家族との共有を意識したガレージハウス
カテゴリー: カーライフ
タグ: EDGEが効いている / ガレージハウス
2015/03/05
旗竿地の形状を生かしプライバシーを確保
今回お邪魔したのは、建築家・新沼伸介さんの自邸。新沼さんはオートバイ、自転車、サーフィン、スノーボードと、実に多趣味な方である。奥様と二人のお嬢様との4人暮らしだが、家族や趣味のアイテムをどのようにバランスを取って設計され、実際の生活に反映させているのかに注目してみた。
場所は埼玉県さいたま市。住宅街の一角、いわゆる「旗竿地」と呼ばれる奥まった場所に新沼邸はあった。玄関にアクセスするには、車1台がやっと通れる道幅の路地を数十m進まなければならない。
「旗竿地の活用方法には、こだわりました。この形状は、不動産的には敬遠されがちです。しかし、土地の価格が比較的安価であること、駐車スペースも一般的な住宅よりは取りやすいこと、表通りから見えにくくプライバシーを確保しやすいというメリットがあるのです」。
表通りから、隣家の生け垣に沿って奥に進むと新沼邸にたどり着く。建物自体はセットバックして建てられ、玄関前には広いスペースが確保されている。ガレージを覗くと、愛車のパサートヴァリアントの後方には緑の芝生をもつ庭が広がっていた。
新沼さんに、住空間とガレージとの関係性について尋ねてみた。
「私は車を眺めるよりもいじることが多いので、休日には車いじりと子供と遊ぶことを両立できることが理想です。趣味の時間を過ごしながらも家族の存在を近くに感じられるようにと、ガレージと庭を隣接させました」。
緑の庭は、広いウッドデッキを挟んでリビングルームと直結している。リビングルーム~庭~ガレージ~前庭というすべての空間に境界がなく繋がっているというイメージだ。
「また、週末の夜に仲間がガレージに集まることがあるのですが、トイレに行くときに友人が家の中をふらつくとスッピンの家内がブチ切れます(笑)。そのため、ガレージからトイレまでの動線は、リビングルームなどを通らないようにしました。さらに、私の自室へはロフトのハシゴを使って直接アクセスできます」。
多趣味な建築家がデザインした開放感溢れる隠れ家
新沼さんのような多趣味な方に対して、ガレージ作りのアドバイスはありますか?
「趣味の道具や工具などを積極的に見せる場合と、逆に隠す場合とがあると思います。見せるガレージならば、窓をたくさん付けすぎないことです。窓が多いと、大物を飾ったり立てかけたりするときに窓にカブッてしまい、置き場所が制限されてしまうのです。カヤックやウインドサーフィン、ロングボードなどは隠して収納しにくいので、車の上部に位置する天井部分に見せ梁などを通しておくと、その上に置くことができます。個人的な好みとしては、あまりモノがごちゃごちゃ見えているのは嫌なので、バイクだけは飾りとして、それ以外はなるべく収納スペースに収めて、扉を開けると趣味空間的に見えるように心がけています」。
事実、新沼邸のガレージには広い収納スペースが確保されており、中を拝見すると本格的な工具類やスペアパーツをはじめ、サーフボードやラジコン機器などが整然と並べられている。「見せるガレージ」にするか「隠すガレージ」にするか。その判断によって見た目の雰囲気がガラリと変わるので、楽しめるポイントでもある。
ガレージハウスを設計されるにあたり、常に心がけていることはありますか?
「ガレージの使い方(車の保管・車をいじる・ガレージで遊ぶ)や用途に合わせて大きさや配置を考えることと、空間の拡張性を考えておくと、のちのち便利になることを伝えるようにしています。たとえば、両親の介護が必要になったときに、ガレージを部屋に改装すれば車椅子での出入りが容易になります」。
しかし、家庭のご主人だけ車好き、つまりガレージが必要で他の家族は不要…という場合もあると思いますが。
「今お話した将来的な拡張性で説得することもあるでしょう。また、我が家のように、子供の遊び場にしたり、家内がガレージの壁に設置したモニターでDVDを再生しながらフィットネス的なことをしたり…そういう家族の遊び場的に使うと、より利用価値が上がります」。
なるほど、ガレージの付加価値を高めることで、家族からの理解が得られるというわけだ。「いずれにせよガレージの価値は、車好き以外には認知されにくいので、そこをうまく説得しながら十分な大きさを確保するようにアドバイスすることが多いです」
改めて新沼邸を拝見すると、複数の動線が巧みに絡み合い、住む人の動きに応じて選択できるようにデザインされていることがわかる。それが、家族それぞれのプライバシーを尊重し、同時に家族の絆を深めているのだろう。
【家族との共有を意識したガレージハウス 建築家・新沼伸介】
■建築家のこだわり:こだわったのは、旗竿形状の敷地の活用方法。大通り沿いで車いじりをしても落ち着かないもの。その点、この敷地ならばガレージも庭もプライバシーが確保できる。ハワイ・ノースショアの北側道路にはこのような家が多く、建物脇の細い通路を抜けて行くと庭があって、その奥に海……というような。そんなイメージで配置を考えた。ただ、車の出し入れがしにくく、ターンテーブルの設置を本気で考えた
■主要用途:専用住宅
■構造:木造
■敷地面積:294.75平米
■延床面積:150.87平米
■設計・監理:株式会社 永大
■TEL:048-838-5555
【関連URL】
※カーセンサーEDGE 2015年2月号(2014年12月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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