ギャラリーのような1階全部が愛車&愛機の保管場所

複数台のバイクとアルファ スパイダーを所有するKさんが望んだのはガレージらしくない空間。結果、生まれたのがギャラリーチックなスペースだ。

施主の潔さから生まれたシンプルですっきりした住宅

ガレージハウスといっても、いろいろなタイプがある。どこにいても愛車が眺められるような工夫が施されたもの。オーナー自身の手でカスタムやメンテナンスをするために、ピットまで掘ってしまったもの。デスクや書棚などを置き家の中の1室として書斎を兼ねているもの…などなど。これまで数多くのガレージ形態を見てきたが、今回の物件は潔い。というかわかりやすい。

「乗用車1台とオートバイ6台、そしてたくさんの自転車をまとめて保管できる場所が欲しい」

そもそも、施主の単純なニーズから始まった。建築家に対するリクエストは、①1階はすべてガレージとして使うこと 3階建てであること ②1階はあまりガレージっぽくしたくない ③日本家屋っぽくしたくない…というもの。

設計担当は若原一貴さん。居心地のよい空間を演出することで定評のある気鋭の建築家だ。わかりやすい施主のオーダーだけに、それを具現化するのは決して容易ではなかったはず。そこで、若原さん流の工夫が随所に施された。

まず、絶対にミニバンなどハイトのある車に乗ることはないということから、ガレージの天井はできる限り低くし3階までの階段の距離を短縮。ただし、単に天井を低くしただけだと圧迫感があるので、写真のように構造体をむき出しにすることで空間に奥行きをもたせている。また、「ガレージっぽく」ならないために床面をタイル敷きに。同じ素材が3階の住空間にも用いられている。

ガレージ内に格納される愛車たちは、アルファロメオ・スパイダーを筆頭に2輪はドゥカティ3台とハーレーのスポーツスター、さらにヤマハSDRとベスパといった陣容。基本的にラテン系の乗り物がお好みのようだが、唯一アメリカ車であるスポーツスターもラインナップに加わっている。このあたりからも「好きもの」の匂いがプンプン漂ってくる。そのほか自転車も多数。ちなみにKさんの奥様も4輪だけではなく、2輪もたしなまれるそう。そのため、ガレージハウス建設にあたっての反対はまったくなかったという。

海外生活が長かったK夫妻は、3階のLDKがペントハウスというイメージでとても気に入っている。ただ、ひとつ問題が。当初はアクティブに活動するための車やオートバイを保管する目的でガレージハウスを建てたのだが、できてみると居心地がよく、休日でも自宅で過ごすことが多くなってしまったらしい。

The Garage HOUSE
建築家:若原一貴
若原アトリエ

tel.03-3269-4423 http://www.wakahara.com
所在地:東京都 主要用途:専用住宅
構造:木造 規模:3階建 敷地面積:59.38㎡ 延床面積:98.89㎡
設計・監理:若原アトリエ/若原一貴

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・高木博史 photos / TAKAGI Hiroshi

黒いタイルを敷いた1階のガレージにはスパイダーのほか、ドゥカティやハーレーなど6台ものバイクが収められている。居住空間ではないので天井が低くでき、2階、3階へと続く動線を短くしているのが特徴だ。天井は薄く塗装した構造体をひき出しにしている

道路側に面したガレージの扉。シンプルなデザインを優先させて持ち手を排除しているのが特徴

3階のLDKの一部にはガレージと同じタイルを敷いている。ここにバイクを置きお酒を飲みたいそうだ

遊歩道から見ると、ガレージがあるとは思えない外観。清潔感のある雰囲気は白いサイディングとモルタルによって構成され、玄関口はバイクが出入りできるよう横幅にゆとりがある