ポルシェボクスター | 伊達セレクション
今年6月に登場した新型ポルシェボクスターを新車で買うとなると、オプション装備をいろいろ付けていくと結局1000万円近くになってしまうことも。それはそれで悪くないのだろうが、先代ボクスター(写真上)のPDKが採用された末期モデルを、総額600万円程度で狙うのも十分ステキだ。無論、総合性能は新型のほうが優れているが、見方によっては「微々たる差」と言うこともできる。また、写真下の先代911(タイプ997)末期PDKモデルと現行991の関係でも、ほぼ同じことが言える。
ポルシェ911 | 伊達セレクション
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「自動車無党派層」という最大勢力

金融用語に「GDPギャップ(需給ギャップ)」というものがある。経済の供給力と現実の需要との間の乖離のことだ。この用語と直接の関係があるわけではないが、輸入中古車を取りまく世界においても、ある種の「需給ギャップ」が存在している。それは「最新モデル」の需要と供給における意識面でのギャップだ。以下、解説しよう。

いわゆる「車好き」は最新モデルに興味津々である。新採用のメカニズムはどんな走りを味わわせてくれるのか? 想像するだけで夜も眠れないかもしれない。そこまでいかずとも、とにかく最新モデルが欲しくてたまらないのが車好きだ。また保守本流の車好きとはややタイプが異なる「ヒルズ族」みたいな人も、また違った意味で最新モデルを好み、欲するだろう。

その結果、マーケットでの「先代末期モデル」は、新型モデルが登場した途端、「型遅れになっちゃったから安くしないと売れないよね、たはは」とばかりに相場が激落ちする。

だがしかし、第1の勢力である「車好き」と第2勢力である「ヒルズ族(に代表される人種)」のほかに、「第3の勢力」もあることを忘れてはいけない。いや、むしろ、この第3勢力こそが最大多数派、サイレントマジョリティーだろう。

それは「自動車無党派層」である。

「ご近所的軍事プレゼンス」は先代末期も新車も変わらない

車に興味がないわけではないが決して詳しくはない。「やっぱビーエムとかアウディとか、いいよね」と漠然と思ってはいるが、思うだけで買いはしない…それが、日本の最大派閥である「自動車無党派層」だ。正確な統計は手元にないのであくまで「軍曹調べ」だが、日本の成人人口の75%は自動車無党派層に属している…と思われる。

そんな無党派層も、さすがにずいぶん古い世代のBMW3シリーズなどは「なんかボロいね、このビーエム」などと直感的に理解する。しかし「先代末期」と「現行初期」の区別などほとんどつかないのが、この層の特徴だ。つまり、型遅れになったことで相場がガタ落ちした先代末期モデルでも、「ご近所に対する軍事プレゼンス」は、現行初期を新車で買った場合とほとんど変わらないのだ。この意識ギャップを利用して先代末期の上モノを安く狙うのは、輸入車の賢い購入法のひとつである。

もちろんこういった考え方は、まんが道ならぬ「くるま道(くるまみち)」的にいうと邪道もはなはだしい。本来的には「自動車の進化発展と心中する」あるいは「他人が何と言おうがとにかく欲しい車を買う」のが自動車愛好家の正道であることは言うまでもない。

が、もしも「道」にこだわらないのであれば、こういう考え方もありますよ…という話だ。そして、日本の公道をフツーに走る分には先代末期も現行初期も、その走りっぷりは実質的にはさほど変わりませんよ…という身もフタもない真実を含有した話でもある。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
「軍事プレゼンス」も性能も、現行型とそう大きくは変わらないのに圧倒的に安い「先代末期」という選択はいかが?


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE