※徳大寺有恒氏は2014年11月7日に他界されました。日本の自動車業界へ多大な貢献をされた氏の功績を記録し、その知見を後世に伝えるべく、この記事は、約5年にわたり氏に監修いただいた連載「VINTAGE EDGE」をWEB用に再構成し掲載したものです。

▲1970年から1976年まで生産されたランボルギーニのGTモデル。エスパーダのシャシーを30㎝ほど短くし、車両の設計は当時のチーフエンジニアであったパオロ・スタンツァーニ、デザインはミウラなどと同じくベルトーネに依頼され、チーフデザイナーであったガンディーニが担当した。デビュー時は4L 350馬力の350GTだったが、1972年に改良され、365馬力の350GTSへと進化。総生産台数は400GTが176台、400GTSが328台。同世代のスーパーカーに比べるとややおとなしい1台であった
1970年から1976年まで生産されたランボルギーニのGTモデル。エスパーダのシャシーを30㎝ほど短くし、車両の設計は当時のチーフエンジニアであったパオロ・スタンツァーニ、デザインはミウラなどと同じくベルトーネに依頼され、チーフデザイナーであったガンディーニが担当した。デビュー時は4L 350馬力の350GTだったが、1972年に改良され、365馬力の350GTSへと進化。総生産台数は400GTが176台、400GTSが328台。同世代のスーパーカーに比べるとややおとなしい1台であった

運転が苦にならないマイルドなスーパーカー

松本 巨匠、寒くなってきましたが、今日もよろしくお願いします!
徳大寺 ほんとだな。我々の永遠の煩悩である旧い車たちには最高の季節だよ。君のトライアンフで見に行ってもいいぞ。今だったら快適だ。夏は勘弁してほしいが(笑)。
松本 覚えておきます(笑)。
徳大寺 さて、今日はどこまで行くんだ?
松本 今日は横浜方面です。スーパーカー特集に合わせ、とびきりのお店を見つけました!
徳大寺 素晴らしいな。で、車は何? スーパーカーも結構やってきてるじゃないか。弩級のクラシックフェラーリとかその世界に入ってきちゃうんじゃないか? 275GTやランボルギーニエスパーダなんかもう一度見てみたいな。
松本 巨匠に見に行く車を当ててもらうのが面白いんで、つい試したくなっちゃうんですよ。それで今回なんですけど、巨匠がおっしゃったエスパーダにも共通する面がありますが、どちらかと言うと以前見に行ったことがあるイスレロのGTスタイルをさらに快適にさせたイメージだと思います。
徳大寺 いま言わなかったランボルギーニだとすれば“ハラマ”か“ウラッコ”だな。スーパーカーは12気筒だろうからハラマか? しかしそんな車があったの?
松本 あるんですよこれが。そこのお店には2台もあるんです!
徳大寺 それはまたスゴイな。確か、ハラマってスペインだよな。俺、行ったことあるよ。サーキットがあってさ。フェルチオさんは闘牛の名前以外にもスペインにまつわる名前をつけるんだな。
松本 ランボルギーニ ハラマは1970年にデビューするんですけど、少し利益路線を狙ったんじゃないでしょうか。ガンディーニがデザインしたにしてはマイルドですし、内装も極めて視認性が良く、運転が苦にならないスーパーカーを目指した感があります。

スーパーカー黄金期に生まれた異色のイタリアンGTモデル

徳大寺 スーパーカーだからと言って乗りにくいんじゃ今の時代は不評を買うだろう。そう考えると先見の明があったんだな。ハラマって目立たないだろ?  まさかV12気筒が入っているなんてお釈迦様でも気がつかない。ノーズが短く見えるしな。エスパーダはいかにもロングノーズで凄さを感じるけどな。そこが未来へのアプローチだったわけだ。
松本 ボンネットを低くする見せ方をとても工夫していると思いました。ハラマのポイントは幾つかありますが、A、B、Cのピラーの線を上に持ってくると交わるところがBピラーあたりなわけですね。その割にフロントノーズが短く見えてしまい現実離れした印象が薄いイメージなんですよね。なんだか初代ホンダ アコードみたいですよ。
徳大寺 確かにアコードはハラマをギュッと縮めた感じがしないでもないな。確かまぶたのようなヘッドライトだっただろう。ちょっとしたスパイスが実にイタリアは上手いんだ。ヘッドライトを覆うまぶたがミステリアスな雰囲気を醸し出しているだろう。
松本 到着ですね。すごい、本当に2台ありますね(笑)。この2台を同時に見られることはほんと希だと思います。
徳大寺 ほ~。こんなお店が我々の知らないところにあったんだなぁ。まっちゃんも見てみろよ。ライトのところ、なかなかイカすだろう。このオーバーフェンダーのデザインも大胆でいいね。NACAダクトもアクセントと実用を兼ね備えていて。全体的におとなしいんだけどよく見ると大胆なところもある。これがマルチェロ・ガンディーニの神髄だな。
松本 内装もエクステリアに合わせてデコラティブではないじゃないですか。しかしきれいにレストアしてありますね。ランボルギーニ ハラマって実際に見てもおとなしいですよね。でもひとたびイグニッションを回せば別世界へと誘うわけですから地味であってもポテンシャルを秘めていて好感が持てます。
徳大寺 派手な車を作ることは別に難しいことじゃない。でもれっきとしたスポーツカーメーカーがこれ見よがしにならないように作るのは難しいんだよ。当時のフェルチオさんの手腕だからできたことだろうね。奇抜なデザインもいいが、大人の装いをしているのに驚異的な性能を隠し持つ、これもまたスーパーカーの一つのカタチなんだ。

ランボルギーニ ハラマ インテリア
ランボルギーニ ハラマ ヘッドライト
ランボルギーニ ハラマ エンジン
ランボルギーニ ハラマ シート
ランボルギーニ ハラマ リア

【SPECIFICATIONS】
■全長×全幅×全高:4485×1820×1190(mm)
■車両重量:1540kg
■ホイールベース:2380mm
■エンジン:V型12気筒DOHC
■総排気量:3829cc
■最高出力:350ps


【ナイトインターナショナル】
■所在地:東京都町田市鶴間1855-1
■営業時間:10:30~18:00
■定休日:木曜日
■tel:042-799-2826

tefxt/松本英雄
photo/岡村昌宏


※カーセンサーEDGE 2015年1月号(2015年11月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています