▲車にまつわるあるあるって、どんな心理が働いているのか? 心理学者の晴香葉子先生に聞いていきます ▲車にまつわるあるあるって、どんな心理が働いているのか? 心理学者の晴香葉子先生に聞いていきます

高級車への憧れもアイドルへの憧れも、根本は同じ?

フェラーリやランボルギーニが大好きで、ミニカーを集めているカーマニアは珍しくありません。

あおるつもりは全くないのですが、彼らの多くは、実際にはフェラーリやランボルギーニには乗っていないでしょう。
 

▲モーターショーでも、絶対に手が届かないような数千万円単位の高級車にこそ、人気が集まったりします ▲モーターショーでも、絶対に手が届かないような数千万円単位の高級車にこそ、人気が集まったりします

車は突き詰めれば、工業製品。アイドルやカリスマへの憧れとは異なる気もするのですが、そこにはどういった心理が働いているのでしょうか。

晴香先生:そもそも、“高級車とは多くの人にとって手が届かないもの”という共通認識があります。そのため、買えないことがコンプレックスになりにくく、“憧れている”と言いやすい傾向があります。手に入らないものでも、憧れを抱くと高揚感や楽しい気分になります。手に入らないけど、その高揚感をより持続させるために、ミニカーや関連グッズを購入する人もいます。

しかし、そもそも、人はなぜ憧れを抱くのでしょうか。

晴香先生:憧れがもたらす心理的要素には、アイデンティティの形成があります。○○に憧れている自分という存在自体が、よりどころのひとつとなるのです。また、憧れている対象への帰属意識が満たされたり、憧れの対象の考え方などを参考にすることで不安から解消されたりすることもあります。そして、最終的には、憧れの人やモノを見たり触れたりすることで、高揚感が生まれます。手に入ることがなくても、見たり触れ合ったり応援したりできるとワクワクする心理、これは、高級車よりもアイドルへの憧れなどが分かりやすいかもしれないですね。
 

憧れから発生する『モデリング』『帰属意識』『同一視』

人は、なにかに憧れたときに、心理学的にある行動を取るといいます。それが、『モデリング』『帰属意識』『同一視』の3つです。

晴香先生:憧れとは、心理学的に見ると『モデリング』『帰属意識』『同一視』などから構成されています。『モデリング』とは、なにかしらの対象物を見本(モデル)に、そのものの動作や行動を見て、同じような動作や行動をすること。『帰属意識』とは、憧れるものやグループに所属したいという感情。『同一視』とは、他者の特徴を自分の中に取り入れて、その対象物と自分があたかも同一の存在であるかのように感じ、行動することによって、自己を変えようとする心理です。

この中で、高級車への憧れでは、『モデリング』が特に顕著に現れるのだとか。

晴香先生:フェラーリに憧れている人が赤いスポーツカーに乗るのも、『モデリング』のひとつといえます。また、“自分はフェラーリが好き”ということ自体、憧れるものやグループに所属することになります。これは、一種の『帰属意識』といえるかもしれません。
 

若い頃に憧れた高級車、中古車なら乗れるかも!

大衆車を出すメーカーでも、手が届かない高級車を出していることは珍しくありません。

例えば、ホンダは2000万円オーバーの『NSX』、日産は1000万円オーバーの『GT-R』などがあります。ここには、人の心理を巧みに操る戦略があるそうです。

晴香先生:最も分かりやすいのが、ハイブランドファッション。パリコレなどでモデルが着る服は、日常のビジネスシーンなどでは着ることができないようなものが多いですよね。しかし、あの服を見ることで、ブランドがもつデザインの素晴らしさを知って、感動し、憧れる。そして、同じブランドで手が届く、同系統の服を着ると満足感が高まったり、良い気分になることができます。

分かりやすいのは、ホンダが『F1』に参戦し、日本中でブームが巻き起こっていたとき。筆者の周りでも、ホンダのスポーツカーを買った友人が多くいました。

ちなみに、若い頃に憧れた1台。中古車なら手が届くことが良くあります。あの頃、夢のまた夢だったスポーツカーに乗ってみても楽しいかもしれません。
 

【プロフィール】晴香葉子:作家・心理学者。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、テレビ、雑誌などメディアでの心理解説、監修実績などの活動を続けている。著書は、人生には、こうして奇跡が起きる(青春出版社)、2回目からは、スーツのボタンは外しなさい(潮出版社)、言葉って不思議だと思いませんか?(彩雲出版)など30冊以上 【プロフィール】晴香葉子:作家・心理学者。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、テレビ、雑誌などメディアでの心理解説、監修実績などの活動を続けている。主な著書に、『人生には、こうして奇跡が起きる』(青春出版社)、『2回目からは、スーツのボタンは外しなさい』(潮出版社)、『言葉って不思議だと思いませんか?』(彩雲出版)など30冊以上
text/コージー林田
photo/ぜんせー