巧みな空間演出で外と内を融合させたガレージが出現

ガレージというと密閉された空間を思い浮かべがちだが、必ずしもそうとは限らない建築家の石川淳氏が手掛けたガレージはそんな既成概念を壊すボーダーレスなものに仕上がっている。

光の陰影を生む美しいディテール

今回お会いした建築家は、石川淳さん。さまざまなメディアに露出されている方で、作品はとても特徴的だ。外観写真のように三角屋根、黒と白のバランス、アクセントとなるフィックス窓。この3つが、ほぼすべての作品に採り入れられている。

取材場所は東京都内。都心からほど近い高級住宅街だが、古くからの街であるため、築40年以上と思われるものから築浅い住宅まで混在している。その風景に石川さんが設計された住宅は見事に溶け込んでいる。

真正面から観察すると、坂道の途中に建っているため、どこにも直角のない五角形であることに気付く。また、ガレージのシャッターとスライドドアが一体となったひとつの広い開口部のように見える点も特徴だ。そして石川さんが手掛ける作品には欠かせない窓の存在が、アクセントとなっている。

「道路に面した家の正面をファサードといいますが、それは窓のデザインに尽きる…といわれています」

と、石川さん。よく見ると壁面は平らではなく、窓の左端のラインに添って「折り目」が付けられている。これが時間ごとに変化する日射により陰影を生み、シンプルだが美しい造形を描き出している。このあたりが「外観のディテールにこだわった…」と石川さんがおっしゃる部分なのだろう。

OUCHI-13
建築家:石川 淳

tel.03-3950-0351 http://www.jun-ar.info
所在地:東京都 主要用途:専用住宅 家族構成:夫婦、母
構造:木造在来工法 規模:地下1階地上2階建
敷地面積:87.61㎡ 延床面積:149.13㎡
設計・監理:石川淳建築設計事務所/石川淳

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・木村 博道 photos / KIMURA Hiromichi
構成・石井 隆 editorial / ISHII Takashi

後編を見る

室内やガレージの明かりがファサード面の窓などからこぼれて昼間とは違った雰囲気を作っている。シンプルな造形だが、時間の変化とともに刻々と表情を変える

シャッターはガレージ内部が見えるタイプを選択。木製ドアに飾られたドライフラワーが彩りを加える

施主の要望は玄関から直接ガレージに入れること。曇りガラスの仕切り扉で外からの視線を防いでいる

視線を防ぐためにデッキは木製ルーバーで囲っているが、上部は吹き抜けになっていて明るさは十分