※徳大寺有恒氏は2014年11月7日に他界されました。日本の自動車業界へ多大な貢献をされた氏の功績を記録し、その知見を後世に伝えるべく、この記事は、約5年にわたり氏に監修いただいた連載「VINTAGE EDGE」をWEB用に再構成し掲載したものです。

▲赤エイを意味するスティングレイの別名を持つ、2代目のコルベット。63年に登場したが最初の1年間だけは「スプリット・ウインドウ」と呼ばれるリアウインドウを持ち、そちらはさらに希少価値が高い。ボディはラダーフレーム構造、C1から受け継いだV8 OHV 5358ccエンジンにチューニングを施し、300馬力、340馬力のキャブレター仕様と、インジェクションの360馬力が存在した。またこの後C5型まで継承されるリトラクタブルヘッドライトを採用したのもC2が最初。コンディションの良いモデルは非常に高値となる 赤エイを意味するスティングレイの別名を持つ、2代目のコルベット。63年に登場したが最初の1年間だけは「スプリット・ウインドウ」と呼ばれるリアウインドウを持ち、そちらはさらに希少価値が高い。ボディはラダーフレーム構造、C1から受け継いだV8 OHV 5358ccエンジンにチューニングを施し、300馬力、340馬力のキャブレター仕様と、インジェクションの360馬力が存在した。またこの後C5型まで継承されるリトラクタブルヘッドライトを採用したのもC2が最初。コンディションの良いモデルは非常に高値となる

本当の意味で良い車。それがビンテージカー

僕は旧い車のブームが近々来るんじゃないかと思っている。これは間違いない。そもそも、もう作ってないんだから珍重して当たり前なんだ。それと30年、40年、もしくはそれ以上前の車は未来があって夢がある乗り物だった。飽和状態で作られている今とは質が違うんじゃないかな。利益一辺倒では心に残る車はやっぱり作れない。

その点、ビンテージと呼ばれる旧い車はいい。今こういうビンテージ物の仕上がった車の金額を見ると、とんでもなく高い金額のように思えるだろう? でも、絶えてしまった技術もたくさん使われていて本当の意味でいい車なわけだから、ある程度は仕方ないとも思う。その分、見てるだけで楽しい。だからビンテージカーを紹介する、こういった連載は大事だし、お店に行くのが楽しみだったりするんだ。

今日見に行く車は1965年の“シボレーコーベット”だって? このコーベットっていう車は凄い車なんだ。アメリカの象徴となる唯一のスポーツカーだからね。しかも量産車初のFRPボディだし、1954年に初期のC1というモデルが生産されたんだけど当時のアメリカの技術力と経済力がうかがえるな。

余談だがGMがいきなりFRPボディの車を生産することができたのは、子会社のFRP成型会社に資金と技術力を惜しみなく投入したからなんだ。だからコーベットはフレームシャシーとプラスチックボディでは世界で一番ノウハウを持っているということになる。

GMという会社は昔は下請けや子会社を育てる会社だった。その子会社の生産ラインは年間2万台の生産能力があったんだ。プラスチックボディ専用でだよ。これは当時としては凄いこと。今でもコーベットは通常のGM車とは全く違う。車好きが納得する車をずっと作っている。最後の良心といっても良いんじゃないかな。

デザインだけでなく機能面も見習うべき点が多い

今日見る1965年式のC2は“スティングレイ”と呼ばれていたんだ。たしか魚のエイという意味だ。C2は初期に作られたスプリットウインドウモデルが珍しいとされているけど、この65年式だって程度の良い個体は珍しい。デザインも個性的なんだ。この個体、色がイイね。

オールペンだけやったそうだけど、元が良くないとここまで程度が良くはならない。内装もオリジナルだろう。信じられないなー。シートもいい感じじゃないか。内装だけじゃなくホイールからサイドのモールディングまで全部オリジナルだ。ドアの閉まりもいいだろう。今のコーベットよりもうんといいよ。

このC2は初代とは違ってクーペを考えてデザインしたものだしな。コーベットでは初めてのリトラクタブルライトもこのモデルだった。ルーフにまで続くドアのウインドウフレームも斬新で、ドライバーの乗り降りがしやすいんだ。こういった細かい配慮は今の車にはないだろう。こういうところを見習わないとな。

こういうショップにどんどん頑張ってもらいたい

ところでこの“エヴィータ”というお店はアメリカ専門じゃないだろう? 見るとメルセデスがたくさん並んでるもんな。メルセデスのパーツの箱があるから分かったよ。古い車ならメルセデスは一番良い。作りがちゃんとしてるからパーツを交換すれば元どおりになるんだ。部品を交換してもなかなか元のとおりにならない車がほとんどだからな(笑)。

個人的にはメルセデスは6.3が好きだな。それとこういった旧い車を面倒見るお店には置いておきたいアイテム、イギリス車なんかも置いてるみたいだな。ここも裏のバックヤードに置いてるみたいだけど、個人的にはMGが好きだね。

とくにMG-B。MG-B・GTだともっといいけど少ないだろうな。MG-Bあたりは部品はあるし壊れにくいし、なんたって大きさも丁度いいんだよな。あれを上手い具合に直してこれから旧い車に乗ろうとしている人にどんどん提案してほしい。車好きとして本当にそう思うよ。

車屋はやっぱりスタッフが車好きでないとダメ。利益重視になるのも分かるけど、やっぱりお店の車に対する愛情が伝わってくるようでないと。エヴィータさんはいいね。こだわりとかが伝わってくる。頑張ってほしいよ。お客を育てること、これができることも大切なことだから。こういうショップがもっとあるといいと思うよ。このページを続けて、こういうお店をこれから見つけ出していけたらいいね。

シボレーコルベット C2 フロント
シボレーコルベット C2 運転席周り
シボレーコルベット C2 ヘッドライト
シボレーコルベット C2 ホイール

【SPECIFICATIONS】
■全長×全幅×全高:4447×1767×1264(mm)
■車両重量:1422kg
■ホイールベース:2489mm
■エンジン:V型8気筒OHV
■総排気量:5350cc


text/徳大寺 有恒
photo/岡村昌宏


※カーセンサーEDGE 2009年11月号(2009年9月11日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています