海との繋がりと開放感を優先した海辺のセカンドハウス【edgeHOUSE】
カテゴリー: カーライフ
タグ: EDGEが効いている / ガレージハウス
2018/09/20
決め手は絶好のロケーション|玉造清之(solasio 一級建築士事務所)
今回ご紹介するのは、海辺のセカンドハウス。場所は神奈川県三浦市。三浦半島の南端に位置し、E邸はまさにその突先に建つ。眼前には城ヶ島があり、三浦半島と城ヶ島との水道に面している。都心から車で1時間半程度の距離にあるにも関わらず自然が豊かであり、街並みはタイムスリップをしたかのように昭和の面影を色濃く残している。
取材当日は快晴で、初冬でありながら太陽の日差しが肌に感じられるほどの気候。輝く水面の彼方には、白く雪を頂いた富士山が望めるという素晴らしいロケーションだ。そんな土地にセカンドハウスを建てることになったのは、施主のEさんが船舶関係の仕事をされているということと、海外からの来客をはじめ、たくさんの仲間たちを迎えるため。この風景を目にしたゲストたちは、さぞかし驚きの声を上げることだろう。
海や富士山を堪能できるのはE邸の庭側で、通常のアクセスはその反対側、玄関やガレージに面した正面道路からとなる。そちらから観察するとE邸が大きくセットバックし、大型車でも3台は十分に止められるスペースをもっていることがわかる。インナーガレージのシャッターを開けると中には純白のケイマンが収められ、その背後の広い庭越しに青い海が見える。
ガレージ内にはカヤックや釣り道具など、海遊びのグッズが充実。ガレージ裏は広いテラスがあり、そのまま芝生の庭に続く。このように、外ガレージからまっすぐ海に向かって抜ける造形は、表玄関からE邸に入った場合には大きなサプライズになるはずだ。このロケーションを知らずに訪れたゲストには、シャッターを開けた瞬間に正面からは想像もできないような風景が目に飛び込むという趣向なのだろう。そのガレージと一体化したテラスは、かなりの人数でも収容できるパーティ会場ともなる。
圧巻は2階リビングルームからの眺望。目の前に広がる青い海、それも大海原ではなく、正面に堤防や城ヶ島があることにより、まるで大きな絵画を見ているようなイメージだ。E邸と海との間にある道路は、ウッドデッキの存在によりリビングルームからは見えないようにデザインされているし、天井が海に向かってなだらかな傾斜をもっているため、より窓からの景色が強調されているという印象だ。ウッドデッキにはジャグジーが設けられ、リゾート気分を盛り上げている。
多忙な施主のために、ひたすらボーッとできる環境を
設計を担当したのは、玉造清之さん。このEDGE HOUSEでも何度かご紹介しているが、湘南─横浜地域を得意エリアとし、ガレージハウスやビーチハウスを多く手掛け、ご自身も車やオートバイ、そしてマリンスポーツを趣味としている。
このE邸を手掛けるには適任者といえるが、そもそも玉造さんとEさんとは船仲間。あるときEさんがセカンドハウスを建てたいという相談をもちかけ、まずは2人で「どこに建てるか?」と土地探しから始めたという。海沿いだけではなく、箱根にも足を延ばしたようで「自分だけの隠れ家という意味では箱根の方がイメージは近かったんですけどね」とEさん。しかし、ゲストを迎えるという目的とともに「船仲間が目の前の海を通過し、そのときEさんがテラスから手を振るという様子をイメージ」した玉造さんの勧めもあって、三浦の地を選んだそうだ。
「この羨ましいばかりのビーチハウスを建てるにあたり、施主のEさんが玉造さんに出した希望は、
「玉造さんの自邸を拝見し、木材を巧みに使う手法に惹かれました。インナーガレージのあり方やスペースについても議論したのですが、結果的に(1)木をふんだんに使った家であること(2)インナーガレージは1台分とすること(3)外ガレージは奥行きに余裕を持たせること(4)広い庭を備えていること(5)庭から海へ直接アクセスできることなどが依頼事項です」
と、Eさん。本当はもっと希望要件は多かったという。しかし、インナーガレージに2─3台分のスペースを設けることや、全室から海を眺めるための3階建てプランなどは「予算の都合であきらめました」とのこと。ここまでのやり取りを聞いていた玉造さんが、
「Eさんは、すぐ安く、安くって言うんですよ。大きな仕事をしているのに、言うことはいちいち小さい(笑)。いつも、大きなままでいてほしいですね!」
こんな歯に衣着せぬ発言からも、お2人が強い信頼関係で結ばれていることがわかる。
玉造さんの家造りには、早い段階で施主の懐にグッと入り込んで距離感を縮め、潜在的なニーズを引き出してカタチにするという特徴があると以前から感じていた。E邸の場合は、日頃からEさんの仕事ぶりや人柄を知っているからこそ、土地選びに始まり建築要件の取捨選択まで作り手から提案をしている。例えば、前述したように船仲間がE邸の前を船で通過する様子をイメージしたり、多忙なEさんがPCに向かいっぱなしであるという状況から「ひたすらボーッとできる環境に」と配慮するなど、玉造さんらしい優しさや思いやりに溢れた家造りを実践しているのだ。
また、お約束の「自分でできることは自分でやる」はE邸も例外ではなかったようで「すべての珪藻土は、自分でやりました」と、Eさん。邸内壁面すべてと、ガレージフロアも手掛けたというからお見事と言うしかない。
「約1ヵ月の期間、仲間を集めて6人がかりで作業したこともありました。もう二度とやりたくありません(笑)」と振り返るEさんを横目に、玉造さんは微笑みながら海を眺めていた。
【施主の希望:ゲストや自身の疲れを癒やすビーチハウスに】
■海外での生活が長かったEさんは、公私にわたり海外からのゲストが多いという。このE 邸は彼らを迎えるためのゲストハウスであり、Eさん自身が休日に疲れを癒やすセカンドハウスとして建てられた。「予算があれば3階建てとして全室から海を」という希望もあったようだが、現状の2階建てでもリビングルームから見える絶景をはじめ、住空間と海との繋がりなど海辺で暮らす醍醐味を玉造さんが実現してくれた。
【建築家のこだわり:施主の人間性を建築で表現するというスタンス】
■こだわったのは海の見え方。正面道路から海まで景色が抜けるようにし、ガレージにいながらにして海を感じられるように。また、リビングルームからは、海側の道路を見せずに海が見えるように工夫している点も見逃せない。ただ、取材時にいちばん印象に残っている玉造さんの言葉は「Eさんの人間性を出したかった」というもの。施主のライフスタイルだけではなく、嗜好性や性格まで知ったうえでデザインするのが、玉造さんのスタンスだ。
■主要用途:専用住宅
■構造:木造(在来工法)・2階建
■敷地面積:233.39平米
■建築面積:99.37平米
■延床面積:125.86平米
■設計・監理:株式会社solasio 一級建築士事務所
■TEL:0466-35-7770
【関連URL】
※カーセンサーEDGE 2018年2月号(2017年12月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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