クルマとオーディオの切っても切れない関係、エッジ的カーステ百年史
カテゴリー: トレンド
タグ: フォード / EDGEが効いている / カーステ百年史 / 内藤毅
2018/11/10
車とオーディオを巡る100年の物語が始まります
「カーステ百年史」とは、常にエレクトロニクス技術の先端を走り、また自動車オーナーにとって重要な関心事であり続けた車載エンターテインメント。その紆余曲折の100年間をそれぞれの時代背景とともに辿っていく、車とオーディオを巡る長い長い物語りです。
初めてオーディオを積んだ車は?
さて、世界で最初の車載エンターテインメントについては諸説ありますが、本稿では、史上初めて自動車にラジオ受信機が載った記録が残る1922年をその始まりの年と定義します。
カーオーディオに関する最古の記録として残っているのは、1922年5月にシカゴの高校生が家庭用ラジオセットを積んで走らせたというもの。車はかの有名なT型フォードでした。
メディアで区切ると、ここから1950年代までがラジオの時代、
1960年代から1980年代がテープの時代、
1990年代から2000年代が光ディスクの時代、
そして2010年以降がインターネットを介した音楽配信サービスの時代、ということになるでしょうか。
もう少し細かく見ていくと、テープ登場前夜にはアナログレコード、
テープから光ディスクへの移行期にはデジタルテープも車載化されています。
いずれも短命に終わりましたが、これらの失敗が礎となってテープや光ディスクが隆盛へと導かれたことも、また事実であります。
一方、これを車両設計の側面から見ると、インパネにラジオのスペースが生まれた1930年代、ステレオスピーカーがビルトインされるようになった1970年代、
スマートフォンなどモバイル端末とのデジタル接続が確立した2010年代の3回が歴史の大きな節目と考えられます。
さらに、来る2020年代には純正システムの大半がCDなどのメカデッキをもつメディアプレーヤーを標準搭載しなくなるでしょう。
となればメカデッキの内蔵を前提としたDINサイズにこだわる必然性はますます薄れ、好みのユニットを選んで愛車に取り付ける、という楽しみも昔話のひとつになってしまうかもしれません。
トヨタ(レクサス除く)をはじめとする日本車の多くが、DIN2段分のオーディオスペースを確保し続けています。
それもあって、国内市場に限ればDIN規格のデッキやAVナビにもまだまだ一定の需要はあるようですが、世界的な潮流はもう完全に次のフェイズに入っているのです。
しかし、アフターマーケットの高級カーオーディオ製品がひときわ華やかに展開されていた1990年代後半~2000年代前半あたりと比較して、いまが寂しい時代になったとはまったく思っていません。
高価な市販品に大枚を投じなくても、満足できる音が楽しめるようになった最新の純正プレミアムサウンドシステムと、
数千万曲の中から聴きたい一曲を瞬時に選び出せる音楽配信サービスとの組み合わせは、
冷静に考えれば、過去100年間にわたって人々がカーオーディオに求めてきた夢の実現そのものだからです。
現状に不満があるとすれば、通信速度の制約からインターネット経由で聴く音楽の大半が非可逆の圧縮音声にとどまることですが、
それも2020年に実用化が予定される次世代モバイル通信規格(5G)の普及によって、自ずと解決していくでしょう。
次に来るであろう大きな節目、それは自動車の完全自動運転が実現し、ドライバーがビデオコンテンツとオーディオコンテンツのいずれかを自由に選べるようになるときなのかな? と思いますが、
かつての超音速旅客機やエアカー(分かります?)と同じように、動くリビングルームさながらの完全自動運転車というものは夢物語のまま、実現しそうで結局実現しないのかもしれませんね。
米国でのブームを陰で支えた日本メーカー
5T71やHIGHWAY Hi-Fiを生んだ米国が、カーオーディオの発祥地であることは言うまでもありません。
しかし、1960年代以降のテープステレオ時代に入ると、米国ブランドの多くが日本のメーカーからデッキのOEM供給を受けるようになります。
その後、オイルショックが勃発する1973年頃までの間、メイド・イン・ジャパンの品質が米国のカーオーディオブームを陰で支えたのです。
カーオーディオは日本が世界に誇る産業分野でありながら、残念なことにその歴史を概観できるような文献といったものがほとんど存在しません。
また、物語に登場すべきメーカーや商社の多くが撤退・消滅しているのが現状です。
筆者が当事者として関わったのは100年のうちの1/3程度にすぎません。
それでも本連載では、できる限りの事柄を書き留めていきたいと考えています。
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