’93 LANCIATHEMA 8.32
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / VINTAGE EDGE
2012/08/23
本当に裕福なイタリア人が選ぶのがランチアなんだよ
180度クランクという珍しい設計だった308用のV8エンジンを通常の90度に変更し、出力なども僅かにデチューン。車格に合った静粛性や扱いやすさが加えられた。通常モデルとの違いは格子のラジエターグリルやホイール、可動式のリアスポイラーになるが、基本デザインは踏襲され、テーマらしい落ち着いた雰囲気も損なわれていない。製造は1992年まで行われた。
徳大寺 最近「これは!」と思うクルマが少なくなったな。90年頃までは魅力的なモデルもまだまだあったが。今日見に行くクルマはどうだい?
松本 今回は特集の枠にとらわれずにクルマ選びをしてみたんですけど、極めてノーブルな4ドアのスポーツモデルにしました。巨匠もきっと気に入ると思いますよ。
徳大寺 何だろうね。4ドアで少し新しめのスポーツモデル。しかも上品。これはドイツ車じゃ無理な話だな。キミがそう言うならランチアあたりじゃないのか? フラウの内装のな。
松本 さすがですね。巨匠なら車種を当てるような普通の回答はしないだろうと思っていましたよ(笑)。正解です。今回はテーマ8.32にしました。内装はポルトローナ・フラウ、100年の歴史がある王室御用達のメーカーですね。
徳大寺 たしかフラウはテーマ8.32から初めて自動車産業に参入したんじゃないか。まぁフラウは歴史的にも現代まで最高ポジションのモノに取り付けるシートだからね。テーマ8.32はそのフラウに初めて認められた自動車ということになるな。青山にあるカッシーナのショールームに行けば、フラウがどのくらいすごい家具メーカーなのか分かるはずだよ。
松本 たしかその後に日産のJ.フェリーというパーソナルプレステージカーでも使われましたよね。勿論オプションですが。なかなか日産もやりますね。フラウの内装のJ.フェリーがあったら所有してみたいですね。
徳大寺 テーマ8.32は内装もいいんだけど、やはりエンジンだな。上品なランチアにフェラーリが組んだ8気筒だから、そりゃ価値があるよ。イタリアだけに許されたイタリアにしかできない仕様だからね。それもフィアットの総帥であるジョバンニ・アニエッリがいたからこそできたことなんだ。
松本 歴史的に見てもフェラーリはフィアットに頭が上がらない部分はありますね。ランチアは唯一ドイツ車に勝てるグランプリカーを作っていたわけですから。1955年当時はフェラーリは型遅れのグランプリカーで全く歯が立ちませんでしたからね。それを救ったのがフィアットのアニエッリであり、フェラーリにスポンサー料まで支払ってイタリアのためにフェラーリに託したわけです。
徳大寺 そうなんだよ。ランチアの財政難をフィアットが救って宝石のようなグランプリカーD50をフェラーリに与えたんだ。このD50は左右に燃料タンクを搭載して、しかもエンジンをシャシー構造物にしたんだから、ビットリオ・ヤーノは思っている以上に天才だったんだろうな。彼は高性能のアルファロメオを作った人物としても有名だな。
松本 戦前から戦後の黄金期のランチアを乗ったり見たりしていますが、ドアの建て付けがとてもいいですね。しかもフィアットと同じプラットフォームのランチア・プリズマもフィアットとはドアを閉めた感じが全く違うんです。これは不思議ですね。
徳大寺 僕もそう思うな。今日見に行くテーマもすごくイイと思うよ。楽しみにしよう。
松本 ここですよ。我々の家の近くにお宝があるんですから、見るだけでも価値ありますね。
徳大寺 イイ色だだな。ブルーグリーンか。サイドにはちゃんとラインが入ってるよ。黄色と空色のラインが。この配色はランチアの伝統色なんだ。60年代はワークスのエンジンのカムカバーは必ずこの色で塗られていた。そういうモノを継承するところが名門なんだよ。ドアもパシッとくるじゃないか。
松本 テーマ8.32とくるとフェラーリのエンジンと直結する人もいるかもしれないですね。エンジンを生産したのはフェラーリですが、乗りやすく静粛性に優れたチューニングを行ったのはランチアです。そこがもっと評価されるべきですよね。フェラーリのエンジンを使ってコラボしたのはこのテーマ8.32だけなんですから。
徳大寺 ランチアというのは本当に上品で他の国では作れない要素がちりばめられているんだ。それは内装であったり外装のデザインであったり、作りだったり。乗れば新旧のモデルにかかわらず分かるだろう。いずれにしても伝統を小さいながらも継承して作り上げる。これがイタリアなんだ。本当に裕福なイタリアの人が選ぶのはランチアなんだろうな。
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