▲大衆コンパクトカーとして、ひとつの完成形を見た初代トヨタ ヴィッツ。今年で生誕20周年! ▲大衆コンパクトカーとして、ひとつの完成形を見た初代トヨタ ヴィッツ。今年で生誕20周年!

10年でひと昔、20年でふた昔?

20年前っていうと、すごく前の気もするし、ほんのちょっと前の気もします。

今から20年前の平成11年(1999年)といえば、「2000年問題」に不安になっていた時期。

若い世代の人はほとんど知らないと思うけど、これ、当時のコンピューターの多くが西暦年を下2ケタのみで処理していたために、2000年を1900年と勘違いして、年明けとともにいろいろな問題が起きるんじゃないか、いわれていた問題のこと。

電気水道などライフラインが止まるんじゃないかとか、信号機が機能しないらしいよとか、ATMからお金が引き出せなくなる(!)とか、いろんな噂が飛び交ってました。

フタを開けてみると大した影響なくて肩スカシ(当時のエンジニアさんたちが頑張ってくれたおかげかも)。

まあ、トラブルがなくて良かったんですけどね。

1999年といえば、あの嵐が『A・RA・SHI』でデビューした年でもあります。

また、ドコモのiモードがサービス開始した時期でもありました。

ケータイが電話するだけじゃなくて、ネット(みたいなもの)も見られるようになったのは衝撃的なできごと。

そう考えると、すごく昔の気もするなー。

▲東海道・山陽新幹線700系が営業運行を開始したのが1999年。そう聞くと、そんなに昔でもないような気が…… ▲東海道・山陽新幹線700系が営業運行を開始したのが1999年。そう聞くと、そんなに昔でもないような気が……

現代に通じる車作りの技術が確立

当時、アジア通貨危機の影響でガソリン価格が大幅下落。

リッター90円(レギュラー)の市場最安値を記録したんだって! そんな価格なら、燃費の悪いスポーツカーでも、重量級四駆でも何でも乗り放題だね。

そうした背景の中、平成11年はRV系も堅調ではあったけれどブームが一段落し、クラウンマジェスタのような高級セダン、ヴィッツのようなコンパクトカー、そして多くのスポーツカーが登場した年でした。

▲平成11年、ソニーから4足歩行型エンタテインメントロボットの初代AIBOが登場し、一大ブームになりました。2代目も20年後に語られる名プロダクトになるでしょうか? ▲平成11年、ソニーから4足歩行型エンタテインメントロボットの初代AIBOが登場し、一大ブームになりました。2代目も20年後に語られる名プロダクトになるでしょうか?

欧州製スポーツカーにも負けないハンドリングのホンダ S2000

▲ホンダにとって20年ぶりのFR車となったホンダ S2000。オープンなのに剛性感バッチリで、ホンダの車作りも変わったナという印象でした ▲ホンダにとって20年ぶりのFR車となったホンダ S2000。オープンなのに剛性感バッチリで、ホンダの車作りも変わったナという印象でした

それではまいりましょう、平成11年に登場した車の私的トップ3。

第3位は、ホンダのS2000。

ホンダから29年ぶりに発売された(RRはNSXがあった)、FR車ということで話題になりました。

オープンボディなのに抜群の剛性感、9000rpmという超高回転まで回り、自然吸気なのに250psも発生するエンジン、その割りに燃費もいい、とっても優等生なスポーツカー。

ボディタイプはオープンのみ、2シーター、トランミッションも6MTのみ、剛性を重視したために狭くなっちゃった車内やトランク……とコダワリすぎた仕様のせいで販売は全然伸びなかったけど、今乗っても間違いなく楽しい名車です。

もっと評価高くてもいいと思う。

2009年まで約10年にわたって生産されました。

▲6MTのみ、というトガッた設定だったホンダ S2000。インテリアは大きく張り出したセンタートンネルが特徴 ▲6MTのみ、というトガッた設定だったホンダ S2000。インテリアは大きく張り出したセンタートンネルが特徴

DIYブームの今こそウケそう! ダイハツ ネイキッド

▲バンパーなどが簡単に外せるDIYテイストが話題となった、ダイハツ ネイキッド ▲バンパーなどが簡単に外せるDIYテイストが話題となった、ダイハツ ネイキッド

ダイハツ ネイキッドは軽自動車=実用的なものばかりでツマラナイ、という概念を覆した、斬新な車でした。

ミラターボみたいな走りのイメージではなく、デザインで勝負したのがエポックメイキングなところ。

ボディパネルは細かく分割され、むき出しのボルトで固定。

ドアヒンジも外に露出していて、欧州製のバンみたいな雰囲気でした。

こうした仕様は見た目のためだけじゃなく、ユーザー自身が簡単にパネルを交換できるように、ドアが大きく開くように、と機能性を重視した結果だったのです。

インテリアも鉄板むき出しで、むしろオシャレ。

東急ハンズとかDIY大好きな若者には、もってこいの車だったことでしょう。

コチラも販売的にはあまり振るわず、2代目が登場することはありませんでしたが、コンセプトが目新しかったので第2位に!

2ペダルなのにマニュアル感覚……は当時新鮮だったトヨタ MR-S

▲MR2でスポーツに走りすぎてしまった経験から、手軽にスポーツ走行を楽しめるオープン2シーターを目指したトヨタ MR-S ▲MR2でスポーツに走りすぎてしまった経験から、手軽にスポーツ走行を楽しめるオープン2シーターを目指したトヨタ MR-S

良い車がたくさん出た平成11年ですが、第1位は独断と偏見でトヨタ MR-Sを選びます。

若い世代の人じゃなくても、車に興味がない人だったら知らないかもしれない、隠れた名車……だと思うんですよね。

MR2の後を継ぐ、トヨタのミッドシップ2シーターのスポーツ・オープンカー。

ミッドシップつーか、ほとんどリアエンジンということでカリッカリのスポーツカーを想像しちゃうけど、実はホイールベースが長いおかげで結構乗りやすい。

ハンドリングがシビアすぎたり、パワフルすぎたりするスポーツカーが苦手な私にとって、手軽にスポーティな走り&オープンモータリングを楽しめる、素敵な車でした。

特に秀逸だったのが、当時、国産車初採用だったシーケンシャル・マニュアルのトランスミッション(SMT)。

普通のマニュアル車みたいにダイレクト感あって2ペダルって最高じゃん! と感動したのを覚えてます。

もちろん、ハンドリングでいうならユーノス(マツダ)ロードスターにかなわないし、ボディ剛性などスポーツカーとしての完成度だったらホンダ S2000の方が全然上。

でも、気軽に乗れて、その気になれば結構本気でも走れちゃうっていうね、なんていうか、その懐の深さというか、中途半端なところが良かったわけですよ。

しかも新車価格はSMTでも、200万円チョイというリーズナブルさ。

ただ、荷物を入れる場所がシート背面にしかなくて(ボンネットにはスペアタイヤが鎮座、リアにはエンジンがあるので積載不可)、しかもボストンバッグくらいしか入れられないのは難点でしたが。

いろんな意味で、こんな車、トヨタにしか作れない。

▲リアタイヤより少し前方にエンジンを搭載する、ミッドシップ・レイアウトを採用したトヨタ MR-S。デビュー当時の車重はわずか970kg ▲リアタイヤより少し前方にエンジンを搭載する、ミッドシップ・レイアウトを採用したトヨタ MR-S。デビュー当時の車重はわずか970kg

ということで、平成11年に発売された車ランキング私的トップ3は、コンセプトやデキは良かったけど、販売面では今いち振るわなかった車ばかりとなりました。

でも、売れたか売れなかったなんて、車の魅力とは全く関係ないよねー。

text/田端邦彦
photo/ダイハツ、トヨタ、ホンダ、Adobe Stock、photo AC