▲車にまつわるあるあるって、どんな心理が働いているのか? 心理学者の晴香葉子先生に聞いていきます ▲車にまつわるあるあるって、どんな心理が働いているのか? 心理学者の晴香葉子先生に聞いていきます

ボディカラーに求めるのは好みよりも汎用性

ボディカラーで不動の人気を誇るのは「白」です。

ドイツの総合化学メーカー『BASF』のコーティングス事業本部が発表した「BASF自動車用OEM塗料カラーレポート」によると、2017年の自動車市場では白が世界のマーケットシェアの約40%を占めていて、あらゆる車種において人気を博しているのだそうです。

それに続くのが、黒、グレー、シルバーで、無彩色の人気が高いことがわかります。
 

▲皆さんはどんな色の車を選んで乗っていますか? ▲皆さんはどんな色の車を選んで乗っていますか?

「自動車のボディカラーを好みだけで選ぶ人は少数派。私服を買うときの色はその人の心理やその日の気分がでやすいのですが、車を買うときはそれとはちょっと異なります」と、心理学者の晴香葉子さん。

ボディカラーを選ぶときには「他者視点と自己評価のバランス」が重要視されるそうです。

他者視点とは他人からどう見られるか。自己評価とは自分が気に入るかどうか。

車は気軽に買えるものではないし、一般的には何台も持てるものではありません。

そうなると普段使いだけなく、通勤に使えるか、友人を乗せられるか、お葬式などの場所でも違和感がないかなど他者の視点や社会的な視点も考えがちです。

つまり、車にはどんなTPOでもそつなくこなす汎用性を求めてしまいます。

「個性が強く目立つ原色系よりも、誰もが受け入れやすいホワイトやブラックを選ぶというのは当然の心理だと思います。それに、白や黒は広く好かれやすい色で、買う側も絶対にイヤとはなりにくい。他者視点と自己評価のバランスも取りやすい色といえるでしょう」

もうひとつ、白と黒には、ある意味、無難な色だからこそ、選ばれる理由があるといいます。

その理由とは、心理学でいう「後悔回避」です。

「後悔回避とは、ある決定を下すときに後悔による不快な状態を避けるようする行為です。あのときこうしていれば……、という事態に陥らないために、失敗を避けることを重視した選択をします」

例えば、赤が好きな人が真っ赤な車を買ったとしましょう。

その瞬間は嬉しいかもしれませんが、お葬式などに乗っていくと悪目立ちをしてしまって後悔するかもしれません。

人はこの後悔を予測して、赤を避ける決定を下しがちだといいます。

心理学的に色がもつ意味と自分が好きな色を合わせて選んでもOK

逆にいえば、通勤にも使わなければ、冠婚葬祭にも使わない。

あくまで、プラベートでのみ使うと割り切っていれば、ボディカラーの選択肢は広がるわけです。

エッジの立ったスポーツカーに印象的な原色が多いのも、そういった理由かもしれません。

では、色彩心理学では、色にはどういった意味があるのでしょうか。

「赤→橙→黄→緑→青→藍→紫という虹の順番は、可視光線の波長の長さにより決まっています。波長が長いと目に入りやすいので、そのまま印象に残りやすい色の順番なんですよ」

ヒーロー戦隊でもリーダーは赤。これは、一番に覚えてほしいといった理由もあります。紫は日本では古くから高徳の僧侶や高貴な身分の人が身につけてきた色。これは、姿がむやみやたらに人々の記憶に残らないようにする効果もあったと考えられています」

その他、色彩心理学では、黄色は陽気で活動的な気持ちにさせる、青は心を静めて落ち着かせる、緑はリラックスや癒しをもたらすといった効果もあるといいます。

「白は爽やかさがある、みんなから好かれる、倫理観があるなど、全体的にクリーンなイメージ。黒は重厚感を感じさせならが、何者にも染まらないといった意志の強さも感じさせます」と晴香さん。

これらの、心理学的に色がもつ意味と自分が好きな色を合わせて、ボディカラーを選ぶのも面白いかもしれません。

少しだけで現実的な話をすれば、白と黒は売れ筋だけに、乗り替え時のリセールバリューも高くなりがちです。

一方、原色系の不人気車種は購入時、相場よりも安くなるケースもあります。

もし、色にこだわりがなければ、お金の面から選ぶという考え方もあるかもしれません。
 

【プロフィール】晴香葉子:作家・心理学者。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、テレビ、雑誌などメディアでの心理解説、監修実績などの活動を続けている。著書は、『人生には、こうして奇跡が起きる』(青春出版社)、『2回目からは、スーツのボタンは外しなさい』(潮出版社)、『言葉って不思議だと思いませんか?』(彩雲出版)など30冊以上 【プロフィール】晴香葉子:作家・心理学者。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、テレビ、雑誌などメディアでの心理解説、監修実績などの活動を続けている。主な著書に、『人生には、こうして奇跡が起きる』(青春出版社)、『2回目からは、スーツのボタンは外しなさい』(潮出版社)、『言葉って不思議だと思いませんか?』(彩雲出版)など30冊以上
text/コージー林田
photo/ELFA