自然派な施主が希望したアジアンテイストな住まい

海の近くのような雰囲気を漂わせ、日差しと風をふんだんに取り込む暮らしはサーフィンとイタリア車を愛するIさんが望んだ生活スタイルだ。

趣味スペースの仕上げは施主に任せて愛着をもたせる

株式会社ソラシオ。それが、今回設計・施工を担当した玉造さん率いる会社の名称だ。活動の中心を湘南方面としている玉造さんの「空と潮風が似合う自然体で暮らせる家づくり…」(HPより抜粋)という想いが込められている。以前、玉造さんが手掛けた別の物件を拝見したことがある。天然木で構築された空間にはさまざまな方角から風が抜け、じつに居心地がよかったと記憶している。

今回訪れた住宅は湘南地区ではなく東京都下。付近には緑の多い閑静な住宅街だ。設計にあたって、施主のIさんからの希望は、
①アジアンテイストであること ②エアコンなしで生活できること ③豊富な収納スペースがあること④ビルトインガレージがあること、などであった。

これらの要望を、玉造さんを含めて数社の設計事務所に提案をしてもらったところ、すべての希望を叶えてくれ、かつ「家とはこんなに自由に作れるんだ!」とサプライズを提供してくれたのが玉造さんだったという。とくに「中庭を使って屋内を明るくするという手法に感心した」とIさん。

玉造さんも「風がどのように家の中を抜けるかは、いつも意識して設計しています。実際に現場に立って、方角や周辺の建物との位置関係から、空気の流れ方を気にしています」と教えてくれた。事実、Iさんファミリーは、今年の猛暑でも「窓を開け放つと風が抜けて涼しいのでエアコンを使わなかった」そうだ。

ガレージについて玉造さんは「居住空間の部屋と同じような感覚で設計しました」という考えをお持ちだ。マセラティ・クアトロポルテが収まるガレージは、無機質にならないようにアジアンテイストを意識してデザインされている。フロアなどの仕上げは、Iさん自身が手掛けたというが、これも玉造さんの物件で多く見られる手法。以前に「施主自身の手で作業することが愛着につながる…」というお話も伺った。趣味の空間であれば、なおさらだろう。

このガレージへのアクセスは、正面シャッター、玄関脇、そして中庭からの3パターン。たっぷりの陽射しが降り注ぎ、心地よい風が抜ける中庭。ベンチに腰掛け振り返れば、愛車が眺められるという趣向だ。この中庭をはじめ、裏庭からウッドデッキを抜けて、リビングルームに至る空間などは、まるで南国のリゾート地にいるような心地よさ。まさにIさんファミリーが望んだアジアと玉造さんの湘南、ふたつのテイストが融合した結果といえる。

The Garage HOUSE
建築家:solasio/玉造清之

tel.0466-35-7770 http://solasio/
所在地:東京都西東京市 主要用途:専用住宅
構造:木造 規模:2階建 敷地面積:164㎡ 延床面積:119.13㎡
設計・監理:solasio/玉造清之

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・茂呂幸正 photos / MORO Yoshitada

白い外観と木製の壁が南国のリゾート地にある建物のような印象を与える。周囲からの視線を考慮して、正面の窓は少なくしているが、家の中心に中庭を設けて外光を取り込んでいる

LDKはウッドデッキ越しに庭と繋がっているため、実際の面積以上の開放感がある

車2台を収めるために縦長のガレージとしたが、現在はクアトロポルテの1台だけを駐めている。蛍光灯を使っているのは、愛車を整備するときに手元をできるだけ明るくしたいと作業性を考えてとのこと

ガレージには工具のほか、レストアを待つモペット、そしてテーブルや椅子などを置いている