▲空力特性の見直しと徹底した軽量化が特徴です ▲空力特性の見直しと徹底した軽量化が特徴です

見かけはルポでも、中身はお金をたんまりかけたスペシャルモデル

原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2015年2月10日に発見したのは「VW ルポ3L TDI」です。日本には正規輸入されませんでしたが、VWが本気でエコカー開発に挑んだエポックメイキングな1台でした。

「3L」と聞くと3Lエンジンが搭載されているのかと思うかもしれませんが、この3L TDIは100kmの走行に必要な燃料を意味しているんです。つまり、日本の燃費表示にすると33.3km/Lということです! これはルポ3L TDIが世界に先駆けて実現した記録で、当時(1999年)としては驚くべき数値でした。

ルポ3L TDIは3気筒1.2L直噴ターボディーゼルエンジンを積んでいます。最高出力は61ps。しかし、ECOモードを選択すると、最高出力は41psに制限されます。

写真をご覧になり、「同時期のルポと違う」とお気づきになった方、鋭いです。空力特性が見直されていて、フロントマスクが若干異なっています。テールゲートやリアバンパー、サイドスカートも空力特性のために変更され、車高も10mm下げられています。結果、通常のルポのCd値が0.32なのに対し、3L TDIは0.29です。

空力特性以外で3L TDIの特筆すべきは軽量化への取り組みでしょう。ボンネット、ドア、シートフレームはアルミ製になり、窓ガラスは通常のルポより薄くなっています。ボンネットやドアなどのリベット(金属板などをつなぐための鋲)はA8で培われた技術が採用されている他、レーザー溶接も用いられています。

▲元々シートフレームはスチール製でしたが、ルポ3L TDIではアルミ製となっています。リアシートは3名掛けでなく、2名掛けです ▲元々シートフレームはスチール製でしたが、ルポ3L TDIではアルミ製となっています。リアシートは3名掛けでなく、2名掛けです
▲ルポ3L TDIでは、ステアリングホイールもスチール製からマグネシウム合金製に変更されています。ドアもアルミ製です ▲ルポ3L TDIでは、ステアリングホイールもスチール製からマグネシウム合金製に変更されています。ドアもアルミ製です

その他、サスペンションアームには鍛造アルミ合金を採用、ドライブシャフトも中空構造で、リアゲートには内側にマグネシウム、外側にアルミを使うというこだわりぶりでした。遮音材まで軽量素材に変更されています。結果、通常のルポより約150kgも軽量化され、3L TDIの車重は830kgに抑えられています。

パッと見は単なるコンパクトカーかもしれませんが、実はVWが当時の技術力を結集した凄いヤツなんです。あえてハイブリッドではなく既存の内燃式エンジンで究極の燃費を追求したところが、エポックメイキングでした。

当該中古車の走行距離は12.7万km。15年落ちなので、年間走行距離は1万km足らずです。外装は経年劣化でプラスチックパーツがうっすら白くなっているところも見受けられますが、概ね綺麗な状態が保たれているようです。内装は写真で見るかぎりヤレがなく、走行距離を感じさせません。

ルポは絶版となって9年が経過しましたが、デザインは愛くるしく古さを感じさせません。コンパクトで超経済的な移動の手段として、オシャレな存在感を放っています。決して速いわけではありませんが、ディーゼルエンジンならではの太いトルクに驚かされるでしょう。コンパクトカーをお探しの方には、この珍しいルポもチェックしていただきたいものです。

■本体価格(税込):59.0万円 ■支払総額(税込):---
■走行距離:12.7万km ■年式:2000(H12)
■車検:無 ■整備:付(12ヵ月) ■保証:無
■地域:岡山

text/古賀貴司(自動車王国)