ガラス張りの宝箱に収められた大切なカレラ

玄関脇に駐められたアルピナを見れば、車好きが住む家とわかるが、その奥にもうひとつの駐車スペースがある。そこには施主が愛してやまないもう一台の車が駐められている。

アルピナの奥に隠されたガレージ

訪れた地は、東京都心にほど近い古くからの閑静な住宅街。周囲は東京大学をはじめ歴史的な建造物が多く、ここ数年人気が高まっている谷根千も至近にある。周辺は新旧の建物が混在しているが、文教地区としての長い歴史が独特の空気感を放ち、落ち着いた佇まいを醸し出している。

目的の建物は鉄筋コンクリート3階建てで、正面から見ると1階は大きくセットバックしていることがわかる。また、2階と3階に設けられた広い窓が正方形の対角線上に配置されていて、シンプルでありながら周囲の建物とは一線を画す雰囲気をもっている。セットバックしている部分は、玄関アプローチと駐車スペースであることはもちろん、屋根となる部分が描き出す陰影により実寸以上の奥行きを感じさせている。屋外駐車スペースの奥には木製のガレージドアが見え、その奥にビルトインガレージが存在することがわかる。

設計担当は、建築家の黒崎敏さん。以前にこの連載で黒崎さんの作品をご紹介したことがあるが、やはり巨大な「庇」が特徴であった。その住宅は屋外ガレージであったが、今回は1台が屋外でもう1台は屋内に収められる。ビルトインガレージを、「単なる車庫ではなく、愛車とともに過ごす大切な空間」と表現する黒崎さんの作品を、さっそく拝見しよう。

CARRERA
建築家:黒崎敏
APOLLO Architects&Associates 

tel.03-5283-2535 http://WWW.kurosakisatoshi.com/
所在地:東京都文京区 主要用途:専用住宅 家族構成:親子3人
構造:RC壁式造 規模:3階建 敷地面積:158.31㎡ 延床面積:166.99㎡
設計・監理:APOLLO Architects&Associates/黒崎敏

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・木村 博道 photos / KIMURA Hiromichi

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「CARRERA」と名付けられたO邸はコンクリートの重量感を生かした外観が特徴。セットバックした1階部分や対角線上に配置された窓がアクセントの役割を果たしている

911が収められたガレージの奥には、ガラスで仕切られ、愛車を眺めるために用意された部屋を配置する

玄関からガラス越しに見えるアルピナと911。その姿を眺めながら進むとガレージに隣接した部屋に至る