▲車にまつわるあるあるって、どんな心理が働いているのか? 心理学者の晴香葉子先生に聞いていきます ▲車にまつわるあるあるって、どんな心理が働いているのか? 心理学者の晴香葉子先生に聞いていきます

すぐに怒る人は短絡的で先のことを考えられない傾向が高い

「世の中には2種類の人間が存在する、運転中のイライラする奴とイライラしない奴だ」。

なんて、当たり前のことをハードボイルド風に語ってみましたが、実際、渋滞中でものんびりしている人もいれば、ちょっとしたことですぐに怒って、煽り運転をしてしまう人もいます。
 

▲いったい、どんな人が怒りっぽく、煽り運転をしてしまうのでしょうか ▲いったい、どんな人が怒りっぽく、煽り運転をしてしまうのでしょうか

心理学者の晴香葉子さん:「イライラしやすい人は、いくつかのタイプに分かれます」

と教えてくれました。

晴香さん:「まず、元々、攻撃性が高いうえに、仕事などでストレスがたまっている人。そして、元々がヤンチャでエネルギーを放出する機会を探している人。いちばん危ないのは、普段は穏やかに生活しているけど、その裏でイライラを抑えている人。車はプライベートな空間であり、かつ、匿名性を担保できるので、普段、抑えている反動でイライラしやすくなります」

もちろん、イライラにも程度があります。イライラしても態度に出さず、人にも迷惑をかけなければ問題ありません。困るのは、すぐにイライラして怒る沸点が低く、他人にあたる人間です。

晴香さん:「すぐに怒るのは感情のコントロールができていないから。それに、怒ったことでどういった事態になるのかを想像する力も乏しい。短絡的で先のことを考えられないということでもあり、計画性のなさにもつながります」

と手厳しい意見。

イライラを誘発するのは、外部的要因も多々あります。

例えば、遅刻しそうなときに渋滞にはまれば、誰でもイライラするでしょう。

そんなときに割り込みをされれば、怒りたくなる気持ちも分かります。

しかし、そもそも不測の事態に備えて、遅刻しないように早めの出発をしていれば、多少の渋滞でも気持ちには余裕があるはずです。

そう考えると、計画性がなく短絡的な人は不測な事態にも遭いやすく、そのたびにイライラしてしまうのかもしれません。
 

イラッとしたら深呼吸。そして、大事な人を6秒間思い出す

では、イラッとしても態度に出さない人はどんな人なのでしょうか。

晴香さん:「例えば、道徳観が強ければ、ドライブ中にイライラしていても、煽り運転のようなルールに反するような行動は起こしません。そもそも気が小さい人も、怒りの感情を前面に出すことは少ないでしょう」

しかし、できればイライラした気持ちを持ち続けるのは遠慮したいもの。

心理学的にイライラしなかったり、うまく収めたりするテクニックはないのでしょうか。

晴香さん:「性格がのんびりしていて、イライラを感じにくい人はいます。しかし、ストレス過多の社会においては少数派。特に運転中は、他人のイライラ運転に相対することで、その感情が自分にも伝染します。そんなときに思い出してほしいのが、6秒ルールです」

この6秒ルールとは一体何なのでしょうか。

晴香さん:「感情には波があり、イラッとして怒りを感じても、そのピークは6秒程度しか続かないといわれています。短気な人は怒りのピークで直情的な行動に移してしまう。しかし、イライラしない、怒らないといわれている人は、この6秒をやり過ごして、怒りをコントロールしています」

怒りをコントロールというと、なんだか難しいそうですが、手軽な方法があります。

晴香さん:「最も手っ取り早いのは、深呼吸です。それだけで不必要なホルモンがデトックスされて、過剰なストレスが発散されて心が落ち着きます。もうひとつ、とても効果的な方法があります。それは、子共や家族など大事な人を思い浮かべること。もし怒りにまかせた行動で万が一の事態が起きたら、二度と会えなくなるかもしれない。そう考えれば、イライラや怒りも収まります」
 

気分は環境に左右される。渋滞時にはゆったりとした音楽がオススメ

イライラしないためには、環境を整えるのも大事だといいます。

晴香さん:「心理学には気分一致効果という理論があります。これは、人はそのときの気分に合わせて周辺から情報を得たり、記憶したり、将来を予想したりするもの。例えば同じ環境でも、ポジティブな気分のときはプラスと感じるし、ネガティブな気分のときにはマイナスと感じます。つまり、イライラしているときは、他の車のちょっとした行動がマイナスに捉えられ、怒りへとつながるというわけです」

ただし、その逆も然りだそうです。

晴香さん:「つまり、環境と感情は一致しやすいということです。例えば、静かな美術館では高いテンションにはなりにくいですよね。一方、みこしなどを担ぐお祭りでは精神が高ぶります。 つまり、車内をリラックスできる空間にすれば、自ずとイライラしにくくなるということです」

オススメは、渋滞時などにゆったりとしたテンポのクラシックやヒーリングミュージックをかけること。

ロックなどテンポが速い曲は、好戦的になるので渋滞中はやめた方がいいようです。
 

イライラを鎮めると社会的な成功を収めることができるかも

心理学には「マシュマロ実験」と呼ばれる有名な実験があります。

簡単に説明すると、子供の前にマシュマロをひとつ置いて、15分ガマンできたらもうひとつあげると告げて退出し、その後の子供の行動を確認するというものです。

ガマンとは感情のコントロールを意味します。

ガマンができた子とできなかった子を追跡調査したところ、できた子の方が大学進学適性試験の点数が高く、また、社会的な成功を収めやすかったという実験結果が導かれたといいます。(最近では否定する再現実験も結果も発表されていて、諸説あるようです)

すぐにイライラして怒るとは、感情をコントロールできていないということ。

それでは、社会的な成功も望めないかもしれません。

なにより、煽り運転や無理な追い越し、加速などをしてしまうと、大きな事故につながってしまう可能性もあります。

世知辛い世の中だから、運転中にイラッとするのは仕方ないにしても、感情の赴くままにアクセルを操作することだけは、ダメ、絶対。

イラッとしたら、深呼吸して大事な人を思い出し、怒りのピーク6秒間をやり過ごしましょう。
 

【プロフィール】晴香葉子:作家・心理学者。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、テレビ、雑誌などメディアでの心理解説、監修実績などの活動を続けている。著書は、『人生には、こうして奇跡が起きる』(青春出版社)、『2回目からは、スーツのボタンは外しなさい』(潮出版社)、『言葉って不思議だと思いませんか?』(彩雲出版)など30冊以上 【プロフィール】晴香葉子:作家・心理学者。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、テレビ、雑誌などメディアでの心理解説、監修実績などの活動を続けている。主な著書に、『人生には、こうして奇跡が起きる』(青春出版社)、『2回目からは、スーツのボタンは外しなさい』(潮出版社)、『言葉って不思議だと思いませんか?』(彩雲出版)など30冊以上
text/コージー林田
photo/すしぱく