ポルシェ  911GT3|ニューモデル試乗

初代に比べれば随分快適とはいえ、室内は騒々しく、乗り心地も締め上げられたGT3は、走ることにすべてを捧げた車であることに違いはない

すべてが現代的に進化、しかし紛れもないGT3

これはもうサーキットに行くしかない

新しい911GT3は、従来のGT3ファンを困惑させる1台だ。何より議論を呼びそうなのがパワートレイン。エンジンは初代以来使われてきた空冷由来のM64型ではなく、カレラ系がベースの3.8L直噴となり、ギアボックスは、何とPDKのみとなっているのだから。

しかし腑抜けにはなってはいない。アイドリングはややラフ。PDKを1速に入れてもクリープはしない。アクセルを踏み込んで発進させると、あとは右足の動きと回転上昇がシンクロしたかのようなダイレクトな加速感を堪能できる。

圧巻なのは吹け上がりの速さ。7000rpmオーバーまででも十分迫力があるのに、その先で音がさらに甲高く変化して、9000rpmまで一気に達するのだ。PDKもショックをいとわず瞬間変速。まさに意のままに操れる。実はこのあたりのプログラムはカレラ系とはまったくの別物なのだ。

そしてシャーシには、リアホイールステアが新採用となった。これは低速域では逆位相に、高速域では同位相に後輪を操舵するものだが、フットワークには違和感はなく、とにかくよく曲がり、安定感も抜群。限界は凄まじく高く、公道ではタイヤを鳴らすこともできなかった。これはもうサーキットに行くしかない。

気持ちを昂らせるのはGT3の証

そう、乗っているとサーキットで思い切りムチを入れたいという衝動に駆られる。新しいGT3も、そんな車なのだ。

寂しさが皆無だとは言わない。しかし、こうして走りの気持ちを昂らせるのは紛れもないGT3の証だと、モータージャーナリストの中でもいちばんのGT3ファンを自認する筆者が保証しよう。

フロント/リアの足回りセクションはGT3の専用設計となる。リアトレッドはカレラと比較すると44mm拡大されている

フロント/リアの足回りセクションはGT3の専用設計となる。リアトレッドはカレラと比較すると44mm拡大されている

リアシートは外され2シーターとなっている。手が触れる部分の多くに、滑りにくくするためアルカンターラが用いられた

リアシートは外され2シーターとなっている。手が触れる部分の多くに、滑りにくくするためアルカンターラが用いられた

カレラSのエンジンをベースとするが共用部品はわずか。クランクシャフトや鍛造ピストンなどに専用部品が奢られチューニングが施された

カレラSのエンジンをベースとするが共用部品はわずか。クランクシャフトや鍛造ピストンなどに専用部品が奢られチューニングが施された

SPECIFICATIONS

グレード GT3
駆動方式 2WD
トランスミッション 7DCT
全長×全幅×全高(mm) 4545×1852×1269
ホイールベース(mm) 2457
車両重量(kg) 1430
乗車定員(人) 2
エンジン種類 水平対向6DOHC
総排気量(cc) 3799
最高出力[ps/rpm] 475/8250
最大トルク[N・m/rpm] 440/6250
車両本体価格(万円) 1859
Tester/島下泰久 Photo/ポルシェ ジャパン