M・ベンツEクラス
ディーゼルエンジンは特性上、超高回転域まではなかなか回らないので、そういった面での爽快感にはやや欠けるだろう。が、アイドリングに近い低回転域からモリモリと盛り上がる極太トルクを生かしたスタートダッシュも、独特の爽快感を感じるものだ。下図版はメルセデス・ベンツE220CDIの出力特性を表したもの。1500rpm弱の時点ですでに最大トルクを発生していることがわかる。
M・ベンツE220CDI出力特性
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スポーツカーあるいはドラッグマシンとしてのディーゼルターボ

1999年、当時の東京都知事がPM(粒子状物質)入りペットボトルを振って見せたパフォーマンスはいまだ多くの人が覚えているだろうが、同時に、最新ディーゼル車の排ガスは当時のそれと違い格段にクリーンであることも、多くの人が理解していると思う。

ということで、今さらここで「クリーンなディーゼルに乗りましょう!」などと提唱してもさほど意味はない。わたしが提唱したいのは「“スポーツカーとしてのディーゼルターボ車”はいかが?」ということだ。いや正確にはスポーツカーというよりは「GTカー」だろうか。まぁ細かい定義はどうでもいい。とにかく、「飛ばして楽しい車」としてのディーゼルターボの話だ。

飛ばすといっても「高速道路でウルトラハイスピードを出そうぜ!」などと頭の悪いことを提唱したいわけではない。「料金所ダッシュ」の件である。

そのスタートダッシュ力はほとんどロケット状態?

わたしが言うまでもなく、多くのドライバーは節度をもって高速道路を走っており、アホほどの速度超過をしているのはごく一部の愚か者だけだ。しかし、やはり自動車愛好家としての血は時に「スピード」というか「めくるめく加速」を求めてしまうのも事実。だが、愚か者のような速度超過をするつもりは毛頭ない・・・というときに、合法的にその欲求を満たすことができるのが「料金所ダッシュ」である。料金所窓口あるいはETCゲートを抜けた後、法定速度である100km/hまで、愛車の性能をある程度解き放ってみるアレである。

そのとき、ある意味最強なのが昨今のディーゼルターボ車だ。アイドリングに毛が生えた回転数から鬼のような極太トルクを発生させるディーゼルターボエンジンの特性上、例えばメルセデス・ベンツE320 CDIアバンギャルドの料金所ダッシュは、体感上ほとんどロケット発射に近い。無論、AMGなどの高性能ガソリンエンジン車と絶対的な加速数値を比べればAMGに軍配が上がるが、公道で最も重要なのは数値ではなく「体感」である。安全マージンを十分とったなかで、どれだけ感覚的にワクワクできるか、どれだけ気持ち良いかが重要なのだ。絶対的なタイムが気になって仕方ない人はサーキットに行くべきだろう。

さて、鬼のロケット加速で100km/hに達した昨今のディーゼルターボ車。その後はどうすれば良いかと言えば、もちろんジェントルな巡航に戻るだけだ。圧倒的な良燃費と、そして時おり必要となる追い越しや上り坂での加速時、右足の親指にちょいと力を入れるだけで極太トルクにより再びのロケット加速をする様に、運転を愛する者であれば、思わず含み笑いを浮かべずにはいられないだろう。

ということで、今回の伊達セレクションはずばり・・・
新世代ディーゼルターボは、ある意味最高にスポーティです!


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE