▲車にまつわるあるあるって、どんな心理が働いているのか? 心理学者の晴香葉子先生に聞いていきます ▲車にまつわるあるあるって、どんな心理が働いているのか? 心理学者の晴香葉子先生に聞いていきます

車とペット、愛着が生まれる心理的な過程はほぼ同じ!?

“愛”車という言葉があるように、多くのオーナーは自分の車に愛着を感じているはずです。

一方、「免許を取ったばかりの頃は運転が未熟だから、初めて買う車は傷つけてもいい中古車にしておきなよ」と言う人も少なくありません。

カーセンサーとしては、愛情をもって中古車に乗っている人をたくさん知っているだけに、「傷つけてもいい」にはなんだか釈然としないところも……。

やはり、中古車よりも新車の方が、愛着を感じるものなのでしょうか。
 

▲皆さんの中にはぬいぐるみみたいに名前をつけてかわいがっている、なんて人もいるのでは? ▲皆さんの中にはぬいぐるみみたいに名前をつけてかわいがっている、なんて人もいるのでは?

「愛着とは、突き詰めれば好きということです。心理学的に、なにかを好きになるにはいくつかの要素があります」と教えてくれたのは、心理学者の晴香葉子さん。

「思い入れ」「自己表現」「思い出」「かけた価値」などが愛着につながりやすい要素なのだとか。

「思い入れでわかりやすい例は、ズバリ『恋人』です。恋人への愛着は、思い入れの強さとも言えます。自己表現は、モノが自分の分身だと感じること。思い出は、モノを使って生まれた楽しい記憶や望ましい記憶。かけた価値とは、モノにいくらのお金や時間をかけたか。これらの積み重ねの結果、愛着が生まれやすくなります」

実は、車は比較的、愛着が生まれやすい存在なのだそうです。

「車選びは、ライフスタイルや趣味嗜好を反映しています。つまり、自己表現の一部ですよね。また、家族や恋人とドライブをすると、思い出が生まれます。日常生活の中では決して安くはない買い物なので、かけた価値も高いんです」と晴香さん。

これらは、車以外でも当てはまりそうですが、さらに車ならではの理由があるといいます。

「車は事故をおこせば生死に関わります。ある意味、命を預けている部分もあり、危険をともにするパートナーとして愛着が深まりやすいという側面があります。また、人は動くモノに愛着を感じやすいのですが、車は動くモノの代表格です。ペットに近い感覚をもち、家族の一員という感情が芽生えることも珍しくないんです」

確かに、ちまたではロボット掃除機に名前をつけてかわいがるといった話もよく耳にします。

AIBOのように命はなくても、ペットとしてかわいがられている事例も一般的です。

「もうひとつ重要なのは、フロント“フェイス”の存在です。顔に見えると、まさにペットのような愛着が湧きやすくなります。さらに、自分で洗車を行うのは、お世話と同じこと。ペットも散歩など世話を続けると、愛着が生まれますよね。もし今後、自動運転が普及したり、車自身と会話をしながら操作の指示を出せるようになったりすれば、さらに車への愛着は深まるはずです」

新車でも中古車でも、大事に乗れば愛着が湧いてくる

では、最初の疑問、中古車よりも新車の方が愛着を感じるかどうかに戻りましょう。

晴香さんによれば、「愛着という観点では、新車・中古車というよりは、いかに自分にとって特別かどうか」だといいます。

「例えば、子共の頃からの憧れの車で、今は生産されていない旧車を買ったとしましょう。これは思い入れもあるし、自己表現の一部でもある。当然、大事に乗るでしょうから、思い出も生まれます。カスタムや修理をすれば、かけた価値も高まります。さらに、もし古くて壊れやすければ、そこに修理といった世話も発生する。当然、愛着は深くなります」

一方で、本当は新車が良かったけれど、価格的な問題で妥協して中古車を購入した場合は、愛着は湧きにくいそうです。

しかし、実際に乗ってみて意外と良かったり、お買い得だったりと思えると、やはりそこには愛着が生まれるといいます。

一方で、飽きてしまったときや他人からの評価で愛着が薄れることもあるそうです。

そもそも、飽きっぽい人は、車に限らず様々なものに対して、愛着が薄れやすいそうです。

よくいわれる『車に愛着がなく何度も乗り替える人は浮気性』という話も、こういったところからきていると考えられます。

そして、人からどう見られているかを気にするタイプだと、最初は気に入っていても、他人からの「新車じゃないんだ」などという一言で愛着が薄れることもあるというのです。

「洗車やメンテナンスなどをきちんと行って大切に扱えば、自然と愛着は湧いてきます。それに、ドライブなどで思い出が積み重なっていくと、大事な1台になるはずです」と晴香さん。

確かに、今では高級車に乗っている人でも、初めて買った安くてボロい中古車を忘れられないということがあるのではないでしょうか。

新車でも中古車でも、大事に乗れば愛着が湧くもの。ぜひ、素敵な思い出を作ってほしいものです。
 

【プロフィール】晴香葉子:作家・心理学者。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、テレビ、雑誌などメディアでの心理解説、監修実績などの活動を続けている。著書は、『人生には、こうして奇跡が起きる』(青春出版社)、『2回目からは、スーツのボタンは外しなさい』(潮出版社)、『言葉って不思議だと思いませんか?』(彩雲出版)など30冊以上 【プロフィール】晴香葉子:作家・心理学者。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、テレビ、雑誌などメディアでの心理解説、監修実績などの活動を続けている。主な著書に、『人生には、こうして奇跡が起きる』(青春出版社)、『2回目からは、スーツのボタンは外しなさい』(潮出版社)、『言葉って不思議だと思いませんか?』(彩雲出版)など30冊以上
text/コージー林田
photo/すしぱく