Hot Version 本田編集長▲動画メディア「Hot Version」。YouTubeでも見たことがある人は多いのではないだろうか。あらゆるスポーツカーをサーキットで全開アタックするアレだ。車の限界性能、チューニングの知識も豊富な本田編集長はランキング結果にどんな反応を示すのか!?

チューニング知識も豊富な編集長がランクインしたモデルを語る

価格がこなれた中古スポーツカーを狙う人たちは、実は多い。

スポーツカーは一般的な実用車に比べ流通量が少ない。その少ない物件数を多くの人たちが買い求める「早い者勝ちのバトル」が常に繰り広げられているのだ。

人気車であればあるほど、お得感がある物件であればあるほどその激しさは増す。

そこで、情報誌 カーセンサー・10月号(2019年8月20日発売号)の特集では「早く買わないと狙った物件が消えてしまう」率が高い順にランキングを作成し紹介している。ちなみに上位7位、いわゆる“神7”はこちら。

1位:ホンダ シビックタイプR(現行型)
2位:トヨタ スープラ(80型)
3位:スバル WRX(現行型)
4位:マツダ ロードスター(現行型)
5位:マツダ ロードスターRF(現行型)
6位:日産 スカイラインGT-R(R33型)
7位:日産 GT-R(現行型)


誌面ではトップ30位まで紹介しているので、興味がある方はぜひチェックしてほしい。

また、同特集内ではドリキンこと土屋圭市さんやHot Version 本田編集長さんの他、有名な自動車雑誌、WEBメディアの編集長たちにもスポーツカーについてインタビューを実施。誌面には収まりきらなかった話も含め、Webでも紹介していく。
 

トヨタ 86 ▲8月20日発売号のカーセンサーの表紙(写真は関西版)。ちなみに東日本版は青、首都圏版はグレー、東海版は白、西日本版はシルバーの86だ
Hot Version 本田編集長

Hot Version 編集長

本田俊也

カービデオマガジン「Hot Version(ホットバージョン)」
著名なレーシングドライバーによるインプレッションや、モータースポーツのドキュメンタリー、チューニングの性能比較など、主にチューニングカー・スポーツカーの動画コンテンツを制作・配信。DVD作品は、Vol.158(2019年6月発売)の発売をもって終了となったが、Amazon PrimeやYouTubeなどで、引き続き世界中のファンに愛されている動画メディア。

伊達軍曹

インタビュアー

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。

伊達軍曹
伊達軍曹

カーセンサー編集部が集計したこちらのランキングですが、ランクインしてる個々の車種について、チューニング媒体ひと筋でやってこられた本田編集長ならではの「寸評」をお願いします!

本田
Hot Version 本田編集長

了解! まずは1位の現行型ホンダ シビック タイプR。……これはねえ、FKシリーズ(2015年以降のシビック タイプR)になって以降は「なんでこんなダサい純正タイヤ履かせてるんだろ?」というのが正直なところですね。

伊達軍曹
伊達軍曹

タイヤがダサいですか!

本田
Hot Version 本田編集長

そうですよ。FK2(2015~2016年の先代シビック タイプR)のときなんか、そのへんで普通に売ってるハイグリップタイヤに替えるだけで、筑波サーキットのラップタイムは約3秒も短縮しましたからね。

まあ諸事情あって現在の純正装着タイヤになったわけで、その純正タイヤも普通の車に付ける分にはぜんぜん問題ないですよ。でもね、タイプRに付けるべきタイヤじゃない。まあとにかく現行型のシビック タイプRを買うならば真っ先にタイヤを替えた方がいいですね。付いてるタイヤはあんまり良くないけど、車体は本当に素晴らしいですから。

ウチの媒体『Hot Version』は長年、群馬サイクルスポーツセンターで同一条件下でのラップタイムを計測してるんですが、今までのFF車ってどうしてもFR車以上のタイムは出せなかったんですよ。

でもFK8(現行型シビック タイプR)のチューニングカーたちって、FRのチューニングカー以上のタイムを平気で叩き出しますからね。FFスポーツの走りの次元は、この現行型シビック タイプRからもう一段回変わったと言えるでしょう。

伊達軍曹
伊達軍曹

なるほど! では2位の80スープラ(先代トヨタ スープラ)について。

本田
Hot Version 本田編集長

80スープラが2位に入ったのは新型の影響なんでしょうけど、でも80は車としてのベースはすっごくいいですよ。ちゃんとやれば700psぐらいまでチューンしてもぜんぜん破綻しないですし。あと、80は格好もいいですよね。

伊達軍曹
伊達軍曹

押忍。では3位のスバル WRXは?

本田
Hot Version 本田編集長

WRX系はねえ……無理してでも「STI」とか「S○○○」を買わないとダメですね。普通のWRXとの差がすっごく激しいんですよ。まあそのへんの道路を60km/hぐらいまでビュッと加速して、また信号で止まって、みたいな使い方だったらそんなに変わりません。

でもいい感じのペースでワインディングを走りたいなら、STIのパーツが付いてるやつの方が「狙ったところ」に行けるんです。パーツがいいというか、セットアップがちゃんとできてるんですよね。

伊達軍曹
伊達軍曹

そういうものでしたか……。では次、NDこと現行型マツダ ロードスター。

本田
Hot Version 本田編集長

これはねえ……ダメですよ。

伊達軍曹
伊達軍曹

ダ、ダメですか!

本田
Hot Version 本田編集長

だって、NC(先代マツダ ロードスター)より遅い新型をリリースしちゃダメでしょ? 排気量が2Lから1.5Lになったとしても、それでもNCの2Lより速いっていうなら「おっ、カッコいいじゃん!」って話になりますけど……。

あと、NDは足回りもふにゃふにゃですよね。先代NCはRX-8と共通のサスペンションとかが付いてましたから、強化してやればそこそこ良くなったんですけど。まあNDはスポーツカーというよりは「ステキな乗用車」ですね、私に言わせれば。

伊達軍曹
伊達軍曹

なるほど……ご意見として了解であります。では気を取り直して次、マツダ ロードスターRF……はNDとほとんど同じなので省略して、日産 スカイラインGT-R(33型)!

本田
Hot Version 本田編集長

33型GT-Rはねえ、僕がやってた「ベストモータリング」で広報車両に関するモロモロがあったわけですが、まあいい車ですよ。特にアクティブLSD付きのアテーサ(電子制御スプリット4WD)はR32時代と比べて格段に良くなりましたし。

このところ中古車相場は上昇してますが、まだ比較的安いと言えば安いですから、ちょっとチューニングしてサーキットで遊ぶには最高の1台だと思いますよ。

伊達軍曹
伊達軍曹

押忍、了解です。その他、ランク入りしている車種のなかで本田編集長的に気になるモデルはありますか?

本田
Hot Version 本田編集長

うん、9位のホンダ S2000。これは「持っておきたい車」ですよね。僕は2L版も2.2L版もマイカーとして持ってますよ。ただ、2L版の方が高回転型だからマニア受けして、相場も高いんですが、2.2L版の方がボディもサスペンションも洗練されてるんですよ。ぜんぜん乗りやすくなってる。

ただしエンジンは、2L版は9000rpmまで回せるのに対して2.2L版は8000rpmまでしか回せない。でもVTECがハイカムに切り替わるポイントはどちらも6000rpmなんですよ。となると2.2Lの方は、ハイカムに切り替わってからの「おいしいゾーン」が2000回転分しかないってことになりますよね?

そこが2.2L版の残念なところなんですが、でも2.2LのVTECポイントを5000rpmぐらいまで落とせるアフターパーツがちゃんとあるんです。それを付けてやれば、2.2Lエンジンでしばしばいわれる「物足りなさ」みたいなものはまったくなくなりますよ。

>ホンダ S2000 ▲ホンダ S2000
伊達軍曹
伊達軍曹

なるほどぉ……。自分、個人的にはチューニングってほとんど興味なかったんですが、そういう話を聞くとがぜん興味が出てきますね。

本田
Hot Version 本田編集長

うん。原型をとどめないような極端すぎるチューニングとかもまぁ「チューニング」の一種なのかもしれませんが、なんていうのかな、その車のウイークポイントを正しく知って、そこをちょこっと修正してあげるぐらいのチューンが、いちばん楽しくていいものだと思いますよ。

僕が今日ここに乗ってきた車、社用車のミニ クーパーS コンバーチブルは回生ブレーキ(減速時のエネルギーを電力に変え、減速しつつ発電する仕組み)が付いてるんですが、純正のブレーキパッドって、回生ブレーキなしのミニと同じなんですよ。それだとブレーキング時のタッチがどう考えても合わないですよね。

そこで僕がやったチューニングは、クーパーSの回生の入り方に合った制動具合になるようなブレーキパッドがチューニングメーカー各社が出てるので、それに交換したんです。だから今は、ガクンとはならないでスッと止まれますよ。

Hot Version 本田編集長
伊達軍曹
伊達軍曹

チューニングっていうと、自分みたいな門外漢は「竹ヤリ出っ歯の改造車で初日の出暴走!」みたいなイメージがあったんですが、そうではないんですね……。

本田
Hot Version 本田編集長

まああれはあれでチューニングの一種なのかもしれませんが(笑)、本来の意味とは違いますよね。

例えば、三菱のランサー エボリューションは、エンジンパワーを上げるチューニングをすれば確かに速くはなりますが、純正サスペンションと純正装着タイヤじゃないと、あの「筑波サーキットの最終コーナーをゼロカウンターでイケる」という走りはできなくなっちゃいます。

また逆にホンダ S660は、本当にチューニングのしがいがある車です。軽自動車としては考えられないほど長いサスペンションアームが付いてて、コーナリング性能はもともと相当高いんですが、いろいろなメーカーさんが出しているパーツを使ってチューンしてあげれば、もっともっとコーナリング性能は向上しますよ。

なにせ正しくチューニングされたS660の筑波サーキットでのラップタイムって1分8秒ぐらいなんですが、それってR32型スカイラインGT-Rの新車時のタイムとほとんど同じですから(笑)。

>ホンダ S660 ▲ホンダ S660
伊達軍曹
伊達軍曹

そ、そうなんですか?

本田
Hot Version 本田編集長

とにかくね、車って本当に楽しいモノですよ。機械なんだけど、他の機械とはどこかちょっと違いますよね。なぜか知らないけど愛着がもてる。若い人はぜひそんな楽しい機械を手に入れて、腕を磨いて、そして必要であればチューニングもしながら、いろいろと楽しんでほしいものですね。

Hot Version 本田編集長 ▲本田編集長のスポーツカーへの愛情とチューニングへの考え方、情熱、業界ウラ話に一同聞き入ってしまうの図
Hot Version 本田編集長 ▲タイヤについて厳しめな意見を言ったものの「シビックタイプRはいい車ですよ。これホント早いですからね。え? 中古車も売れるの早いのか……。すごいなタイプRは(笑)」と本田編集長
文/伊達軍曹 写真/篠原晃一、ホンダ