スバル車の走りが良い理由……それは専任のテストドライバーがいないから!?
2016/09/14
スバルのテストドライバーは、なんとエンジニアたち
スバルの走りに関しての責任者、藤貫哲郎部長から以前伺った一言。
「テストドライバーって他のメーカーは言うけれど、考えてみたら昔からスバルにはいなんですよね。テストドライバーが……」
なんとスバルでは、昔からエンジニアが試験車両のテストドライブをしている。作り手であるエンジニア自身が車両の状態や変化を感じて理解することで、取り付け部品などの細かな調整や改良につなげているというのだ。データや測定器の波形が良くても乗って感じるのは人間。つまり、作り手の研ぎ澄まされた感覚が大切であり、データばかりに頼る車作りはしていないという。
これだからスバル車の乗り味は良いのだ。しかしこれらも一定の判断基準がなくてはならない。そこで限界走行テストを行えるエンジニアを継続的に育てるためのプロジェクトが、昨年の9月に設立した。
それが『スバルドライビングアカデミー(SDA)』だ。訓練生は各部署から選抜されたエンジニアで構成されている。アカデミーの過酷な訓練を受けたエンジニアはどのようなレベルなのか。またSDAの訓練を体験すべく、栃木にあるスバルのテストコースに赴いた。
SDA訓練生のドライビング技術は高かった!
まずはWRX STIを時速180kmで並走する走行体験。しかも同時に走る3台の車間は一定に保ちながら。これが意外に難しい。バンクではちょっとした車線の違いでも速度が安定しにくく、ハイスピードで車速と車間を一定に保つのは技術が必要だと感じた。運転席をSDAの訓練を受けたエンジニアに譲る。
彼らが操る3台のWRX STIは時速200kmで見事なテールトゥノーズを見せてくれた。その後、高速域からABSで停止させるブレーキテストを体験。頭で分ってはいるが、ABSを利かせっぱなしにしようと思っても、つい無意識にブレーキコントロールをしてしまう。フルブレーキングに慣れているドライバーはABSを利かせるより短い制動距離で車を停止させられるが、この訓練の目的はあくまでもABSを利かせフルブレーキングをすることだ。目的に応じて常に冷静に全開ドライブをし、車両をきちんと評価できるエンジニアの存在はやはり不可欠なのだ。
楽しすぎる車に訓練を忘れ、思わずハッスル!
ジムカーナはBRZで行った。テストコースということで、全開でアタックした。しかし、楽しすぎる車に思わずハッスルしすぎて、挙動を乱しミスコース。続けて行った定常円旋回は、散水で滑りやすくした路面をドリフトコントロールで走り抜ける体験。あまりの暑さでところどころ路面が乾いている所があったとはいえ、ここでもハッスルしてしまい派手なスピンをしてしまった。もちろんSDAのエンジニアはジムカーナ、定常円旋回とも冷静かつ見事な走りを見せていた。よく訓練されていると感心してしまった。
このようにスバル車は、高度なドライビング技術を習得したエンジニアによる、研ぎ澄まされた感覚を駆使して作られているのだ。今回のSDA体験取材で、それが無二のスバルイズムなのだと再確認させてもらった。それにしても、スバルほど自分たちのスタンスを見せてくれる自動車メーカーはない。
歴代モデルはメーカーの歴史そのもの
SDA体験が取材のメインであったものの、僕のハートに刺さったのが、実はプロトタイプも含めストックヤードに整然と並べられていた歴代のスバル車。本当は1台1台ゆっくり見ていたかった。歴代のモデルはメーカーの歴史そのもので、オリジナルのアイデンティティを深く知ることができる。
現代のスバル車のドライビングフィールの味付けは、エンジニアたちによって脈々と受け継がれているのだ。今回の取材であらためて「スバルは車というものをよくわかっているな」と思うのであった。
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