シトロエン サクソ▲人生初の車がシトロエン サクソだったというぺろたんさん(左から2番目)と、そのご家族。お母さま(一番右)も、ベルギーで購入したレア物のシトロエン サクソを船便で日本まで運び、愛用している

サクソばかりを乗り継ぐ息子と、激レアサクソに乗る母

以前、ここカーセンサーnetにて「人生初の車が輸入車で何が悪い?」と題したシリーズ物を何本か書かせていただいた。

だがそれは中年である筆者が(妄想の中で)若者と対話するという形式を取っていたため、今から思えば今いち的はずれな内容だった可能性もなくはない。

「それはマズいかも!」と思った筆者はとあるイベント会場に赴き、「人生初の車は輸入車でした」という若者と、妄想ではなくリアルに対話してみることにした。

例えばこの人、98年式シトロエン サクソVTSでマイカーデビューを果たし、その後は「サクソ→サクソ→シトロエンC2 →ジャガーXJ→シトロエン シャンソン(シトロエン サクソ初期モデルの日本名)→サクソ」という、ほぼシトロエン サクソだらけの車人生を送ってきた愛知県の22歳、ぺろたんさんと、そのご家族である。

当日はなかなかシブいシトロエン サクソに乗っていたぺろたんさんだったが、同会場に来ていたお母さま(通称ぺろたん母)もシトロエン サクソにお乗りで、しかもそれは「日本でただ1台」だという5ドア+3速ATの左ハンドル版。

ぺろたんさんおよびぺろたん母さんはなぜそこまでシトロエン サクソという車にこだわるのか? そしてそもそも本稿の主題である「人生初の車が輸入車で何が悪い?」というイシューについて、経験者としてどうお考えなのか?

ご本人たちの口から語ってもらうことにしよう。

幼少期を過ごしたベルギーで刷り込まれたシトロエン サクソの魅力

シトロエン サクソ▲最初の車がシトロエン サクソで、その後も基本的にはサクソばかりを乗り継いでいるぺろたんさん


はじめまして。Twitterなどでは「ぺろたん」と名乗っている愛知県の大学4年生です。

まず初めに、なぜ僕がいきなりシトロエン サクソという輸入車(フランス車)から車生活を始めて、その後も基本的にはサクソばかり何台も買ってきたかについてご説明します。

人生初の車としてシトロエン サクソVTSを買ったのは、刷り込みというか母の影響というか、とにかく僕にとってサクソは「実家」みたいな感じで落ち着く車だからです。他の車だとどうにもしっくりこないんですよね。

話は15年以上前にさかのぼるのですが、僕が子供だった頃、我が家は父の仕事の関係で3年間ベルギーに住んでいました。

で、保育園の送迎や買い物などのために現地で母が買ったのが「5ドア+3速ATのシトロエン サクソ」という激レアモデルだったんです。向こう(ベルギー)で走ってる車はほとんどがMTなんで、AT車っていうのは激レアな存在なんですよね。

で、そうこうするうちに我が家は日本に帰ることになったんですが、その5ドアのサクソは現地で処分するのではなく、船便で日本まで運んだんです。母が今後も乗り続けるために。

ぺろたん母:と言いますのもわたし、「左ハンドルのAT車」しか運転できないという特異体質なんです……。そして日本でまた何か左ハンドル車を新しく買うよりも、お船に載せて持って帰った方が安いということもわかりましたので。

シトロエン サクソ▲日本にあるのは1台のみだという「左ハンドル+3速AT+5ドアのシトロエン サクソ」と、そのオーナーであるぺろたん母さん
シトロエン サクソ▲ベルギー在住時代、実際に付けていたライセンスプレート


まぁその後、日本の公道で走れる状態にするには部品代とか手続きにけっこうな追加費用がかかることが判明したそうなんですが(笑)。それはさておき、保育園の頃からずっと乗ってたサクソという大好きな車にその後も乗り続けた関係で、中学生の頃にはすでに「免許取ったらサクソを買う」と決めてました。

で、「欲しい欲しい!」と言い続けていたら、大学の入学祝いとしておばあちゃんが買ってくれたのが最初のサクソ、98年式のVTSです。

その後は、若気の至りで潰してしまったり、友人が廃車にしたやつを超格安で買い取って、超シャコタンにして通学していたら大学から「出禁」を食らうなどいろいろあったため、気がついたら何台も乗り継いできました。

ネットオークションに良さげなサクソが出てると、ついつい買っちゃうんですよね。好きだから……。

シトロエン サクソ▲もちろん親子ではあるのだが、どこか友人同士のようでもあるぺろたん&ぺろたん母の両氏

その気になれば「やりくり」のための方法はいくらでも見つかる

で、お尋ねの「人生初の車が輸入車だと何か問題あるのか?」という話ですが、僕は「何の問題もない」と思っています。

乗りたい車があるのであれば、それに乗れる方法を探せばいいだけですし、その「方法」って実はたくさんあるんですよ。

まずお金ですが、僕の場合はアルバイトをかけもちすることで工面しています。最初のサクソは先ほど言ったとおり入学祝いとしておばあちゃんに買ってもらったわけですが、その後のやつは全部自分で買ってます。いわゆる親ローンもないですし。

平日はちゃんと学校に行ってますが、土日は焼肉屋さんと車屋さんで朝9時から夜11時まで、ダブルヘッダーでアルバイトしてるんです。はたから見れば大変そうに見えるかもしれませんが、本人としては「好きなモノのため」なので、ぜんぜん苦じゃないんですよね。

あと重要になるのが「人脈」だと思います。僕の場合は車屋さんでアルバイトをしてるからという部分もありますが、お店でも人でもとにかく「出会い」があれば、そこから「有益な情報」って流れてくるんですよ。部品取り車のこととか、なるべく安く整備するためのいろいろな方法とか。

そういった「車人脈」を自分から積極的に作るように心がければ、お金のことでもパーツのことでも「上手にやりくりするための情報」って必ず得られるものです。なので、過剰なまでに心配する必要はないんじゃないかと思いますね。

あと、僕が乗ってるような輸入車って確かにあちこちがたまに壊れたりはするんですが、「壊れる場所」ってあらかじめだいたいわかってるんですよ。それこそ先ほど言った「人脈」を通じてやってくる情報もありますし。

あらかじめわかってますから、対策を講じることができるし、壊れてしまった場合でもビビることがない。どこどこのパーツを替えてあげればすぐ直るとか、そしてそのパーツも決して高いものではない(あるいは安く入手する方法もある)ということがわかってるわけですから、怖くないんですよ。

なので、もしも「最初から輸入車に乗りたいんですが?」と問われたなら、「いいんじゃないですか? 楽しいですよ!」と答えるほかないですよね。あとは……母さんから何かありますか?

ぺろたん母:そうですねえ……昔は輸入車っていうと「お金持ちの子がベンツに乗ってる」みたいな感じでしたが、今はもうそんな時代じゃないですよね? 安い輸入車もたくさんあるし、カワイイのもいっぱい出てるし。だから若い女の子とかも、軽自動車じゃなくてフィアット 500とかにどんどん乗ればいいのに、って思います。とにかく自分の意思をしっかりもって、自分自身の人生を謳歌してほしいですね。母は、常々そう思っています。

シトロエン サクソ▲「サクソによるスポーツドライビングも嗜んでます」というぺろたんさんだけあって、運転席シートはフルバケットタイプに交換されている
文/伊達軍曹、写真/稲葉 真
伊達軍曹(だてぐんそう)

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。