▲雨天時でも安全に走るうえでなくてはならないワイパー。基本的な構造は誕生時から変わっていないのです ▲雨天時でも安全に走るうえでなくてはならないワイパー。基本的な構造は誕生時から変わっていないのです

変わってないようで、実は進化し続けていたワイパーの歴史

子供の頃、こんなことを言われた人も多いのではないかと思います。

「ワイパーに変わる装置を発明したらノーベル賞がもらえるぞ!」

なぜこのようなことが言われるかというと、性能こそ飛躍的に進化していますが、ガラス面をゴムで拭きとる(厳密にはガラス面に水の膜を作っています)というワイパーの原理は変わっていないからでしょう。

諸説ありますが、自動車用のワイパーが誕生したのは1910年代。トリコ社(アメリカ)の社長が雨の日に車を運転し、前が見えず走行中の自転車にぶつけてしまったことからワイパーを開発したそうです。ただ、このときのワイパーは車内からレバーを手動で動かすタイプでした。これでは動かすと疲れるし、運転にも支障が出ます。

その後真空式ワイパーというものが開発されましたが、エンジン回転数によってワイパーの速度が変わるという欠点がありました。現在使われている電動モーターで動かすワイパーは、1926年にロバート・ボッシュ社(ドイツ)が開発しました。

一定時間ごとに動く間欠式ワイパーは、1964年にロバート・カーンズが特許を申請。その後、各社が製品に間欠ワイパーを採用し始めると、カーンズは特許侵害を訴え、多くの自動車メーカーに対して訴訟を起こしました。

ところで、フロントガラス以外にもワイパーが取り付けられている車を見たことはありますよね?

よく目にするのはリアガラスに付いたリアワイパー。日本車で初めてリアワイパーを装備したのは1972年8月に登場したホンダ シビックGLでした。ヘッドライトのワイパーを初めて装備したモデルはサーブ99(1971年)だそうです。またトヨタは1988年8月にデビューしたマークⅡシリーズの上級グレードに、ドアミラーの視認性を高めるサイドウインドウワイパーを装備しました。日産は初代シーマのドアミラーにワイパーを取り付けます。

現在ではリアワイパー以外は見なくなってしまいました。ただ雨滴を感知して作動したりワイパーアームからウォッシャー液が噴き出すものが開発されるなど、ワイパーの性能は大きく進化しています。2013年には、マクラーレンが超音波で水や泥をはじき飛ばすシステムを開発中という報道もありました。

雨の日に当たり前のように使っているワイパーが今後どのように進化していくのか、楽しみにしていましょう。最後に大切な話を。ワイパーブレードは消耗パーツ。古くなると雨滴をきちんと拭きとれなくなり危険です。ワイパーを使用する機会が多いこの時期、劣化が進んでいたら急いで交換してくださいね。

▲1972年9月に追加設定された初代シビック3ドアGL。電熱線入りリアウインドウとともにウインドウウォッシャー付きリアワイパーが初搭載されました ▲1972年9月に追加設定された初代シビック3ドアGL。電熱線入りリアウインドウとともにウインドウウォッシャー付きリアワイパーが初搭載されました
▲Y31シーマのタイプⅡ系に搭載されたドアミラーワイパー。運転席側ドアミラーの上部にワイパーが付いているのが、この写真でうっすらと確認できます ▲Y31シーマのタイプⅡ系に搭載されたドアミラーワイパー。運転席側ドアミラーの上部にワイパーが付いているのが、この写真でうっすらと確認できます
▲1988年に登場したマークⅡ、クレスタ、チェイサーの上級グレードには世界初のサイドウインドウワイパーがオプション設定されました。このワイパー、かなり衝撃的でした ▲1988年に登場したマークⅡ、クレスタ、チェイサーの上級グレードには世界初のサイドウインドウワイパーがオプション設定されました。このワイパー、かなり衝撃的でした
text/高橋 満(BRIDGE MAN)