アルファロメオ 147 ▲3台が置ける大きな間口のガレージ。アルファロメオ 147が止まっているスペースは本来ゲスト用。写真の車はいずれも施主の愛車だ

コンクリートの面と面の構成が生む、美しいバランス

家の正面に構えるガレージは、家の顔。だからそのデザインはとても重要なんです、と建築家の江川さん。

依頼された内容は、洗練されたデザインであることはもちろん、母屋が平屋で、3台置けるガレージ+ゲスト用の駐車スペースを正面に用意すること。

つまり、本来ならどれだけ素敵な母屋を建てても、ガレージに隠れて正面からほとんど見えなくなる。

そこで母屋の天井をどれだけ高くすればガレージとのバランスが良いか、あるいは向かって右側の母屋の側壁を手前に何m延ばすと正面の印象が引き締まるかなどを、何度もコンピューターで微調整。

こうして面と面の構成が印象的なガレージと、奥の洗練された母屋の美しい重なりが完成した。

ガレージの屋根は逆台形状になっているが、これは「ガレージ内の天井に梁がぶら下がるのが嫌だった」という江川さんのこだわりから。天井をスッキリとさせるために梁を上にしたのだという。

普通に梁を下にしても、板などで覆って隠すこともできるが「覆う板の継ぎ目が嫌でした。これだけ大きな面積の、ツルンとした継ぎ目のない、スッキリとした天井を作りたかった。そのためにはRC造で逆梁にするほかなかったんです」

こうして完成したM邸。できたばかりの頃は近所の子供たちが「ここは何だろう?」とばかりに、のぞき込むことがしばしばあったという。

その様子を見て施主は「我が家の顔は格好いいんだな」と確信したそうだ。
 

施主の希望:
ありきたりじゃない見た目と実用性の高いデザイン

ルノー メガーヌ ▲縁側はコンクリートの長い板が、浮いているようにデザインされた。その下にはデザインとして石がギュッと詰め込まれている

夫婦2人で暮らす平屋が欲しかったのですが、ありきたりなデザインは嫌でした。

他にないようなデザインを提案してくれる設計士や施工会社を探しているときに、江川さんのホームページに出合いました。

ガレージや母屋はもちろん、江川さんにデザインしてもらった造作キッチンも気に入っています。

見た目だけでなく、すべての部屋の採光や通風がよく、外部からのぞかれにくいし、収納もたっぷりで家事動線もいいなど、実はとても暮らしやすい家です。
 

建築家のこだわり:
家の第一印象を決めるガレージに徹底的にこだわる

アルファロメオ 147 ▲夜の景観を考慮して電灯が計画的に配置されている。ところどころ、住宅用ではなく、商業施設用の大きな電灯が埋め込まれている

施主の車に対する愛情を伺っていたこともあり、家の第一印象を決めるガレージはカッコ良くしようと考えました。

車とガレージのコントラストや、車がないときの見た目、夜の景観にもこだわりました。

例えば正面から見て右の母屋の壁は、隣家に隠れてしまうけれど一面黒にするなど、見えない部分の色や高さ、形状にも徹底的にこだわっています。

こうした細かなこだわりの積み重なりが、全体としてカッコいい住まいを生むのだと考えています。
 

▲正面から見るとコンクリート板が浮いたように見える階段。特異な形状ゆえ、施工業者が特に苦労した場所だという ▲正面から見るとコンクリート板が浮いたように見える階段。特異な形状ゆえ、施工業者が特に苦労した場所だという
アルファロメオ 147 ▲アクセントとして、ガレージの壁の一面だけに、杉の木目が浮き上がる杉板の本実型枠工法が施されている
ルノー メガーヌ ▲ツルンとした表面にこだわった天井
▲ガス&IH混合レンジを備えたアイランド型キッチン。本来レンジフードの排気管は真上に延ばして天井を這わせるのだが、その見た目を嫌い、配管を壁から空中に吊るように浮かせて配管部分を黒い三角の軒先で隠した ▲ガス&IH混合レンジを備えたアイランド型キッチン。本来レンジフードの排気管は真上に延ばして天井を這わせるのだが、その見た目を嫌い、配管を壁から空中に吊るように浮かせて配管部分を黒い三角の軒先で隠した
ルノー メガーヌ ▲デザイン上、窓は大きな1枚のガラスが一番いいが、使い勝手を考慮して一部を引き戸に。サッシの枠は壁の中に隠してスッキリと見えるようにしている

■主要用途:専用住宅
■構造:母屋/木造軸組工法、ガレージ/RC造
■敷地面積:255.00㎡
■建築面積:145.27㎡
■延床面積:159.03㎡
(本体/110.23㎡、ガレージ/48.8㎡)
■設計・監理:江川竜之建築スタジオ
■TEL:052-433-1930

※カーセンサーEDGE 2020年1月号(2019年11月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
 

文/籠島康弘、写真/尾形和美