巨匠マルチェロ・ガンディーニがデザインを担当し、近未来的なデザインで発表されたスーパーカーの象徴とも言える存在。プロトタイプ的なLP500、スーパーカー世代を熱くしたLP400、323台が生産されたLP500Sと進化し、ランボルギーニ創立25周年にあたる1988年に登場したのが25thアニバーサリーモデルとなる。1990年にディアブロへバトンタッチするまで生産された、カウンタックの名前を持つ最後のモデル。 巨匠マルチェロ・ガンディーニがデザインを担当し、近未来的なデザインで発表されたスーパーカーの象徴とも言える存在。プロトタイプ的なLP500、スーパーカー世代を熱くしたLP400、323台が生産されたLP500Sと進化し、ランボルギーニ創立25周年にあたる1988年に登場したのが25thアニバーサリーモデルとなる。1990年にディアブロへバトンタッチするまで生産された、カウンタックの名前を持つ最後のモデル。

クラシックカーになる直前の80、90年代の車たちにもこれから価値が上がる車、クラシックカー予備軍は多数存在する。そんな車たちの登場背景、歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを探ってみたい

カウンタックはスーパーカーの親みたいな存在だね

EDGE:さて、今回はスーパーカー特集ということで、ランボルギーニ・カウンタックにしようと思ってるんですよ。

松本:王道中の王道だね。良さそうな個体はあったの?

EDGE:横浜にあったんですよ。やりたいと思っていたけどカウンタックは撮影したことなかったですよね?

松本:そうだね。僕はカウンタックとミウラを環八の浄水場前で実際に見た時、神様と遭遇したような気持ちになったもんだよ。カメラなんか持ってないから必死に目に焼き付けた。それほど憧れの存在なんだ。その時はオレンジ色だったかな。ミウラはイエロー。カウンタックは畳が走っているみたいに平べったかった。何度か環八を行ったり来たりして、その音にしびれたよ。

EDGE:当時は走ってる姿も見られたんですね、凄いな…。そもそもカウンタックって初めからあんなデザインだったんですか? 脈絡なく生まれたような感じですけど。

松本:うーん。そうでもないんじゃないかな。僕が大好きなランボルギーニ・エスパーダなんかはかなり未来チックだけど、その線を考えるとカウンタックもあり得ない話じゃないと思うよ。まあ確かに1971年のジュネーブショーで発表された時は、あまりに未来的すぎて量産するとは誰もが思わなかったんだけどね。

EDGE:カウンタックという名前も直感的ですよね?(笑)

松本:有名な話だね。イタリア語で「凄い」を意味する言葉が「クンタッチ」なんだけど、これが車名になった。しかしランボルギーニの本拠地であるサンタアガタはモデナとボローニャの真ん中に位置しているんだけど、この辺ではクンタッチという方言ではないらしんだ。もう少し北にあるピエモンテ州の訛りだそうなんだよね。プロトタイプはトリノにほど近いベルトーネのアトリエで見せたわけだから納得のいく話だね。

EDGE:こちらが今日の車です。25thアニバーサリーモデル。これってカウンタックの最終モデルなんですか?

松本:1990年からディアブロが発表されるからカウンタックという名においては最後になるね。1971年に発表して実際に顧客の手に渡るには少し時間がかかったとはいえ19年間作り続けたわけだ。不具合が出ては改良をし、最終形になったのが今回見せていただくモデルだね。

EDGE:実際に見ると低いし、やっぱりオーラが違いますね。

松本:全幅は2mだから当時としてはかなりワイドだよね。LP400と全高は確かほとんど変わらないと思ったけど、最終モデルっていうこともあって装飾的な部分が多いから大きく見えるね。この跳ね上げ式のドア。キャビンが恐ろしく奥にある。チューブラフレームだからね。どうしてもロッカーパネルを幅広く作って剛性の確保をすることになる。なんたって300km/hオーバーで走らせるんだから。

EDGE:水を差すようですが、実際は300km/hも出ないというじゃないですか。いいんですか。

松本:いいんです。当時は315km/hと言えばそうなんだよ。メーカーを信じきっていた時代だからね。カウンタックは重量だって1000kg程度だったけど、実際はもっと重いんじゃないかなぁ。乗るとそんな感じがするよね。でも関係ないんだ。なぜならスーパーカーだから(笑)。ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフトと12気筒でもう文句ないんだよ。

EDGE:そういうもんなんですね。

松本:そういうものなんだよ。夢のある車だからね。ところでカウンタック・アニバーサリーは目の前のモデルを見ても分かると思うけど、サイドのNACAダクトがボディと同色になってるでしょ。カウンタックのプロトタイプはこれがなかったんだよ。その後の公道試験で冷却問題が発生して量産ではこの象徴的なNACAをつや消しブラックに塗って逆手に取ってデザインの一部としたんだ。生まれ変わるタイミングでそうしたのかもね。それとシートもパワーシートになってポジションが取りやすくなったんじゃないかな。クラッチ踏むと分かるけど重いんだよ。今なら勘弁してほしいよ(笑)。個人的に興味があるのはこの「OZ」の3ピースのホイールなんだ。アニバーサリーだけのホイールでリムはステンレスだからね。

EDGE:そうなんですか。ホント変なところに気づきますね。

松本:しかし凄いデザインだよ、本当に。こういったモデルがあったからこそ他のメーカーもスーパーカーには突飛なデザインが許されるんだよ。カウンタックはスーパーカーの親みたいな存在かもね。

LP400 リア
LP400 サイド
LP400 エンジン
LP400 シート
text/松本英雄
photo/岡村昌宏


※カーセンサーEDGE 2016年11月号(2016年09月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています