▲威圧的な顔つきをした車ばかりになった昨今、フィアット 500のおとぼけフェイスは貴重な存在? ▲威圧的な顔つきをした車ばかりになった昨今、フィアット 500のおとぼけフェイスは貴重な存在?

軽自動車でさえ「オラオラ顔」になった時代だからこそ光る値千金のスマイル

特に野球ファンということもないのだが(※ただし例外的に東京ヤクルトスワローズの大ファンではある)、お盆期間中はいわゆる「夏の甲子園」というやつをテレビで観るともなしに観ていた。ご承知のとおり東海大相模高校の優勝で終わった同大会だが、観ていて気づいたのは、10年ほど前から始まった「ピンチのときこそ笑顔で!」的なムーブメントが今年も続いていることだった。

笑顔問題については賛否両論あるようだが、われわれ外野が何を言おうと実際に戦うのは選手諸君だ。それゆえ、選手諸君がそうしたいなら別にそれでいいじゃないか……というのが筆者の意見である。それよりも気になったというか思い出したのは、「そういえば“車の顔”から笑顔が消えて久しいよな……」ということだった。

その昔の車は「高性能スポーツモデル=怖い顔つき」「大衆車=優しかったりかわいかったりする顔つき」という場合が多かったように思う。というか「妙に優しい顔つきの高性能スポーツモデル」というのもあった。丸目のポルシェ 911とかアルピーヌ A110とか、ね。

▲時代が違うといえばそれまでだが、そういえば昔はスポーツカーもこんな感じの優しげな顔だったりした。写真は1968年のポルシェ 911 L 2.0クーペ ▲時代が違うといえばそれまでだが、そういえば昔はスポーツカーもこんな感じの優しげな顔だったりした。写真は1968年のポルシェ 911 L 2.0クーペ

しかし昨今は、ごく一部を除くほとんどのクルマが「怒ってるような威圧的顔だち」をしている。

格ウンヌンというのも今どきナンセンスな話だが、まぁそれでも言ってしまうと、それなりの格を持っている車が威圧的な顔立ちをしているならまだわかる。しかし直近では軽自動車でさえ「オラオラどけよ!」とでも言いたげな顔をしている。優しい顔立ちの軽自動車が欲しい場合は、妙に女性向けに企画された、やたらとファンシーなモデルを選ばざるを得ない状況だ(いや新型ラパンだけは筆者のようなおっさんが乗っても似合うと思いますけどね)。

それゆえそういった車、つまり「やたらとエラソーで怒ってる感じの顔つきを持つ車」を好まない場合は、「古い車」を選ばざるを得ない。80年代か、せいぜい90年代までのモデルであれば、それなりに高性能であっても「決して怒ってはいない顔」をしている車はたくさんあるものだ。

まぁ筆者などはそういったネオクラシック(最近ではヤングタイマーと呼ぶのか?)がそもそも大好物なのでノープロブレムだが、なかには「古い車は苦手で……」という人もいるだろう。そういった人が「怒ってない顔」の輸入車を買いたい場合は、事実上フィアット 500の一択となるのかもしれない。

▲08年3月に登場した現代版フィアット 500。導入時のエンジンは1.2Lの直4のみだったが、途中から0.9L 2気筒の「ツインエア」を追加した。本国では今年7月、ビッグマイナーチェンジ版が登場している ▲08年3月に登場した現代版フィアット 500。導入時のエンジンは1.2Lの直4のみだったが、途中から0.9L 2気筒の「ツインエア」を追加した。本国では今年7月、ビッグマイナーチェンジ版が登場している

1950年代に登場した往年のフィアット 500をモチーフとする現代版500は、かなりステキな車だ。基本的にはファンシー路線のデザインだが、男性が乗るのを躊躇するほど過剰にファンシーなわけでは決してなく、ユニセックスかつグローバルな「カワイイ」の範疇に収まっている。そして乗ってみてもその挙動や全体のニュアンスは意外とタイトであり、運転好きな硬派男性ドライバーでも十分以上に納得できるものがある。素晴らしい。

唯一の問題は、シングルクラッチ式のセミATである「デュアロジック」が、ややギクシャクとした感触を伴う……ということだろう。

「変速時にアクセルを抜く」という操作をすれば実はさほどギクシャクせずにイケるのだが、人間というのは不思議なもので、MT車の操作をまったく苦にしない人でも、ひとたびAT車のステアリングを握ると途端にいろいろなことがめんどくさくなる。それゆえ、変速時にいちいちアクセルを抜くのも億劫でたまらない……という事態になってしまうのだ。

▲シングルクラッチ式のセミATである「デュアロジック」。自動変速モードとなる「Auto」の他、手動変速モードの「MT」を選択することもできる ▲シングルクラッチ式のセミATである「デュアロジック」。自動変速モードとなる「Auto」の他、手動変速モードの「MT」を選択することもできる

デュアロジック問題について、筆者が考える根本的な解決策は以下の3パターンだ。

1. MT仕様を買う
1.2Lの4気筒バージョンでも2気筒のツインエアでも、とにかくMTを買う。それですべて解決、ザッツオールである。

2. ツインエア限定で考える
理由は不明だが(おそらくは重量の関係か?)、ツインエアのデュアロジックはなぜかあまりギクシャクしない。いやちょっとはするのだが、ほとんど気にならない。ということでMTが嫌なら、もしくはMTのフィアット 500は数が少ないため意中の個体が見つからない場合は、ツインエア限定でデュアロジックを探す。完璧ではないかもしれないが、それでこの問題はほぼ解決するだろう。また車そのものの魅力も、4気筒よりツインエアの方が断然上だと個人的には思う。

3. いっそアバルトを選ぶ
フィアット 500よりも圧倒的に強力な「毒サソリ」であるアバルトの500または595という手も有効だ。そもそもMTが多く、そしてATモード付き5速シーケンシャルもフィアット 500のそれよりは断然レスポンスが良い。

▲こちらはフィアットではなくアバルトの500。アバルトはかつて存在したメーカーで、現在ではフィアットの「社内ブランド」として、高性能でスパルタンなモデル各種をリリースしている ▲こちらはフィアットではなくアバルトの500。アバルトはかつて存在したメーカーで、現在ではフィアットの「社内ブランド」として、高性能でスパルタンなモデル各種をリリースしている

上記のどのパターンを採用すべきかは人それぞれだが、いずれにせよ1人でも多くの人が「怒り顔」ではない顔を持つ車、すなわちフィアット 500ないしはアバルト 500などを購入し、ニッポンの道路風景を少しでも明るいものに変えてくれるなら、筆者としても大変喜ばしく思う。

ということで今回のわたくしからのオススメはずばり「フィアット 500およびアバルト 500/595/695」だ。

  • Search the selection!
  • Car:フィアット 500&アバルト 500/595/695
  • Conditions:修復歴なし&総額表示あり
text/伊達軍曹