きな人に乗ってほしいね

ポジションとしてはスポーツカーであったA310の後継にあたり、本国では「アルピーヌGTA」の名前で発売されたが、日本では商標の関係でこの名前がつけられていた。モデル末期の1990年にはフロントマスクのデザインが変更となり、また2849ccエンジンを積んだ「V6 GT」などの別バージョンも登場している。

松本 今回はかなり珍しいモデルを見に行こうと思ってるんですよ。戦後のフランスのスポーツカーなんですけどね。
徳大寺 フランスは戦前まで弩級の高級車を作っているメーカーがいくつかあってさ、数多くのスポーツカーが作られていたんだ。ブガッティだってそうだし、ドライエ、ドラージュなどは今ではミュージアム級だからね。
松本 フランスにはそれだけの自動車の歴史と文化があるということですね。
徳大寺 そう。だから本気を出せば、世界を凌駕するスポーツカーや高級車を作れると思うんだ。現時点においては歴史あるフランスのスポーツカーというのは限られてくるな。
松本 はい。もうお分かりだと思いますが、“アルピーヌ”です。その中でもV型エンジン搭載のターボモデルなんですよ。
徳大寺 ラリーで活躍したA110かい?
松本 今回はアルピーヌV6ターボです。今後は現存率が低くなり、希少性も増すでしょうね。
徳大寺 A110は珍重されるからパーツなんかも出てくるし、存命のために工夫するエンスージァストも多いんだけどな。でも、アルピーヌV6ターボは知らない人が多いから重宝されないんだ。ただ、これからは分からないぞ。だってルノーがアルピーヌを復活してスポーツカーを作る話があるしな。車の価値は人々に知られて初めて上がると思うんだ。そうなったら気楽に買える値段じゃなくなるかもしれない。
松本 おっしゃる通りですね。ところで巨匠はルノーお好きですよね? RSシリーズはトゥインゴRSを除いていまだにアルピーヌの発祥の地、フランス・ディエップで作っていると聞いたことがあります。
徳大寺 何度か行ったことがあるよ。確か小さな港町だったような記憶がある。そのアルピーヌの生みの親であるジャン・レデーレさんにも会ったな。今日見に行くV6ターボはA110の後継車として作られたA310の発展型だろ?
松本 そうなんですよ。A310は1971年から造られていますが、その当時はA110が国際ラリーで大活躍していて、やはりリアエンジンのポルシェ911もモータースポーツで活躍して絶大な人気があったわけですよね。A310は、その911のモータースポーツと2+2のGTというバリューを狙ったといわれていますね。
徳大寺 あの当時のアルピーヌは凄かったからね。A106というモデルはミッレミリアでクラス優勝してるしな。ポルシェを追随するポジションに十分あったんだよ。
松本 A110ベルリネッタは完全な2シーターですが、A310から2+2ですからね。
徳大寺 アルピーヌはデザイン面でもとてもチャレンジしているよ。今回のV6ターボもそうだけど、A310だってかなり際立ったデザインだからね。最新の空力をふんだんに取り入れて。ちょっと先端を行きすぎていたね(笑)。
松本 ラリーで培われたバックボーンフレームとFRPボディというレーシングカー顔負けの方法で1995年まで作るわけですからね。エンジンも初めは1600ccの4気筒だったのが、今回のV6は2.5Lにターボですよ。
徳大寺 店はもうすぐだろう? 今日のお店は通ってるからな、すぐ分かるよ(笑)。おぉ、あのアルピーヌブルーのだな。今見ると大きくなくてちょうどいいよ。それでいて何となく凄みもあるしな。デザインが良いんだよ。この後のモデルは確かリトラクタブルじゃなかったっけ? このほうが断然いいよ!
松本 それにしてもキレイですね~。アルピーヌはFRPボディなのでコンディションの良いのがなかなかないそうですが。これはすごく状態が良い。それと内装がいいんですよ。内装はガンディーニがデザインしたようですよ。
徳大寺 ガンディーニがデザインしただけで価値がある。今じゃ考えられないよ、これぐらいのスポーツカーでデザイナーが巨匠なんて。それだけでも嬉しいよな。しかし、よくアルピーヌの内装をこのコンディションで綺麗に維持できたね。古いフランス車は内装の維持が難しいんだよ。
松本 エンジンも調子良さそうですね。
徳大寺 中古車は前のオーナーが大事なんだ。定期的に整備を行ってきたんだろうな。この車は絶滅危惧種になる可能性もあるから、これだけのコンディションの車は本当に価値の分かる、好きな人に乗ってもらいたいよ。

▲アルピーヌ リア
▲アルピーヌ インパネ
▲アルピーヌ エンジン
▲アルピーヌ シート
text/松本英雄
photo/岡村昌宏