ナノテクノロジーが車を変える。1月30日~2月1日、東京ビッグサイトにて「ナノテク13(第12回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議)」が開催され、最新のナノテクの数々が紹介された。

中でも日本のエネルギー・環境分野や産業技術の発展を目的とする独立行政法人「NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)」のブースには、自動車に生かされる技術が多く展示されていた。

例えば、ブリヂストンとJSR株式会社が開発に成功した低燃費タイヤ用のゴム。原材料であるポリマーの形の均一化や、ポリマーのブレンドと充填剤などの配置の最適化がナノレベルで行われている。従来のタイヤ用のゴムよりも変形する際に生じるエネルギーロスが44%低減され、対摩耗性能も26%向上した。

担当者によると、このゴムを使ったタイヤは手間やコストがかかりすぎるため、現段階では量産化するのは難しいとのこと。しかし「2020年には、このゴムを使用したタイヤを製品化したい」という。

燃費を良くする技術も複数、展示されていた。中でも熱発電チューブは画期的。パナソニックと大阪大学によって開発されたもので、熱を電気へ変換する能力が高く、容易に電気を取り出せるようになった。これが実用化されれば、熱源の多い車にとって、回生ブレーキ以外の発電源として電気自動車やハイブリッド車の燃費をさらに向上してくれるだろう。

補強用繊維のセルロースナノファイバーも目新しい素材。木材パルプを約数十ナノメートルまでほぐした素材で、京都大学や三菱化学、王子ホールディングスなどが共同開発。鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇ることや熱による変形が小さいため、ボディや内装の補強用繊維に最適。車の軽量化や安全性向上などで力を発揮しそうだ。

すでにセルロースナノファイバーはトヨタや日産などの自動車メーカーに試供されており、フィードバックを受けながら研究を進めているという。

現時点では実用化する前段階の技術が多かったが、将来これらが自動車に用いられれば、燃費や走行性能のさらなる改善も夢ではない。小さなナノの世界には大きな夢が詰まっていた。

低燃費タイヤ用ゴムの比較実験。手前が低燃費タイヤ用ゴム。エネルギー効率が良いので奥の従来品よりも速く転がっている

低燃費タイヤ用ゴムの比較実験。手前が低燃費タイヤ用ゴム。エネルギー効率が良いので奥の従来品よりも速く転がっている

熱発電チューブ。車向けに実用化されれば、回生ブレーキ以外の発電源として、電気自動車やハイブリッド車の燃費をさらに改善する

熱発電チューブ。車向けに実用化されれば、回生ブレーキ以外の発電源として、電気自動車やハイブリッド車の燃費をさらに改善する

セルロースナノファイバー。右が木材パルプで、それをほぐしたのが左。植物が由来となっているので環境への負担が少ないのもメリット

セルロースナノファイバー。右が木材パルプで、それをほぐしたのが左。植物が由来となっているので環境への負担が少ないのもメリット