スバル BRZ▲乗ったら超楽しい。このダイレクト感は快適に振った車では絶対味わえない楽しさ。そんなことは頭ではわかっているけど、実用性という「理性」が働くと手が出しにくいのがスポーツカーではないだろうか。絶対楽しいのに……

スポーツカーとその他の車の間にある“実用性”という名の越えにくい「境界線」

マツダ ロードスター

エコブーム時代に比べれば昨今は、マンガ、TVゲーム、ネット動画などによってスポーツカーが意外と身近な存在となっている。しかも、皮肉なことに「車離れ」とやゆされる若者を中心に。

彼らはスポーツカーに興味があり知識もある。本当は好きなのだ、スポーツカーが。

ただ、実際に購入して楽しんでいる人は……。

多くのスポーツカー好き(声を大にして「好き!」と言えない人も含む)は、ほぼ見ているだけなのだ。

恐らく、超ラッキーと言えるきっかけでもなければ、一生スポーツカーの本当に楽しさを知らずに、たった一度のカーライフ人生を想像・妄想だけで終えることになるのだろう。

そう考えると、実にもったいない話だ。

一方で、好きなのに買えない理由は、スポーツカーは荷物が積めない、乗り心地も良くない、なんだったら燃費だってそんなに良くはないという、日常使いをまるで無視した実用性の低さゆえに違いない。

そう考えてしまった人の足元には、越えたくても越えられない「境界線」が引かれているのだ。
 

トヨタ 86▲スポーツカーとその他の車の間には「境界線」がある。ただ、最初の一歩は勇気がいるが、一度越えてしまえばなんてことない線なのだ

境界線を越えた人たちに「スポーツカーって何だろう?」をテーマにインタビュー

特集に登場する著名人たち▲カーセンサー6月号は、スポーツカーではなく、境界線の向こう側にいるスポーツカーに乗っている人に注目した企画だ

カーセンサー6月号では、「境界線」の向こう側に行ってしまった著名人たちにインタビューを慣行。話をしてくれたのは、レースにも参戦する武闘派自動車ジャーナリストの橋本洋平さん、若干20代でホンダS660の開発責任者を務めた椋本陵さん、プロ顔負けのドライビングテクニックをもつDJのピストン西沢さん他、バラエティ豊かな面々が登場。

彼らが見ている景色やエピソードを中心に、「スポーツカーって何だろう?」というテーマで話をしてもらった。

彼らに共通するのは「境界線を越えた後悔がみじんもない」ことに加え、「スポーツカーは見てると乗るとじゃ、楽しさが全然違う」と言い切ることだ。そして、とにかくスポーツカーの運転は楽しくて仕方がないらしい。

車もカッコいいけど、スポーツカーに乗っている人とその考え方もカッコいい……。さあ、カーセンサーを読んだら境界線を越えて行こう!
 

表紙イラスト作画秘話

表紙を飾るホンダ S660について、イラストの作者である遠藤イヅルさんよりコメントをいただきました。
 

ホンダ S660 イラスト/遠藤イヅル▲カーセンサー4月20日発売号は、ホンダのスポーツカーS660
遠藤イヅル(えんどういづる)

イラストレーター/ライター

遠藤イヅル

1971年生まれ。大学卒業後カーデザイン専門学校を経て、メーカー系レース部門のデザイナーとして勤務。その後転職して交通系デザイナーとして働いたのち独立、各種自動車メディアにイラストレーター/ライターとしてコンテンツを寄稿中。特にトラックやバス、商用車、実用的な車を好む。愛車はプジョー 309とサーブ 900。

グレーの世界に鮮やかに浮かび上がる、黄色いホンダ S660

今月の表紙イラストに描いた車は、ホンダの軽スポーツカー「S660」です。S660を置く背景は、空と舗装路面の境がわからないようなグレーのグラデーションとして、地面には、S660まで続く足跡を刻みました。

この構図には、スポーツカーに乗りたい、でも実はなかなか踏み込めない……という多くの「スポーツカーオーナー予備軍」に向け、スポーツカーに乗るための一歩を踏み出してみよう! というメッセージが込められています。

S660のボディカラーは、グレーの世界に鮮やかに浮かぶよう、人気色の「カーニバルイエローII」をチョイス。角度は少し横向きのリアビューとして、車に向かって歩くシーンを強調しています。オープンスポーツカーなので、脱着式ルーフはもちろん外しました。

ちなみに足跡は、日本でも一世を風靡したスニーカー、「ナイキ エアマックス95」のデザインです。
 

スポーツカーが好き。でも、買うには勇気が必要?

「スポーツカーが欲しい。買って、乗ってみたい」……車に興味がある人なら、誰もが一度は思うことではないでしょうか。しかし、実際に車を買うときには、なかなかスポーツカーを買うまでは踏み込めないものです。

その理由として、日常で使うことを考えた際に、どうしても積載性や車内の広い車・スペース効率が良い車・低燃費の車を選びたくなります。しかも、最近の売れ筋車は、とても燃費が良く実用性が高いのですから、なおさらです。

そのため、“実用性の低い”スポーツカーは、「スポーツカーを好きなのに、選びにくい」というジャンルの車なのです。そう、スポーツカーを買うのには、ちょっとした決断と勇気が必要かもしれません。

でも、買って良かった! と実感できる「素晴らしい走行体験」が、スポーツカーでしか味わえないというのも事実です。
 

小さくてもスポーツカーの魅力にあふれるS660

ホンダ S660▲表紙に描かれたホンダ S660

「実用性よりも感動体験を!」と、思い切ってスポーツカーを選ぶことを決めたとき、スポーツカーにも価格、排気量、性能、メーカー・国が違う車種がたくさんありますので、どんなモデルがいいか迷ってしまいますよね。

気軽にスポーツカーを楽しみたい、というのであれば、軽オープンスポーツカー「ホンダ S660」はいかがでしょうか。

スポーツカーには持て余すような高出力エンジンを載せたモデルもありますが、S660の最高出力は64psで、アクセルを踏み込むことにちゅうちょしない適度なパワーです。スーパースポーツカーの多くが採用する、座席の真後ろにエンジンを置く「ミッドシップレイアウト」で得られる俊敏なハンドリングは、スポーツカーの名に恥じません。

足を投げ出すようにして座るドライビングポジションと低い視線、エンジン始動時と走行時に後方からエンジンの音が聞こえてくるのも、スポーツカーに乗っている、という気分を盛り立ててくれます。S660は、小さいながらも本格的スポーツカーの魅力にあふれているのです。
 

S660は、ホンダ「S」のルーツを守り続ける

ホンダ S660という車名は実にシンプル。「S」は、ズバリ、スポーツカーのSで、その後ろに排気量を記すのですが、とても伝統あるネーミング方法を引き継いだものです。

ホンダ「S」の始まりは、1962(昭和37)年。この年の東京モーターショーに出品された軽スポーツカー「S360」。バイクメーカーとしてすでに名をはせていたホンダが出す初の四輪車で、エンジンは356ccという小ささながらも、DOHC4気筒という凝りに凝ったメカニズムを採用していました。

S360は結局市販化されなかったのですが、2年後の1964(昭和39)年に531ccに排気量を増した生産型の「S500」を発表。続けて5ヵ月後にエンジンを606ccにした「S600」の発売を開始しています。その後、排気量アップ、各部を変更・改良した「S800M」に至り、1968(昭和43)年まで生産されました。
 

ホンダ S500▲こちらがホンダ S500

そして1990年代に入って、この「S」のコンセプトを引き継いだ小粋で小さな軽オープンスポーツカー「ビート」が登場。NSX同様のミッドシップレイアウト採用で大きな話題となりました。

「S」の名前は、その後1999年に「S2000」で復活します。ホンダにしては珍しいFRレイアウトで、走り好きをとりこにしました。

このように、660のルーツには連綿と続くホンダ・スポーツカーの伝統とスピリッツが流れているのです。
 

ホンダ ビート▲ホンダ ビート
ホンダ S2000▲ホンダ S2000

「スポーツカーに乗る」という夢のハードルは低い?

本格的なのに小さくて扱いやすいスポーツカーのS660。さらに、S660は軽自動車なので、税金などの維持費が安いというのも、購入時・購入後には嬉しいポイントです。

しかもS660は中古車流通量も400台以上あるため、仕様・色・距離・価格など、いろいろな角度から選びやすいと思います。

S660ならば、スポーツカーに乗りたいという夢のハードルは案外高くないのかもしれません。
 

文/編集部、遠藤イヅル イラスト/遠藤イヅル 写真/篠原晃一、山本佳代子、阿部昌也、ホンダ