▲筆者がヤフオクで大人買いした漫画「パタリロ!」。昨年11月に第93巻も出たようですが ▲筆者がヤフオクで大人買いした漫画「パタリロ!」。昨年11月に第93巻も出たようですが

パタリロの年齢はとうに追い越した。そして「あの車」も買えるようになった

過日、漫画「パタリロ!」の単行本(1~92刊)を大人買いした。ご存じの方も多いと思うが「パタリロ!」とは、漫画家・魔夜峰央氏が1978年から描き続けているいる長寿ギャグ漫画で、2015年の現在も「別冊花とゆめ」「MELODY」(白泉社)にて連載が継続している。架空の王国・マリネラの国王である主人公パタリロの年齢は、1978年の連載開始時点で10歳。そして2014年5月25日に初版が発行された第92巻においても、やっぱり10歳のままだ。連載開始時、筆者とパタリロはほとんど同年代だったが、今やパタリロの親であってもおかしくない年齢になった。

このような現象はしばしば起こる。

結構なおばさんだと思っていたサザエさんはとうの昔に「かなり年下の女性」となり、おじいさんだらけと感じていた「笑点」でも、第5期といえる現在の大喜利メンバーにはずいぶんと親近感を覚えるようになってきた。ちなみに言えば「教師生活25年!」でおなじみの町田先生(アニメ「ど根性ガエル」の登場人物)は、おそらく現在の筆者と同い年だ。

何と名付けるべきかわからないこういった現象に遭遇するたびに「俺も年をとったものだな……」としみじみしてしまうわけだが、この現象、つまり年をとる、歳月が大きく経過するということは、しみじみと悲しむべきばかりではないうれしい側面も備えている。

「当時」とは対象物の見え方がまるで変わるため、また別の楽しみ方ができるということだ。

ただただ笑ってばかりいた「パタリロ!」の中に潜む意外な含蓄に気づき、「大衆的すぎる」と敬遠していた「笑点」の笑いについても、「人間、結局こういうのが大事なのかもな」と思い至る。要するにそれは「視野が広くなる」ということなのかもしれない。年をとることは、決して悪いことばかりではない。

それとある意味似たような現象は、輸入車の世界でもしばしば起こる。

若いころは「高嶺の花」「凄すぎて手が出せない」「金銭的にも絶対ムリ」と思っていたいわゆる憧れの車が、20年とか25年とかの歳月が経過したことで、「……冷静に考えたら、今の俺なら明日にでも“あの車”が買えるじゃん!」という状況に変化しているのだ。

例えば、一例としてこんな車だろうか。

▲往年の世界ラリー選手権を席巻したランチア デルタHFインテグラーレ。写真は競技用車両だが、その市販バージョンは今なお世界中の愛好家から大人気。中古車相場は、状態にもよるがおおむね350万円から ▲往年の世界ラリー選手権を席巻したランチア デルタHFインテグラーレ。写真は競技用車両だが、その市販バージョンは今なお世界中の愛好家から大人気。中古車相場は、状態にもよるがおおむね350万円から

最終型に近いエボルツィオーネIIの新車価格は565万円。当時20代半ばだった筆者には到底支払える額ではなく、単なる夢や憧れとしての対象でしかなかった。しかし、ふと気がついてみれば、今や中古車は300万円台ほどであり(全然落ちてないとも言えますけど)、そのぐらいの金額であれば何とか払えなくもない「大人」になっている自分にも気づく。歳月により「買おうと思えば買える車」に変わったのだ、デルタは。ていうか筆者は実際買った。ドリームズ・カム・トゥルーだ。

また、あるいはこんな車たちだろうか。

▲1974年から1989年まで販売されたポルシェ 911の「タイプ930」。写真のターボはコレクターズアイテム化しているためかなり高額だが、通常のカレラ系であれば300万円台から探すことができる ▲1974年から1989年まで販売されたポルシェ 911の「タイプ930」。写真のターボはコレクターズアイテム化しているためかなり高額だが、通常のカレラ系であれば300万円台から探すことができる
▲メルセデス・ベンツ 190Eに英国コスワース社がチューンしたDOHCヘッドを載せ、足回り等々もかなりスポーティな仕様となった190E 2.5-16。「エボリューション」以降はかなりの高値だが、2.5-16は130万円前後が相場 ▲メルセデス・ベンツ 190Eに英国コスワース社がチューンしたDOHCヘッドを載せ、足回り等々もかなりスポーティな仕様となった190E 2.5-16。「エボリューション」以降はかなりの高値だが、2.5-16は130万円前後が相場
▲90年代初頭までのツーリングカーレースで「伝説」を作った初代BMW M3。今となっては特段「速い車」というわけではないが、その軽快な身のこなしと、そして何より「存在感」にはいまだ魅了される ▲90年代初頭までのツーリングカーレースで「伝説」を作った初代BMW M3。今となっては特段「速い車」というわけではないが、その軽快な身のこなしと、そして何より「存在感」にはいまだ魅了される

どれも、いい年こいた大人なら「その気になれば明日にでも買える」ぐらいの相場水準になっているわけだが、当然「でも、安くなったということは古くなったということなわけで、そうなるとメンテナンスとかが大変じゃない?」という意見も出てくるだろう。

当然メンテナンスは大変であり、「トヨタの新車を近所のディーラーで買う」ことと同じようにはいかないのがこれら「往年の名車」である。筆者が所有していたデルタは、幸いにして保有期間中はほとんどトラブルらしいトラブルはなかったが、あのまま乗り続けていたらそこそこの故障(というか消耗品の劣化)は発生していただろう。

しかし、それを踏まえてもなお、何とかなるぐらいの「大人」に、今や貴殿はなっているのではないだろうか?

古い車のメンテナンスが大変といっても、何も1000万や2000万円の修理代がかかるわけではない。せいぜい数万から数十万円、最悪でも100万円とか150万円ほどだろう。経験から言うと、しっかりした個体を選べばそこまではかからない可能性の方が高い。またあまり美しい話ではないが、「極度に壊れたらあきらめて手放す」という方策だってなくはない。であるならば、何を躊躇する必要があるだろうか?

もちろん、これは万人にオススメできる類の話ではない。「あの車」に対する憧れの気持ちを今も持ち続け、そして、まあまあ普通ぐらいの経済力があり、で、多少の困難(=故障)など物ともしないガッツをお持ちの方のみにオススメしたい案件だ。

しかし、と筆者は思う。登場人物の年齢を追い越したところで何の感慨もないどころか、その事実にすら気づかない「ソッコーで消えていく作品」も多い世の中で、「あぁ、いつの間にかあの人の歳を追い越したんだなぁ」と思わされる作品には、やはり「人を魅了する何か」があるものだ。

それと同様に、いつまでたっても憧れる気持ちが消え失せず、そして市場においてもいまだに結構なプライスが付けられている車には、やはりそれだけの理由がある。ぜひそれを、貴殿が元気でいられるうちに、貴殿の身体全体でしかと確かめていただきたいのだ。……人生は、意外と短いですぞ。

ということで今回のわたくしからのオススメはズバリ「往年の名車」だ。

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  • Car:ランチア デルタ(初代)&メルセデス・ベンツ&BMW M3(初代)&ポルシェ 911(930、964)
  • Conditions:総額500万円以下(総額500万円を超えるプランが用意されている場合があります)
text/伊達軍曹