▲いつの時代も世界中の富裕層を満足させてきたSクラス ▲いつの時代も世界中の富裕層を満足させてきたSクラス

旧型Sクラスがだんだんと狙いやすくなってきた

浅はかな一般論に聞こえるかもしれませんが、M・ベンツ Sクラスは富裕層にとって一家に一台は置いてある“常備薬”のような存在だと思います。もちろん、Sクラスを積極的に選ぶ人もいらっしゃるでしょうが、「とりあえずSクラス」という感覚で選ぶ富裕層もいらっしゃいます。まさにM・ベンツブランドへの信頼感と言えるでしょう。

Sクラスは言わずもがなM・ベンツのフルサイズセダン。リアシートに座ってもよし、オーナー自らステアリングを握ってもよし、とにかくオールマイティに使える高級車です。TPOを選ばない高級車、という点でもオールマイティです。

いつの時代のSクラスでも驚かされるのは、疲れ知らずな乗り心地です。路面情報を遮断することなく、路面の凹凸をいなしていくサスペンションのセッティングは、ただただ見事。特に、旧々型Sクラスから採用されているアクティブ・ボディ・コントロールと呼ばれるエアサスが、ボディロールをほぼ“排除”してくれます。

富裕層は基本的に現行型を乗り継ぐため、フルモデルチェンジのたびに大量の旧型が流通します。結果、旧型は大きく中古車相場を下落させ、旧々型ともなれば同年代のフルサイズ国産セダンよりも安く流通してしまうほどです。ただ面白いものでそれ以上古くなるとネオクラシックとして価値がだんだん上がっていく傾向が見られます。

▲全長は5mオーバーと大柄ですが、面白いほど小回りが効きます ▲全長は5mオーバーと大柄ですが、面白いほど小回りが利きます

原稿執筆時点(2015年8月17日現在)で、カーセンサーに掲載されている旧型Sクラスの平均車両価格/平均走行距離は約342万円/約5万5000km。初期モデルである2005~2006年式でも約296万円/約6万6000kmと、いまだ高値です。

しかしながら、掲載物件を詳細に見ていくとお手頃な中古車を見つけることができます。最安物件にいたっては車両価格158万円というリーズナブルさ。国産コンパクトカーを新車で買うような予算でも、かつての高級車が狙えるんです。

どんなシーンでも活躍してくれますし、旧型とて現役バリバリの快適性と走行性能を有しています。200万円ほどの予算でセダンを狙うなら、旧型Sクラスを検索しない手はありません。というか、個人的には積極的に選ぶべきセダンだと思っています。さすがに200万円以下の物件はわずかしかございませんが、200万円台という条件なら少なからず探すことができます。

中古車を選ぶ際、どうしても気になるのが走行距離でしょうが、それよりも整備記録簿の中身(定期的に整備されてきたものか否か)、内装のヤレ具合の方が重要です。面白いもので、しっかりメンテナンスされてきた、つまり大切に乗られてきた車って内装がキレイな状態に保たれていることが多いんです。

▲富裕層を満足させてきたSクラスですから、旧型とて高級感たっぷり ▲富裕層を満足させてきたSクラスですから、旧型とて高級感たっぷり

旧型Sクラスのエンジンバリエーションは豊富で、排気量はAMGモデルを除くと3.5L~5.8Lの(V6、V8、V12)まであります。中古車市場は面白いもので、維持費が安い小排気量モデルの方が高値で流通しがちです。燃費、税金などで大排気量モデルの方が高くつくのは承知していますが、フルサイズセダンには大排気量エンジンがお似合いだと思います。

それにしても旧型Sクラス、身近な存在になってきたものです。

text/古賀貴司(自動車王国)