ベントレー コンチネンタルGT V8 S|海外試乗

V8を選ぶ人は、ベントレーを欲しがってはいても考え方のどこかに一定の現実主義があって、社会的な我儘度も低めだと思われる。あくまでも本質重視、スマートエリートの成功者が乗るベントレー、であると言っていいだろう。

V8版の“スピード”コンチGTの大本命だ

まるでひと回り小さいかのよう

ベントレーがまた売れ始めている。昨年は6年ぶりに年産1万台を超え、過去最高を記録。モダンベントレーは世界景況のバロメーターかもしれない。

日本でも、がぜん好調なセールスを取り戻した。主役はもちろんコンチネンタルGT、それもV8だ。それゆえ、ベントレーは昨年のフランクフルトショーで、W12におけるスピードと同じ位置づけのV8 Sを追加設定した。

S化の手法は、スピードと全く同じで、エンジン性能アップにアシ回りの強化、エアロデバイス追加、と至極真っ当。

2t以上の巨体に21ps&20N・mアップだから、正直、「すっげー速くなった」とは思えなかったけれども、ハンドリングのほうはといえば、もともとV8搭載で鼻先が軽くなっているうえに、いっそう硬質で軽快な前アシさばきが備わって、ドライブしていると、まるで、ひと回りも小さいコンチネンタルGTに乗っているかのようだった。

今後はV8エンジンでキマリ

世の中のスーパースポーツの趨勢がV8+過給器になりつつある今、ベントレーはW12ツインターボと並行してV8モデルの充実を進めることで、未来の準備を行っている、というわけだろう。

ウルトラスムーズなW12フィールも確かに捨てがたいけれども、V8モデルがここまで上質かつスポーティに、エキサイティングに走ってくれるのであれば、そろそろW12に引導を渡してもいい。どうしても12気筒が欲しいという人には、それこそ、カーセンサーEDGEで良質なタマを見つけてもらえばいい…。

ベントレーにとって、歴史的に馴染み深いのは、12気筒ではなく8気筒。効率化をにらみつつのパフォーマンス向上にも、まだまだ進化の余地がある。4ドアフライングスパーにもV8仕様が登場したことだし、ベントレーといえば、今後はV8エンジンでキマリ、である。

クーぺとコンバーチブルの両タイプを用意。連続可変式ダンピングコントロールを採用し、W12モデルと比べ車高は10mm低くなっている

クーぺとコンバーチブルの両タイプを用意。連続可変式ダンピングコントロールを採用し、W12モデルと比べ車高は10mm低くなっている

フロントスプリッターやリアディフューザーなどを備えることによりエアロダイナミクスを向上し、高速時の安定性がさらに高められている

フロントスプリッターやリアディフューザーなどを備えることによりエアロダイナミクスを向上し、高速時の安定性がさらに高められている

巡航時に4気筒を休止させる可変シリンダーシステムが採用されている。また、クーぺの0-100km/h加速は4.5秒となる

巡航時に4気筒を休止させる可変シリンダーシステムが採用されている。また、クーぺの0-100km/h加速は4.5秒となる

SPECIFICATIONS

グレード V8 S
駆動方式 4WD
トランスミッション 8AT
全長×全幅×全高(mm) 4806×1944×1394
ホイールベース(mm) 2746
車両重量(kg) 2295
乗車定員(人) 4
エンジン種類 V8DOHCターボ
総排気量(cc) 4000
最高出力[ps/rpm] 528/6000
最大トルク[N・m/rpm] 680/1700
車両本体価格(万円) 2190
Tester/西川淳 Photo/ベントレー モータース ジャパン