自動車ライター、塩見智さんが軽自動車に約1ヵ月間乗り、東京での軽ライフをリポートする「東京スマート軽ライフ」。高級車が溢れる東京での軽ライフを赤裸々につづっていく。今回はS660編の第2回。

▲オープンにすれば爽快感は抜群! ただし真夏は日差しが厳しく暑いので、春や秋くらいの季節がちょうどいいかも▲オープンにすれば爽快感は抜群! ただし真夏は日差しが厳しく暑いので、春や秋くらいの季節がちょうどいいかも

都内で走りを楽しむにはぴったり

S660による東京スマート軽ライフは2週目に突入。たまに右肘をドア内張りにぶつけるものの、室内のタイトさにもほぼ慣れた。動力性能面で理想的なミッドシップ・レイアウトと、絶対的にコンパクトなボディのおかげで、走らせるのが楽しい。わざわざワインディングロードまで行かなくても、都心をちょこまかと走り回るだけで、スポーツドライビングを楽しむことができる。すいた首都高は最高のシチュエーションだ。きわめて低い目線と前述のパッケージによって、絶対的には遅めのスピードでも“やってる”気になれる。

エンジンの吹け上がりが良いので、発進後、1速、2速、3速とギアアップに忙しい。けれどMTの操作感が素晴らしいので苦にならない。ストローク、節度、剛性、位置のすべてがパーフェクトで、操作することそのものが楽しみとなる。「自動運転? 僕はいいや」と言いたくなる。渋滞のときには意見も変わるが。

エンジンとソフトトップに改善の余地あり

S660の乗員背後は3分割されたガラス部分になっているが、一番大きな中央のガラスは電動で開閉が可能。ここを開けるとエンジン音がダイレクトに聞こえてくる。音質は悪くないが良くもない。軽自動車特有の音から脱しきれていない。基本的にはNシリーズのエンジンの流用なので高望みするべきではないが、ここがなんとかなるならもう少しお金を出してもよいと考える人も少なくないはず。僕もその一人だ。

パワーもしかり。自主規制値である最高出力64psの範囲内でなんとかFUNをつくりだそうという開発陣の努力を感じるし、うまくいっていると思うが、その壁を突破し80psくらい発揮するエンジンであれば、一気に今の10倍くらい刺激的なスポーツカーになるはずだ。

▲リアに設置されたエンジン。エンジン音はイマイチ……と思う人もいるのでは ▲リアに設置されたエンジン。エンジン音はイマイチ……と思う人もいるのでは

また、開閉可能な中央のリアガラスだが、ここを夏の昼間に開けるとエンジンの熱風が入ってきて大変なことに……。冬場はエンジン音を楽しめるとともにヒーター効果も得られるはずだ。

▲こちらは中央のリアガラス。S660に乗っていたのは夏場だったので、走行中に窓を開けるとエンジンの熱風が入ってきて地獄だった。冬場なら暖かい風が入ってきていいかもしれない ▲こちらは中央のリアガラス。S660に乗っていたのは夏場だったので、走行中に窓を開けると熱風が入ってきて地獄だった。冬場なら暖かい風が入ってきていいかもしれない

ワインディングは得意中の得意科目だが、高速道路はどうか? 結論からいうとそつなくこなす。東名高速など、流れの速い高速道路での100km/hを超える流れにも難なく追従することができるし、その速度域でも車体の安定性は十分に保たれ、軽自動車に乗っているという感覚はない。その速度域ではさすがに車内は静かとは言えないが、オープンカーであることを考えれば納得できる。

ただし、ソフトトップとウインドシールドの隙間から聞こえる風の侵入音が気になる。異なる2台のS660で同じ音が聞こえたから構造的な問題ではないだろうか。うまくトップを装着すれば聞こえなくなるかもと思って何度もやり直してみたが、風の入ってくる音は消えなかった。ソフトトップの固定方法に何らかの改善を望む。

▲ソフトトップは電動ではないので、手でパタパタと装着する。運転中に風の侵入音が気になったので、改善されるとより良い ▲ソフトトップは電動ではないので、手でパタパタと装着する。運転中に風の侵入音が気になったので、改善されるとより良い

素晴らしい点も改善を望みたい点も一気に感想を羅列したが、総合的には軽自動車のレベルとは思えない仕上がりだ。まぁベーシックグレードのβでも198万円、装備が充実したαだと218万円と、価格も軽自動車レベルではないが、それだけのことはあると思わせる。

引き続きS660についてリポートするが、次週は少し毛色を変えてカスタマイズ編をお届けする予定。


【筆者プロフィール】
1972年、岡山県生まれ。自動車雑誌編集部を経て、フリーランスの自動車ライターへ。軽自動車好き。SUV好き。「カーセンサーnet」をはじめ、「GQ Japan」「GOETHE」「webCG」「carview!」「ゴルフダイジェストオンライン」などにて執筆中。

text/塩見智
photo/篠原晃一