▲2001年10月から2011年3月までの長きにわたり販売されたアルファロメオ アルファ147 ▲2001年10月から2011年3月までの長きにわたり販売されたアルファロメオ アルファ147

「ちょっとした和定食」のような、毎日食べたい旨さと軽さ

個人的な嗜好に基づく話で恐縮だが、最近とみに「起きて半畳寝て一畳」というミニマリズム的価値観に惹かれている。若い頃は筆者も人並みに栄華のようなものを追いかけたが、40代も後半になるとさすがに「人生、本当に大切なもの以外はある意味どうでもいい。そして“本当に大切なもの”の数は意外と少ない」ということに気づく。そのため自家用車を選ぶ際の視点も「本当にミニマルな(最小限な)感じのもので全然十分」という感じに変化してきたのだ。

そういった価値観に基づき先日、自家用車を某スポーツカーから旧型ルノー カングーの5MT仕様に替えたわけだが、道具車としては最強なカングーも、道具車であるがゆえに若干もっさりしている部分もあることは否めない。筆者は気に入っているが、「ミニマルでありながら、スポーティでもあることを望む」という人には正直あまり向かないだろう。

では、そういった人に向いている車とは何だろうか……と考えたとき、いの一番に浮かぶのは先日久しぶりに試乗したアルファロメオのアルファ147だ。

▲筆者の知人が所有するアルファ147 2.0ツインスパーク セレスピード。総額40万円級の格安車だ ▲筆者の知人が所有するアルファ147 2.0ツインスパーク セレスピード。総額40万円級の格安車だ

その直前にAMGの高年式モデルに試乗していたからという理由もあるだろうが、アルファ147はまさにミニマルスポーツの最高傑作だと感じられた。いや「最高傑作」と断言していいかどうかは見識不足により不明だが、少なくとも傑作ではあった。

超豪華フレンチ・ディナーのような最新AMGに対し、アルファ147は「ちょっとした和定食」だ。たまに食べる分には超豪華フレンチ・ディナーも素晴らしいが、毎日食べるのは(個人的には)勘弁願いたい。やはり三度三度食べるごはんとしては、比較的簡単で飾らない、胃にもたれない、でもそれでいてグッとくる旨さがある、ちょっとした和定食のようなものが好ましいのだ。ミニマリスト兼おっさんとしては。

そして久しぶりに乗ったアルファ147は、まさにそんな車だった。

AMGのような豪華さやクラス感は正直皆無だが、飾らない美しさが内外装の随所にあふれている。そしてかさばらない小ぶりなボディは、アルファロメオならではの痛快すぎるエンジンによって(気分的には)ロケットのように加速される。で、アルファ特有の「ハンドルを切る前に曲がり始める」とすら感じさせるクイックなハンドリング特性により、(気分的には)レーシングカーのように曲がる。「……これ以上の何が必要なんだ?」というのが、試乗を終えての率直な感想だ。ちなみにそのアルファ147は個人所有車で、オーナー氏に聞くと購入価格はせいぜい40万円ほどだったとか。……価格もミニマルだ。

ということでミニマリズム的スポーティカーを求める人にはアルファ147を熱烈推奨したいわけだが、気になるのが「セレスピード問題」だ。

▲2ペダルMTである「セレスピード」のシステム図。故障さえなければなかなかステキな変速機だが…… ▲2ペダルMTである「セレスピード」のシステム図。故障さえなければなかなかステキな変速機だが……

カーセンサーEDGE.net読者には説明不要だろうが、セレスピードというのはアルファロメオが採用していた電子制御クラッチ付きのセミAT(シングルクラッチ式2ペダルMT)のこと。「ATモード付きのMT」といった構造のトランスミッションだが、これの初期型は正直けっこう故障が多い。ごく普通に作動していても、あるとき突然リバースに入らなくなったり、あるいは妙に時間がかかったり、シフトアップしようとしてもなぜかニュートラルになってしまったり……というのがよくある症状だ。

で、その修理にはけっこうな部品代と工賃がかかる。正確なところは各自ディーラーや専門工場などでお調べいただきたいが、おおむね20万円ぐらいと思っておけばほぼ間違いないだろう。この問題がネックとなり、アルファ147セレスピードは「いい車なんだけど、万人にオススメするわけには……」的な立ち位置に落ち着いてしまっている。

この問題に関する対処法は、筆者が思うに二つある。一つは、「そもそもセレスピードを選ばない」ということだ。「市場にあるアルファ147はセレだらけ」というならさておき、実際は本稿執筆日時点でセレスピードが190台に対して5MTが73台。確かにセレの方が圧倒的に多いが、5MTも探せないレベルでは全然ない。MTの運転が苦にならないのであれば(まぁアルファを選ぼうという人でそういう人はいないとは思うが)、四の五の言わずに5MTを買えばいいのだ。それで解決、ザッツオールである。

▲そこそこの台数が流通している5MT仕様。これであれば通常の点検と消耗部品の交換だけでOKなはず ▲そこそこの台数が流通している5MT仕様。これであれば通常の点検と消耗部品の交換だけでOKなはず

もう一つの対処法は「セレスピードの修理代コミで物事を考える」というやり方だ。

例えばだが支払総額60万円のアルファ147セレスピードがあったとして、それを買う際に、60万円ではなく「これは80万円の車なんだ」と無理やり思い込むのである。そして思い込んでも実際に支払うお金は60万円なので、結果として20万円が手元というか脳内に残る。で、もしもセレが逝った場合にはその20万円を躊躇なく投入する。しかし、もしも所有期間中(2年ぐらいだろうか?)幸運にもセレが逝かなかったなら、その20万円は自分の好きなように使う……というのが筆者が推奨する第二の解決策である。

個人的には、アルファロメオは147に限らずMTを買うに限ると思っているが、何らかの事情によりオートマチックを選ばざるを得ないのだとしたら、ぜひこの「脳内プライス変換術」を使っていただきたい。そして「ミニマルなスポーティカー」がある生活を存分に楽しんでいただきたいと、切に願っている。

ということで今回のわたくしからのオススメは、ずばり「アルファ147」だ。

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  • Car:アルファロメオ アルファ147
  • Conditions:修復歴なし&総額50万円以下(※総額50万円を超えるプランが用意されている場合があります)
text/伊達軍曹