▲自動車史における一ページを担う車です ▲自動車史における一ページを担う車です

イタリアンデザイン、アイルランド生まれのアメリカン“ヒーローカー”

原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2015年2月24日に発見したのは「デロリアン DMC-12」です。昭和後半に生まれた方にはグッとくる車だと思いますが、平成生まれの方はご存じでしょうか?

DMC-12はSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズに登場した“タイムマシン”。車両の正式名称はDMC-12ですが、もはやデロリアンで通じてしまう車です。デロリアン(デロリアン・モーター・カンパニー)は、GMの副社長を務めたジョン・ザッカリー・デロリアンによって1975年に設立されたアメリカの自動車メーカーです。

DMC-12の最初のプロトタイプは元ポンティアックのチーフエンジニアが手掛けた意欲作で、1976年にお目見えしました。しかし、市販モデルの生産開始は1981年でした。

当初、ロータリーエンジンを搭載予定でしたが、ロータリーエンジン製作メーカーであったコモーター(NSUとシトロエンの合弁会社)の閉鎖に伴い、計画を変更。フォードのV6エンジン搭載の噂も流れましたが、結果的にはプジョー、ルノー、ボルボが共同開発したPRVエンジンとなりました。

▲当初、エンジンをミッドシップすることが画策されていましたが、生産効率を考えポルシェのようなRRとなりました ▲当初、エンジンをミッドシップすることが画策されていましたが、生産効率を考えポルシェのようなRRとなりました

DMC-12のプロトタイプではシャシーをERM(伸縮性リザーバー・モールディング)と呼ばれる技法を用いて、デロリアンがこの特許を購入するほど力を入れていました。軽量、安価にシャシー製作ができることを見越した動きでしたが、結局は生産を委託したロータスが得意とするバックボーンフレームを採用しました。

車両の生産はプエルトリコで行われる計画でしたが、補助金やコリン・チャップマン(ロータスの創設者)との関係上、北アイルランドで生産されました。ボディデザインはイタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロが手掛け、いわゆるガルウィングが特徴。ステンレスボディは今見ても斬新です。

▲ステンレスボディという珍しさのみならず、ガバッとドアが開くガルウィングが採用されています ▲ステンレスボディという珍しさのみならず、ガバッとドアが開くガルウィングが採用されています

プロトタイプで大注目を浴びたDMC-12でしたが、活躍できたのは生産初年度のみ。アメリカ経済の低迷や高価すぎたこと、相次ぐキャンセルなどが重なり、一気に勢いが衰えました。そして、あえなく1982年にデロリアンは経営破たんしました。

当該中古車は新車時登録から約34年が経過していますが、写真を見る限り、その古さを感じさせません。内装のヤレも少ないですし、この世の車とは思えないエキセントリックさが今なおバリバリに漂っています。こんな車ですから、歴代オーナーが大切に屋根付きガレージ保管してきたのだと思われます。

映画に登場した“ヒーローカー”であるDMC-12は、ある種の変身願望を満たしてくれること間違いありません。ノスタルジックな気分に浸れるとともに、自動車史における重要な一ページを手にすることになります。

いやはや、タイムマシンだと言われても疑わない斬新なデザインに、ホント惚れぼれします。

■本体価格(税込):応談 ■支払総額(税込):---
■走行距離:5.5万km ■年式:1981(S56)
■車検:2016(H28)年11月 ■整備:無 ■保証:無
■地域:和歌山

text/古賀貴司(自動車王国)