▲シトロエンの上級シリーズであるDSラインのコンパクトカー、シトロエン DS3。その比較的安めな中古車こそ「最強の実用車だ!」という筆者ですが、そのココロは? ▲シトロエンの上級シリーズであるDSラインのコンパクトカー、シトロエン DS3。その比較的安めな中古車こそ「最強の実用車だ!」という筆者ですが、そのココロは?

「高級である」と「使いやすい」はちょっと違う

40代半ばをとうに過ぎた大年寄の筆者にも、多少の「婦女子にモテたい!」という野望ないしは煩悩はある。それもあって1年ほど前、某イタリー高級ブランドの長財布を購入した。詳しくは知らぬが「男のオシャレは靴とカバン、そして財布から」とよく聞くし、フリーライターをやっていると「フリーター」に間違われることもしばしばなので、「そうじゃねえぞ!」ということを示す軍事プレゼンスの意味でも、高級大型長財布が必要だったのだ。

しかし実際にそれを使い始めると、基本的にはTシャツ+短パン一丁で暮らす自分のライフスタイルにおいては著しく使いづらいことが判明。気がついてみれば、日々使う財布は10年ほど前から使用している薄手で軽量な安物2つ折りに再び落ち着いてしまった。

それを通じて強く思ったのが、「結局のところ『良い(高級)』と『使いやすい』の間には、さほど強い相関関係はないのだな」ということだった。

もちろんこれは少々ざっくり過ぎる考え方であり、世の中には「老舗の高級品だからこそ、非常に使いやすいようにできている」というプロダクツもあるだろう。しかし、このざっくりとした考えは「ある程度の真実」であるとは思っている。

例えばフライパンもそうだ。「男の料理!」というと、ついつい高額で本格的な重量級フライパンを東急ハンズなどで買いたくなるが、実は一番使いやすいのは、そこらのスーパーで数百円とか1000円台ぐらいで売ってる安手のテフロンフライパンだ。機能的には十分以上で、なおかつ軽量コンパクトなため、料理をしていて実に疲れにくいのである。使っていると比較的早めにボロくなるが(とはいえ数カ月程度でダメになるわけではない)、そもそもかなり安いので、そうなったらとっとと買い替えればいいだけの話。最高である。

▲右が見栄を張って購入した某イタリーブランドの長財布。が、結局はタンスの肥やしに。左は、今やビーズの部分がほつれてしまった安手の2つ折り財布だが、これが実は(筆者にとっては)かなり使いやすい ▲右が見栄を張って購入した某イタリーブランドの長財布。が、結局はタンスの肥やしに。左は、今やビーズの部分がほつれてしまった安手の2つ折り財布だが、これが実は(筆者にとっては)かなり使いやすい

結局、普段づかいに向いてるのは「軽量・小型でちょっとだけボロい物」だ

つまるところ、「趣味性」や「軍事プレゼンス」までを含めて物事を考えた場合は別だが、「普段づかいにおいて本当に使いやすいプロダクツとは?」ということだけを考えるなら、答えは「軽量かつコンパクトで、多少手荒く使っても気兼ねしない比較的安価で少々ボロい物」なのだ。

そしてこの考え方は「車」にも当てはまる。

もちろん、常にデザインもろ出しで公道を走ったり、自宅車庫に「飾っておく」ことになる車を、ポッケやカバンにしまう財布や、自宅台所だけで使うフライパンと完全に同列に語ることはできない。しかし、こと「本当に使いやすいかどうか?(日々使い倒せるかどうか?)」だけに焦点を当てるなら、車もやはり「軽量・コンパクト・比較的安価・少々ボロい」が鍵となるのだ。

で、この考え方に基づき「本当の意味で普段づかいしやすい車はどれか?」を長考してみたところ、なんと「ホンダ フィットとかの中古車」という、長きにわたり輸入中古車評論家/愛好家を自称している筆者としては驚愕の結論になってしまった。

……まぁそれもぜんぜん悪くないが、前述のように「車は常にデザインもろ出しで公道を走る存在である」ということを考えると、フィット愛好家の方には大変申し訳ないが、もうちょっと洒落てるやつの方が良い気もしないではないので、再び長考に入ってみた。

すると出た答えは「車両価格160万円以下ぐらいで、かつ走行4万km以下ぐらいのシトロエン DS3」であった。

シトロエン DS3とは、近年のシトロエンの上級シリーズである「DSライン」の初号機として2010年3月に登場したプレミアムコンパクト。細かなグレードはいろいろあるが、大別すると、2014年1月までの前期型は1.6L自然吸気+トルコンATの「シック」と1.6L直噴ターボ+6MTの「スポーツシック」に分かれ、2014年2月以降はシックのパワートレインが3気筒の1.2L自然吸気+2ペダルMTの「ETG5」に変更されている。また2014年6月1日からは、「シトロエンのDSライン」ではなく「DSという名の独立ブランド」にもなっている。

▲シトロエン DS3。写真のボディカラーは「ブラウンヒッコリー」。中古車はボディカラーをオーダーできないが、このように個性的でステキなカラーがいろいろ流通しているのもDS3の魅力の一つ ▲シトロエン DS3。写真のボディカラーは「ブラウンヒッコリー」。中古車はボディカラーをオーダーできないが、このように個性的でステキなカラーがいろいろ流通しているのもDS3の魅力の一つ
▲基本的にはプレーン傾向のデザインだが、随所にシトロエンらしい個性も感じられるDS3のコックピット。写真は本国仕様のスポーツシック ▲基本的にはプレーン傾向のデザインだが、随所にシトロエンらしい個性も感じられるDS3のコックピット。写真は本国仕様のスポーツシック

気軽に使い倒せるのにシュッとしてる。それが中古DS3の魅力!

で、そのDS3の中古車が「普段づかい」には大変素晴らしいわけだ。

スリーサイズは3965×1715×1455mmと程良く小ぶりなため、どんな場所で使っても邪魔にならず、しかし人や荷物を載せるのに難儀するほど小さいわけではない。そして車重1180kg(スポーツシックは1190kg、後期シックは1090kg)と近年の車としてはかなり軽量でもあるため、どのグレードであってもその挙動はすこぶる軽快で気持ちが良い。

で、前述した「車両価格160万円以下ぐらいで、かつ走行4万km以下ぐらいの物件」を狙うとなると、中心となるのは車両価格120万円前後で走行2万~3万kmぐらいのシックになる。その場合の「適度な中古車感」というか、「ビカビカすぎずボロすぎず」なあんばいが道具として非常に心地よい。世間様に対して気後れするほどの中古感はなく、どちらかといえばシュッとしているためパリっぽくもあるのだが、「確かな中古感」は確実にあるため、道具として気兼ねなく使い倒すことができる。そして前期シックという車自体も、決してパワフルではないが、のんびりとした直4エンジンと古典的トルコンATの組み合わせが妙に気持ち良い、隠れた名車でもある。

車両価格で見て150万円前後を出す気があるのなら、直噴ターボ+6MTのスポーツシックを選ぶのもステキだ。まったくの個人的な趣味でいえば「シックで十分じゃね?」とも思うわけだが、ステキな実用グルマであると同時に「ステキなスポーティコンパクト」でもあるDS3スポーツシックも、当然ながらかなり素晴らしい選択となるだろう。

ということで、気楽に使い倒せるのにシュッとしてるシトロエン DS3前期モデルの手頃な中古車は、もちろん唯一ではないだろうが、最高レベルの「実用車」の一つである。そういったジャンルの車に今ご興味がある方は、ぜひ下記の物件リンクをチェックしてみていただきたい。

▲シックとスポーツシックで走りの個性に違いはあるが、どちらを選んでも、小型・軽量なので基本的には軽快なドライブフィールを堪能できるはず。ほんとオススメですよ! ▲シックとスポーツシックで走りの個性に違いはあるが、どちらを選んでも、小型・軽量なので基本的には軽快なドライブフィールを堪能できるはず。ほんとオススメですよ!
text/伊達軍曹
photo/プジョー・シトロエン