GT4

2シーターもしくは2+2シーターのクーペ車をベースに開発されるマシンカテゴリーがGT4(正式名称:Group GT4)。開発費を抑え参入のハードルを下げたGT3を、さらにコストのかからない体制へと変更したカテゴリーだ。アマチュア参戦の難易度がより低くなったGT4は、GT3とTCRの中間に位置しその手軽さから世界中のモーターレースで採用されている。

今回はGT4マシンとそのベース車両の最新事情、魅力を解説したい。
 

参加費用を抑えた真の市販車ベースレース

GT4は2006年に誕生したレースカテゴリー。GT3は年々高性能化、高コスト化、プロ化が進んでおり、本来のカスタマーであったアマチュアドライバーにとってハードルの高いものとなっている。

そうした中で発案されたのが、GT3の下位カテゴリーとなるGT4だ。その特徴はベースとなる市販車からの改造範囲がGT3に比べて限定的で、マシン費用が安価なこと。そして、メンテナンスやランニングコストが抑えられることだ。例えば、アウディ R8をベースとしたGT4マシン「R8 LMS GT4」は、構成部品の60%以上が市販車と共通で、生産も市販車と同じくドイツのネッカーズルム工場で行われている。
 

GT4▲アウディ R8をベースに設計されたR8 LMS GT4。ベースモデルと同じ5.2LのV10エンジン搭載の495psだ。簡略化されたリアウイングなど、GT3と比べエアロパーツの制限が狭いことが見てわかる
GT4▲R8 LMS GT4のデビュー戦である2018年のドバイ24時間レースではクラス優勝を成し遂げ、2020年の勝率は22%という驚異的な速さを見せつけた
写真/アウディ AG

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GT4マシンは自動車メーカーが生産するものと、チューニングメーカーやレーシングチームがレギュレーションにのっとり好きなベース車両を使って自作するものがあるが、いずれもGT3同様、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス:性能調整)が行われ性能の均衡化が図られている。

GT4は当初ドイツ国内のGTレースで採用が始まり、いまではニュルブルクリンク24時間レースなどにもカテゴリーが創設されている。2009年にはオランダでも選手権が開催されるなど、欧州で火がついたのを皮切りにいまは日本でも様々なマシンが走り始めている。

国内では、スーパー耐久シリーズにGT4車両のための「ST-Zクラス」が設定されており、2021年シーズンの開幕戦にはメルセデスAMG GT、BMW M4、ポルシェ 718ケイマン、アストンマーティン ヴァンテージ、アウディ R8、ジネッタ、トヨタ GRスープラ、などをベースとした計15台のGT4マシンがエントリーするなど、最も参加台数の多い人気カテゴリーとなっている。

また、アメリカでも人気は高まっており、フォード マスタングやシボレー カマロ、日産 フェアレディZをベースとしたGT4マシンなども作られている。

ちなみに、メルセデスAMG GT、アウディ R8、ポルシェ 718ケイマンなどのGT4マシンの価格は、為替の関係もあるがおおむね2700万~3000万円。メルセデスやアウディの市販車が2000万円超であることを考えればリーズナブルにも思える。自分でベース車両を買ってサーキット仕様に仕立てるより、よほど廉価で速いマシンが手に入る。まさに、ジェントルマンドライバーにとってうってつけのカテゴリーというわけだ。
 

ここでいくつかのGT4マシンを紹介

GT4▲メルセデスAMG GTをベースとしたAMG GT4。ベース車と同じV8ツインターボエンジンを搭載し、極限状態でも的確なパフォーマンスを発揮するよう排気系やブレーキを一新。2018年のGT4登場以来140回以上も表彰台を飾っている
写真/ダイムラー AG

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GT4▲BMW M4がベースのM4 GT4。最高出力は431psで重量配分は50対50に仕上げられている。ボンネットなど多くのパーツをベース車両と共通にすることで、ライバルより1000万円近く安い手頃な価格となっている
写真/BMW AG

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GT4▲ポルシェ 718ケイマンをベースとした718ケイマンGT4 クラブスポーツ。水平対向6気筒エンジンを搭載し425psのパフォーマンスを誇る。素早く簡単な操作が可能なPDKトランスミッションをクラブスポーツでも採用
写真/ポルシェ AG

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GT4▲トヨタ スープラがベースのGRスープラGT4。最大出力430ps/650N・mまで高められたエンジンはベース車両のものを流用。ロールケージや軽量の専用ボディを採用しながらも、価格はGT4カテゴリー車ではリーズナブルな2100万円となっている
写真/トヨタ

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GT4▲フォード マスタングをベースとしたマスタングGT4。GT4カテゴリー車としては大きめの5.2L V8エンジンを搭載。足回りやボディパネルに専用品を使いコーナリング性能を高めた1台(写真はラスベガスモーターショーで展示されたオールカーボンボディの車両)
写真/フォード・モーター・カンパニー

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文/藤野太一、写真/BMW AG