※徳大寺有恒氏は2014年11月7日に他界されました。日本の自動車業界へ多大な貢献をされた氏の功績を記録し、その知見を後世に伝えるべく、この記事は、約5年にわたり氏に監修いただいた連載「VINTAGE EDGE」をWEB用に再構成し掲載したものです。

▲1959年から2000年まで生産された世界的な名車。水冷4気筒エンジンを横置きにし、トランスミッションをエンジン下部に収めるなど、当時としては画期的なレイアウトを採用し、小型ながら4人が乗れる実用性を実現。開発者のイシゴニスの狙いどおり、そのコンセプトと形、サイズは世界から受け入れられた。また、日本ではミニクーパーの名前で呼ばれることが多いが、ミニクーパーとはミニをベースにジョン・クーパーがスペシャルモデルとして開発したスポーツモデルのことであり、スタンダードのミニとは似て非なるものである 1959年から2000年まで生産された世界的な名車。水冷4気筒エンジンを横置きにし、トランスミッションをエンジン下部に収めるなど、当時としては画期的なレイアウトを採用し、小型ながら4人が乗れる実用性を実現。開発者のイシゴニスの狙いどおり、そのコンセプトと形、サイズは世界から受け入れられた。また、日本ではミニクーパーの名前で呼ばれることが多いが、ミニクーパーとはミニをベースにジョン・クーパーがスペシャルモデルとして開発したスポーツモデルのことであり、スタンダードのミニとは似て非なるものである

今でも色あせない世界的名車の魅力

松本 今月号のEDGEはBMW特集ですが、BMWのなかでも“NEWミニ”は調子が良いですよね。
徳大寺 我が家でもかみさんが乗ってるけど、今ある新車で小型ながら作りがハイクオリティなのはNEWミニくらいだと思う。でもそれも往年のオリジナルミニがあったからこそだからなぁ。
松本 そうですね。オリジナルミニはイギリスのキッチュなイメージを日本に植え付けて、半世紀にわたって語られていますね。
徳大寺 日本の文化と道路事情に合っていて可愛らしいし、乗ればキビキビと走って楽しい。1959年から作られたが、日本車がいかに遅れていたかを痛感したものだよ。特にクーパーSは速かった。
松本 ミニを見ると「ミニクーパーだ!」と言う人がいるほどクーパーの名前は浸透していましたね。
徳大寺 そう。日本だけなんだけど勘違いしていたね。当時、60年代にミニクーパーとクーパーSを乗り比べたが、クーパーSの速さには目が覚めた。しかも1275㏄のクーパーSはディスクブレーキの径が大きくて相当な威力があった。いま乗っても相当速いだろうな。
松本 車重が650kgに満たないで75馬力ですから速いわけですよね。僕も20年程前に乗って、こんなに小さくて速い車はなかなかないと思いました。今回のビンテージエッジはその強烈な印象を刻み込んだ“ミニクーパー1275S”です。1966年式ですからMk1ですね!
徳大寺 ミニはパーツの入手やストックには問題ないから程度が大事になるな。古い車はボディが一番大事。これがダメだといくらお金をかけても満足できない。
松本 はい、確かにそうですね。ドアがきちんと閉まらない車は乗っていて嫌になりますし。今回紹介するクーパーSはかなり程度の良い個体のようですから楽しみです。
徳大寺 ミニクーパー1275S、懐かしいな~。当時、船橋サーキットというのがあってよく行っていたんだが、クーパーSはひとクラス上の車をカモるぐらい速かったんだよ。今でもテクニカルなコース、そう筑波サーキットあたりならまだまだ速いんじゃないか。
松本 ミニを作り出したのは天才エンジニアと呼ばれたアレック・イシゴニスでしたよね? 保守的なイギリスにあって斬新なレイアウトとデザインを採用して、世界中の車好きを魅了するあたりに、彫刻の国ギリシャの血を感じます。
徳大寺 そうだな。天才が作るモノはえてして長く親しまれることが多いんだ。ミニ、チンクエチェント、ビートルもそう。でもミニの素晴らしさは小型ながら4人が快適に乗れて、しかも安定性が良く、トランクに荷物もたっぷり載せられることだ。
松本 意外と後ろにも乗れるんですよね。直進安定性が良好なのとフロントドライブにも関わらずエンジンを車軸前方に搭載することでトラクションを生むことを可能にしたそうです。トランスミッションの上にエンジンが載る、コンパクトなデザインもミニの大きな特徴ですしね。
徳大寺 お、あそこじゃないか? クラシックレンジやEタイプがあるぞ。アーモンドグリーンのクーパーがあるから間違いないだろう。
松本 ここですね。“parc ferme”です。英国車専門店の“ECOSSE CARS”のショールームで、カフェとしても楽しめるそうです。
徳大寺 車も停め易いし車談義に花を咲かすのもいいな。こういうお店は貴重だよ。情報交換のお店だから飲み物を少々高めにしたって来る価値はあると思うよ。(笑)
松本 今日の車はこのグリーンのミニですね。グリルを見るとモーリスミニクーパーSですね。燃料タンクのフィラーキャップが両サイドに2つ付いてますし。
徳大寺 しかしキレイだな~。ボディもしっかりとしてそうだし、フルストリップアウトで板金塗装をやってるね。こりゃお金がかかってる。スライドウインドウは風が入りにくいからこのオプションのバイザーはありがたい存在だな。
松本 このバイザー。三角窓のように使えて走行時は涼しくていいですよね。レトロフィットで取り付けてあるのにとても雰囲気が出ていて、貴重なアイテムですね。
徳大寺 内装もいいよ。ハイバックシートもミニらしい。ブリタックスなんかのセーフティベルトもイカしてるなー。なかなかセンスの良い仕上げだ。英国車にはピカピカのレストアは似合わない、程よさが大事なんだよ。
松本 巨匠、ミニライトのホイールも本物ですよ。
徳大寺 当時の有名なダウントンというチューニングメーカーがオプションで取り付けていたホイールがたしかミニライトだったかな。まぁいずれにしてもこういうお店でそういった話ができるのは幸せなことだよ。自宅から近いから散歩がてらまた来ることにしよう。

モーリス ミニ クーパーS シート
モーリス ミニ クーパーS エンブレム
モーリス ミニ クーパーS エンジン
モーリス ミニ クーパーS リア
モーリス ミニ クーパーS フロントフェンダー

【SPECIFICATIONS】
■全長×全幅×全高:3050×1410×1350(mm)
■車両重量:635kg
■ホイールベース:2030mm
■エンジン:直列4気筒OHV
■総排気量:1275cc
■最高出力:75ps/5800rpm
■最高トルク:11.1kg-m/3000rpm

tefxt/松本英雄 photo/岡村昌宏


※カーセンサーEDGE 2010年7月号(2010年6月10日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています